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エーザイ、アルツハイマー病新薬「レカネマブ」への期待 株価は1カ月で30.7%上昇

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(画像= Canva、La Caprese)

2022年10月27日、東京証券取引所で大手製薬会社のエーザイが一時8,892円まで買われ、年初来の高値を更新した。この1カ月間で30.7%の上昇率である(10月27日終値時点)。

上昇相場の引き金となったのは、1カ月前にエーザイが発表したニュースリリースだった。9月28日、エーザイは米医薬品メーカーのバイオジェンと共同開発しているアルツハイマー病治療薬のレカネマブ(開発品コード:BAN2401)について、早期アルツハイマー病患者(脳内アミロイド病理が確認されたアルツハイマー病による軽度認知障害および軽度アルツハイマー病)を対象とした第3相試験で、良好なトップライン結果を取得したと発表した。エーザイは、あわせて2022年度中の米国におけるフル承認申請および日本や欧州における販売承認申請を目指して、各国当局と協議を行うことを明らかにした。

エーザイのニュースリリースを受けて、株式市場の評価は一変した。モルガン・スタンレーMUFG証券は9月28日付のレポートで、エーザイの投資判断を「アンダーウエート」から「イコールウエート」に、目標株価を4,800円から9,800円にそれぞれ引き上げたほか、10月13日には野村証券も目標株価を1万円から1万2,000円に引き上げ、レカネマブの成功確率を60%から70%にアップデートした。

今回はエーザイの話題をお届けしよう。

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早期アルツハイマー病患者、レカネマブ投与で27%の抑制効果

エーザイが実施した第3相試験は1,795人の早期アルツハイマー病患者を対象としたもので、レカネマブ投与群とプラセボ投与群を1対1に分けて行われた。2週間に1回のペースで投与を継続したところ、投与18カ月時点でレカネマブ投与群の全般臨床症状の評価指標である「CDR-SB(主要評価項目)スコア」の平均変化量が、プラセボ投与群と比較してマイナス0.45となり27%の抑制効果を確認した。

ちなみに、CDR-SBは認知症の幅広いステージの重症度を評価するスケールで、(1)記憶、(2)見当識、(3)判断力と問題解決、(4)地域社会の活動、(5)家庭および趣味、(6)身の回りの世話……の6項目で評価するというもの。6項目のスコアの合計点が「CDR-SBスコア」となり、早期アルツハイマー病患者を対象とした治療薬の適切な有効性評価項目としても使用されている。

認知症の原因にはさまざまな仮説があるが、現在主流となっているのが「アミロイドβ(ベータ)」と呼ばれる、脳でつくられるたんぱく質が発症に関係する、という説である(アミロイドβ仮説)。レカネマブはこの「アミロイドβ仮説」に基づいて開発された抗体医薬である。

上記の通り、レカネマブ投与群の全般臨床症状の評価指標である「CDR-SB(主要評価項目)スコア」の平均変化量が、プラセボ投与群と比較してマイナス0.45となり27%の抑制効果を確認したことは、認知症治療の道を切り拓いたといっても過言ではなさそうだ。

2025年、65歳以上の高齢者の「5人に1人」が認知症に

ちなみに、厚生労働省のデータによれば、2025年の日本において65歳以上の人口は3,600万人以上に達し、そのうち19.0%が認知症を発症すると見られている。いわゆる5人に1人が認知症になるとされる「2025年問題」である。

認知症患者の増大は日本に限った問題ではない。WHO(世界保健機関)は2021年9月、世界の認知症患者が5,500万人を突破し、年間1兆3,000億ドルの経済損失が生じていると発表した。さらに、WHOは世界的な高齢化につれ、認知症患者は2030年までに7,800万人、2050年までに1億3,900万人に増加する見通しを示している。認知症の治療は世界的な課題であり、各国の医薬品大手がしのぎを削る最重要分野といっていい。

冒頭で述べた通り、エーザイ株はこの1カ月で30.7%の上昇率を記録しているが、時価総額が2兆6,290億円(10月27日終値時点)もある銘柄が、短期間でこれほど大きく動くのは珍しい現象である。それほどマーケットの期待が大きいということなのだろう。

しばらくは、エーザイの開発動向から目が離せない情勢が続きそうだ。■

(経済ジャーナリスト 世田谷一郎)

特集:認知症共生社会〜予防から治療、そして共生まで
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