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「Yakult1000」の販売好調 ヤクルト本社の株価は9カ月で53.7%上昇

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(画像= La Caprese)

2022年10月12日、東証プライムに上場するヤクルト本社の株価が一時8,640円まで買われ、年初来の高値を更新した。今年1月19日に記録した年初来安値の5,620円から約9カ月で53.7%の上昇である。

後段で詳述する通り、2023年3月期・第1四半期(2022年4月1日~6月30日)の連結業績は、宅配商品「Yakult(ヤクルト)1000」および店頭商品「Y1000」の販売増加等により増収増益となった。ヤクルト本社は今年7月から「Y1000」の生産体制を強化、さらに年内の増強も計画しているほか、「Yakult1000」も9月下旬から生産体制の増強に対応している。しかし、宅配商品の「Yakult1000」についてはインターネットで注文できる「ヤクルト届けてネット」の新規申し込み、追加注文を依然として休止するなど、品薄状態が続いているのが実情だ。

今回はヤクルト本社の業績をみてみよう。

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ヤクルト本社、営業利益は27.2%増

2022年7月29日、ヤクルト本社は2023年3月期・第1四半期(2022年4月1日~6月30日)の連結業績を発表した。売上高は前年同期に比べて12.0%増の1,079億8,300万円、本業の利益を示す営業利益は同27.2%増の147億7,000万円と大幅な増収増益となった。

同期はウクライナ情勢や中国における経済活動の抑制、さらには原材料価格の上昇等のリスク要因を抱える中、ヤクルト本社は事業の根幹である「プロバイオティクス(人体に良い影響を与える微生物、あるいはそれらを含む食品や飲料、製剤などのこと)」の啓発・普及活動を展開し、商品の優位性を訴求してきた。加えて、(1)販売組織の拡充、(2)新商品の研究開発や生産設備の更新、(3)国際事業や医薬品事業への積極的な取り組みなど業績の向上に努めた。その結果、上記の通り売上高、営業利益ともに2ケタを超える増収増益となった。

「Yakult(ヤクルト)1000」「Y1000」が品薄状態に

主要セグメントの状況をみてみよう。

「飲料および食品製造販売事業部門(日本)」の売上高は 前年同期に比べ10.2%増の558億1,200 万円となった。まず、乳製品はヤクルト本社独自の「乳酸菌 シロタ株」や「ビフィズス菌 BY株」などの科学性を広く普及するため、地域に根ざした「価値普及」活動を積極的に展開した。たとえば、宅配チャネルでは乳製品乳酸菌飲料の「Yakult1000」「ヤクルト400」シリーズを中心に、エビデンスを活用し、既存ユーザーへの継続飲用を促進するとともに、新規ユーザーの開拓に努めた。同時に、Webサイトを活用したキャンペーンの実施等により、新規ユーザーとの接点づくりの強化にも取り組んだ。その結果、インターネット注文サービス「ヤクルト届けてネット」の利用者数、売上高がともに増加し、当初の計画を大きく上回る実績で推移した。

一方、店頭チャネルでは乳製品乳酸菌飲料「Newヤクルト」シリーズ、はっ酵乳「ジョア」の消費者キャンペーンを実施したほか、演出資材等を活用した視認性の高い売り場を展開するなど売上高の増大に努めた。

商品別では「Yakult(ヤクルト)1000」「Y1000」の品薄状態に対応するため、増産体制の整備にも取り組んだほか、ハードタイプヨーグルト「ソフール」の期間限定アイテム「ソフール アップル」を発売し、ブランドの活性化を図った。さらに「ヤクルト400W」および「ジョア」について、俳優の大泉洋さん、仲里依紗さんをそれぞれ起用したテレビCMを放映し、商品の認知度の向上を図った。また、清涼飲料については、栄養ドリンク「タフマン」シリーズのキャンペーンを実施するなど、売上高の増大に努めた。

海外事業は米州地域を中心に好調

「飲料および食品製造販売事業部門(海外)」も好調に推移している。

まず、米州地域(米国、メキシコ、ブラジル)の売上高は前年同期に比べて27.6%増の138億7,800 万円と大幅に増加した。ヤクルト本社は同地域で「ヤクルト」などを製造、販売しているが、特に米国においては広報活動等による販売支援の強化と新規取引先の拡大に取り組んだことが売上高の増加に寄与した。

アジア・オセアニア地域の売上高も前年同期に比べて11.6%増の292億8,200万円と2ケタの伸びを示した。ヤクルト本社は香港、シンガポール、インドネシア、オーストラリア、マレーシア、ベトナム、インドおよび中国などで「ヤクルト」などを製造・販売しているほか、UAE(アラブ首長国連邦)などは「ヤクルト」等を輸入販売している。特に同期は、インドネシアおよびベトナムにおいて、宅配組織の拡充と納入店舗数の増大に努めた結果、販売実績が順調に推移した。一方、中国においては、新型コロナウイルスの感染拡大に伴うロックダウン等の影響を受け、上海工場の稼働や多くの地区での活動が制限されることとなった。

ヨーロッパ地域の売上高は前年同期に比べ4.6%増の25億7,400万円となった。ヤクルト本社はオランダで「ヤクルト」などを製造している。オランダで製造した「ヤクルト」は、同国のほかベルギーや英国、ドイツ、オーストリア、イタリアなどで販売している。ちなみに、ロシア・ウクライナ問題が長期化しているものの、ヤクルト本社は両国内で事業展開をしていない。ただ、今後のヨーロッパ地域全体への影響については注視する必要があるとしている。

プロ野球、入場者数の制限解除もプラスに

このほか、「医薬品製造販売事業部門」の売上高は前年同期比11.1%減の38億5,500万円となった。医薬品は、新型コロナウイルス禍の医療機関への訪問規制により、多くの施設で医療従事者に対して直接の面談ができない状況が継続していた。このため、同期はWeb会議やWeb講演会等を活用した啓発活動や、適性使用を推奨する活動を推進した。

化粧品の製造販売およびプロ野球興行などを含む「その他事業部門」の売上高は前年同期に比べて25.3%増の56億5,200万円となった。化粧品は、乳酸菌研究から生まれたオリジナル保湿成分「S.E.(シロタエッセンス)」の「価値普及」活動を推進した。また、プロ野球興行については、新型コロナウイルス禍の入場者数の制限が解除されたことに加え、チームの成績が好調に推移するなか、各種ファンサービスの充実や多様な情報発信に取り組んだ。

通期の売上高は4,675億円、営業利益は590億円を予想

ヤクルト本社は2023年3月期(通期)の見通しについて、売上高で4,675億円、営業利益で590億円となる見通しを示した。これは当初予測(2022年5月発表)に比べて売上高で210億円、営業利益で40億円それぞれ上方修正した金額である。

上方修正の理由についてヤクルト本社は、(1)「飲料および食品製造販売事業部門(日本)」において、「Yakult1000」を中心に乳製品の販売本数が計画を上回っていること、(2)「飲料および食品製造販売事業部門(海外)」でも円安が進んだことによる為替のプラス影響が発生する見通し……の2点を挙げている。

引き続きヤクルト本社の業績、株価動向を注視しておきたい。■

(経済ジャーナリスト 世田谷一郎)

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