2023年12月25日、東京証券取引所でビックカメラの株価が一時1,338円まで買われ、年初来の高値を更新した。今年5月26日の安値1,033円から7カ月で29.5%の上昇である。
ビックカメラは、家電量販店をチェーン展開する企業である。その源流は、1968年に群馬県高崎市にて設立した写真フィルムの現像所「高崎DPEセンター」までさかのぼる。1978年には、池袋北口でカメラおよび関連商品の販売会社として創業、その後はビデオカメラやビデオデッキ、テレビ、スポーツ用品、おもちゃ、寝具と品揃えを拡充し、現在の家電量販店としてのビジネスモデルの礎を築いた。また、子会社にはソフマップやコジマ、日本BS放送、ビックロジサービスなどがある。
後段で述べる通り、ビックカメラが公表した2023年8月期・通期(2022年9月1日~2023年8月31日)の連結業績は大幅な減益となったものの、❶2024年8月期・通期(2023年9月1日~2024年8月31日)の連結業績予想については増収増益となる見通しが示されたこと、❷2024年8月期の年間配当予想を前期比3円増額の18円とする方針を示したこと、❸子会社のソフマップが、業務用機器の買い取り並びに販売・保守事業を展開するエーワン(本社:埼玉県八潮市)の全発行済株式を取得し、子会社化すると発表したこと……などが株価にも追い風となっている。
今回はビックカメラの話題をお届けしよう。
ビックカメラ、子会社ソフマップがエーワンを買収
2023年12月8日、ビックカメラは子会社のソフマップがOA 機器・複合機を中心とした業務用機器の買取並びに販売・保守事業を展開するエーワンの全発行済株式を取得することに合意し、子会社化すると発表した。
ビックカメラは、かねてよりグループのマテリアリティ(重要経営課題)として循環型社会(サーキュラーエコノミー)への取組強化を掲げていた。具体的には、サービス・修理・買い取り・保証サービスの充実、リユース・リサイクルを含めた循環型ビジネスの構築を推進しており、今回のソフマップのエーワン株取得もその一環であるとしている。
ソフマップは、パソコンやスマートフォンを中心とするデジタル機器や、ソフトおよびアニメグッズなどの販売を主な事業とし、リユース事業による買い取り・下取りサービスや、デジタル機器の設定並びに修理を提供するサポート事業も展開している。一方のエーワンは、関東や関西地方、ECサイトでOA機器や複合機を中心とした業務用機器の買い取り・販売・保守・回収などのリユース事業を展開している。
ビックカメラは、グループとして新たにオフィス機器のリユース商材を取り扱うことで、BtoB並びにリユース市場におけるさらなる強化、シェア拡大に期待を寄せていることを明らかにした。さらに、エーワンが強みとする理化学機器や測量機器など、より専門性の高いリユース商材の取り扱いが可能となることで、法人取引による仕入ルートの拡充においても、高いシナジーが想定されるとしている。ソフマップとエーワンの強みを活かし、循環型社会への取組強化を通じて、グループ全体の企業価値向上を目指す方針である。
2023年8月期は増収減益
業績を見てみよう。ビックカメラが10月11日に公表した2023年8月期・通期(2022年9月1日~2023年8月31日)の連結業績は、売上高が前年同期比2.9%増の8,155億6,000万円、本業の利益を示す営業利益は同20.4%減の142億1,500万円、経常利益は同20.4%減の165億6,600万円、純利益は同49.1%減の29億3,600万円と増収減益となった。
同期は家電小売業界全体として、ゲーム等の売上高が好調に推移したものの、テレビやエアコン、調理家電等が低調であった。そうした中、ビックカメラは2022年11月1日に「ビックカメラ 千葉駅前店」(千葉県千葉市)を開店したほか、2023年7月14日にはコジマが「コジマ×ビックカメラ 有明ガーデン店」(東京都江東区)を、9月1日には「ビックカメラ 聖蹟桜ヶ丘駅店」の閉店後跡地に「コジマ×ビックカメラ 聖蹟桜ヶ丘駅店」(東京都多摩市)を開店するなど店舗展開を推進した。なお、新型コロナウイルス禍で落ち込んでいた免税売上は、足元ではコロナ前の8割程度まで回復した。
セグメント別の概況は以下の通りである。
物品販売事業
物品販売事業の売上高は前年同期比3.0%増の8,024億6,300万円、経常利益は同20.6%減の144億6,300万円となった。
同期は音響映像商品、家庭電化商品および情報通信機器商品の売上高が低調に推移する一方で、ゲーム等のその他の商品が好調に推移した。また、粗利率が比較的低い商品の売上構成比が上昇したこと等により売上総利益率が悪化したほか、人件費増等に伴い販売費および一般管理費が増加した。
BSデジタル放送事業
BSデジタル放送事業の売上高は前年同期比0.7%増の116億2,500万円、経常利益は同18.0%減の19億7,400万円となった。
同期は、配信ビジネス等の放送外収入が増加したことにより売上高が堅調に推移する一方で、開局15周年特別番組を含むコンテンツの開発強化やスタジオ設備の更新に伴う償却費増により、コストが増加した。
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2024年8月期は純利益で157.1%増を予想
10月11日、ビックカメラは2024年8月期・通期(2023年9月1日~2024年8月31日)の連結業績予想について、売上高で前年同期比10.0%増の8,975億円、本業の利益を示す営業利益は同11.1%増の158億円、経常利益は同9.9%増の182億円、純利益は同157.1%増の75億5,000万円と増収増益となる見通しを示した。
ビックカメラは、同期の経済環境について、雇用・所得環境が改善する下で、各種政策の効果もあって緩やかな回復が続くことが期待される一方、世界的な金融引締めの影響や中国経済の先行き懸念等、海外景気の下振れリスクや、物価上昇、金融資本市場の変動等の影響に十分注意する必要があるとの認識を示した。その上で、グループ全体として、①人を成長の原動力とする、②強い店舗の再構築、③収益構造の抜本的見直し、④中長期の成長戦略……を4大施策として取り組む方針を示した。
なお、冒頭でも述べた通り、ビックカメラは2024年8月期の年間配当予想を前期比3円増額の18円とする方針を示した。
引き続き、ビックカメラの業績や株価を注視しておきたい。■
(La Caprese 編集部)