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エッセイ:数字に呪われた女性、数字の奴隷になった企業

年齢,サバ読み,女
(画像= La Caprese)

2023年10月22日、実年齢より24歳若い「架空の妹」になりすまして戸籍を偽造したとして、警視庁大井署は72歳の女性と、その夫(65歳)を有印私文書偽造・同行使容疑などで逮捕した。報道によると、72歳の女性が「48歳の架空の妹」をかたって原付きバイクの免許を取得しようとした際に、運転免許試験場の警察官が違和感を覚え、事件が発覚したという。

戸籍がそんなに簡単に偽造できるのも驚きであるが、それ以上に開いた口が塞がらなかったのは24歳もサバ読んでいたことである。あくまで個人的な印象ではあるが、その女性が連行される映像を見る限り年相応の70歳前後にしか見えない。若く見られたい願望は理解できるが、それなら食事や睡眠、適度な運動など日々の生活習慣を改善すれば良いのにとも思う。

年齢なんて、所詮、ただの数字にすぎない。
数字を変えたところで、肉体が若返るわけではないのだ。

しかしながら、件の72歳の女性に限らず、人間は時として「数字の呪縛」に囚われやすい側面も否めない。たとえば、一気に痩せたいからと絶食に近いようなダイエットをする人がいる。確かに、過激なカロリー制限をすれば短期間で痩せることは可能かも知れないが、若々しい肌や筋肉を保つ栄養素が不足して、一気に老化が進んでしまうことにもなりかねない。体重や体脂肪率など「数字の呪縛」に囚われ過ぎると、かえって逆効果となる危険性がある。

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ビッグモーター問題で中古車店の倒産が急増

中古車販売大手のビッグモーターによる、自動車保険金の不正請求問題も、ある意味「数字の呪縛」の結果と言えるのかも知れない。7月18日、ビッグモーターが公表した外部弁護士でつくる特別調査委員会の調査報告書では、「過度なノルマが不正の原因になった」と指摘している。現場に課せられた過度なノルマ(数字の呪縛)が、ゴルフボールを靴下に入れて故意に車両を叩いて壊し、保険金を水増し請求するといった犯罪に近い行為を誘発したのである。

ちなみに、2021年以降は新型コロナウイルス禍で半導体などの部品供給が滞ったことで、新車の納車遅れが発生し、ユーザーの買い替え需要が中古車に殺到した。帝国データバンクによると、「一部の車種では新車価格より中古車価格が上回るなどの現象が単価上昇につながり、2023年3月期の中古車販売市場は過去最高となる3.9兆円を記録するなど好調だった」という。

だが、過熱する中古車人気によって仕入れ価格も高騰し、厳しい価格競争のなかで価格転嫁に苦慮する中古車店も少なくなかった。こうした中、業界首位のビッグモーターの不正が発覚したことで、「中古車業界に対する顧客の目が厳しくなり、販売やアフターサービスの整備入庫にも影響が出始めている」(帝国データバンク)とも指摘される。その結果、2023年1〜9月の中古車店の倒産は57件発生、前年の年間件数(52件)を9カ月で上回っており、「過去10年で年間最多の90件台に到達する可能性がある」(帝国データバンク)という。

年齢,サバ読み,女
出典:帝国データバンク

10月1日からは、中古車の販売価格が車両価格と諸費用を合算した「支払総額」の表示に義務化されるなど、透明性の確保に向けた取り組みが進んでいる。しかし、これで業界全体に向けられた消費者の不信感を払拭できるのか、情勢はあまりにも不透明だ。今後の中古車業界の運命は「数字の呪縛」に囚われ過ぎない組織改革にかかっているのかも知れない。■

(La Caprese 編集長 Yukio)

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