2023年9月26日、東京証券取引所で日本KFCホールディングスの株価が一時3,075円まで買われ、年初来の高値を更新した。今年1月4日の安値2,727円から8カ月半で12.8%の上昇である。
日本KFCホールディングスは、フライドチキンチェーンの「ケンタッキーフライドチキン(以下、KFC)」を運営する企業等を傘下に置く持株会社である。その源流は、1930年の米ケンタッキー州の国道25号線沿いのガソリンスタンドにまでさかのぼる。当時、そのガソリンスタンドのオーナーを任されたカーネル・サンダース氏は、客の要望に応え、敷地内の物置を改造したレストラン・コーナー「サンダース・コート・アンド・カフェ」を始める。わずか6席でスタートしたそのレストランは、1937年にはモーテルを併設した142席のレストランに成長していた。そして、1939年にはサンダース・コート・アンド・カフェの目玉商品となる「フライドチキン」が誕生する。圧力釜を用いた「フライドチキン」のオリジナルレシピは、以後80年以上にわたり、国境を越えて引き継がれている。日本では1970年に「日本ケンタッキー・フライド・チキン」を設立、2014年には現在の日本KFCホールディングスに商号変更し、持株会社体制へ移行した。
後段で述べる通り、日本KFCホールディングスは中期経営計画の一環として、❶積極的な新規出店、❷ブランド力の維持・向上を目的とした既存店舗の改装促進、❸消費者の利便性および購買体験価値の向上を目的としたDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進しており、その結果、❹2024年3月期・第1四半期(2023年4月1日~2023年6月30日)の連結業績で、純利益が前年同期比210.8%増とV字回復を鮮明にした。こうした業績の好調が、株価のサポート要因となっている。
今回は日本KFCホールディングスの話題をお届けしよう。
日本KFCホールディングス、純利益は210.8%増
8月9日、日本KFCホールディングスは2024年3月期・第1四半期(2023年4月1日~2023年6月30日)の連結業績を発表した。同期の売上高は前年同期比14.0%増の243億8,500万円、本業の利益を示す営業利益は8億500万円(前年同期は2,100万円の営業利益)、経常利益は前年同期比196.0%増の8億2,000万円、純利益は210.8%増の5億3,200万円と大幅な増収増益となった。
同期は、新型コロナウイルスの感染症法上の分類が「5類」へ引き下げられたことを受け、経済・社会活動の正常化が進む一方で、ウクライナ情勢の長期化による地政学的リスクの高まりや世界的な金融引き締め等による海外景気の下振れリスクなど、予断を許さない状況が継続した。外食業界全般としては、行動規制の緩和に伴って消費者の外食意欲の戻りが見られるとともに、インバウンド需要も回復傾向を示したものの、原材料価格やエネルギー価格、物流費の高止まり等も続いており、依然として厳しい環境にある。
好業績をもたらした3つの重要施策
そうした中、日本KFCホールディングスは中期経営計画の一環として、❶積極的な新規出店、❷ブランド力の維持・向上を目的とした既存店舗の改装促進、❸消費者の利便性および購買体験価値の向上を目的としたDX(デジタルトランスフォーメーション)……を重要施策と位置付け推進した。
具体的には、主力のKFC事業で引き続き日常利用の促進を図るため、バーガーのキャンペーンとして「フィレバーガーセット550円」の展開や新商品である「カリホクハッシュのフィレバーガー」を数量限定で販売するなど、バーガーメニューのさらなる強化を実施した。一方で、さらなる「ハレの日」需要強化の一環として、お得感のあるパックメニューに「こどもの日」「父の日」等の記念日を想起させる販促活動や期間限定の「母の日バーレル」の販売等を実施した。さらに、新商品である「ガーリックホットチキン」の販売や、「カーネルクリスピー3ピース半額」「ドリンク全サイズ半額」等のバリューキャンペーンも展開した。その結果、前述の通り、同期の連結業績は大幅な増収増益となった。
ちなみに、同期は12店舗(直営3店舗・フランチャイズ9店舗)を出店し、1,206店舗となった。4月28日には、記念すべき1,200店舗目となる「KFCミーナ天神店」(福岡県福岡市中央区)をオープンした。また、39店舗(直営7店舗・フランチャイズ32店舗)で改装を実施したほか、配達代行を含むデリバリーサービスの実施店舗も881店舗となった。
全国のKFC店舗で「楽天ポイントカード」が利用可能に
8月9日、日本KFCホールディングスは2024年3月期・通期(2023年 4月 1日~2024年 3月31日)の連結業績予想について、売上高で前期比5.6%増の1,054億9,100万円、本業の利益を示す営業利益で同14.5%減の30億9,700万円、経常利益で同29.9%減の30億4,700万円、純利益で同19.4%減の20億600万円と従来予想(5月11日公表)を据え置いた。
なお、①9月24日に日本ケンタッキー・フライド・チキンは、全国のKFC店舗で「ファイナルファンタジーXIV(FF14)」とコラボレーションした「ファイナルファンタジー14コラボセット」を10月4日から数量限定で発売すると発表、②同時に、FF14にKFCをモチーフにしたアイテムが登場するなどゲーム内でのコラボレーションも実施することを明らかにした、③さらに、9月25日には全国のKFC店舗で、10月1日より共通ポイントサービス「楽天ポイントカード」が利用可能になることも明らかになった。これらの施策が今後の業績にどう影響してくるか、株価の動きとともに注視しておきたい。■
(La Caprese 編集部)