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路線バスで深刻化する「運転手不足」。8割で減便・廃止、2024年問題の影響も――帝国データバンクの調査報告

路線バス,廃止,2023
※画像はイメージです。(画像= warehouse / 写真AC、La Caprese)

帝国データバンク(本社:東京都港区)は2023年11月22日、全国127の路線バス運行業者(公営除く)の運行状況についての調査・分析を公表した。

帝国データバンクが、30路線以上を有する公営バスを除いた全国の民営路線バス運行業者127社を対象に調査した結果、運行ダイヤの改正などにより、少なくとも約8割にあたる98社で2023年中に1路線以上の「減便・廃止」を実施することが判明した。さらに、2024年に予定・検討中の事業者を含めると計103社に上ることも明らかになった。

ほぼすべての都道府県におけるバス路線で減便・廃止が実施され、人口密集地の首都圏でも早朝・深夜便などを中心に減便や廃止が多く目立った。帝国データバンクの推計では、調査対象となった127社で運行が判明した約1万4,000路線のうち、少なくとも約1割に相当する路線で減便や廃止による影響が及ぶ可能性があるとしている。

路線バス,廃止,2023
(図1) 出典:帝国データバンク
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運転手の高齢化や人手不足により対応が限界に

減便や廃止となった理由として、ほぼ全ての事業者で「運転手(人手)不足」があげられた。これまで都市間高速バス路線などを廃止して維持してきたものの、運転手の高齢化や人手不足により対応が限界になったことで、運行系統の整理など減便や廃止に踏み切ったケースが目立った。また、ドライバーの時間外労働に年960時間の上限が課される「2024年問題」に対応するためにダイヤ改正を行ったケースや、沿線の人口減による不採算化を理由としたケースもみられた。その一方で、平日の市街地路線や、休日のショッピングモール線など、収益確保が見込まれる路線では増発を行うケースもあり、バス路線の対応は各社で戦略が分かれている。

路線バス,廃止,2023
(図2) 出典:帝国データバンク

コロナ前から人手「減少」が約半数を占める

路線バス,廃止,2023
(図3) 出典:帝国データバンク

運転手不足が大きな問題となっている路線バス会社について、運転手を含めた1社当たりの従業員数について調査を行った。その結果、コロナ前の2019年時点に比べ、対象307社のうち53.1%にあたる163社で「減少」していることが判明した。1社あたり従業員数の推移をみると、コロナ禍には貸切バス業界からの人材流入もあり240人/社を超えたものの、以降は再び減少傾向で推移し、2023年10月時点では235人/社にとどまった。近時は「待遇の良い貸切観光バスに人材が流出している」などを背景に、2024年問題への対応も含めたダイヤ維持に必要な運転手の増員が難しくなっている。

路線バス,廃止,2023
(図4) 出典:帝国データバンク

待遇面の悪さが人材定着に悪影響を及ぼしているとの指摘も

路線バス業界で深刻な人手不足に直面している背景には、他業種に比べて給与水準が低いことや、長時間労働など待遇面の悪さが人材定着に悪影響を及ぼしているとの指摘もある。加えて、コロナ禍で落ち込んだ乗客数が完全に戻り切れていないことや、燃料費高騰による収益面での打撃も重なり、賃上げで運転手を確保する余力のあるバス会社が少ないことも、問題解決の糸口が容易に見つからない要因となっている。

足元では、4市町村で路線を運行していた金剛バス(大阪)が運転手不足を理由にバス事業から全面撤退するなど、都市部でも減便を余儀なくされるケースが増えている。既に8割の路線バス会社が路線を2023年中に減便・廃止するほか、2024年以降に路線縮小を検討するバス会社もみられる。「2024年問題」解決の要となる、運転手不足の短期的な解決が難しいなか、「利用者の多い市街地路線でも一層のダイヤ縮小や路線の統合などによる減便・廃止が進む可能性が高い」と帝国データバンクは指摘している。■

[注1]  路線バスの「減便・廃止」は、路線数が2022年度末時点で30本以上有する民営バス事業者127社が対象。高速バス路線のみの事業者は除いた。減便・廃止の判断は、各社のダイヤ改正情報などに基づく。路線等の情報は、2022年度末時点の国土数値情報(国土交通省)を参考とした
[注2]  各社の従業員数(人手)は帝国データバンクが保有する企業情報から、乗合バス運行事業者を対象に調査を行った。なお、この中には一般路線バスのほか、都市間高速バス運行会社も含まれる

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