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なぜ、日本駐車場開発の株価は9カ月で73.8%上昇したのか?

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※画像はイメージです。(画像= Canva、La Caprese)

2022年10月7日、日本駐車場開発の株価が一時226円まで買われ、年初来の高値を更新した。今年1月25日に記録した年初来安値の130円から9カ月足らずで73.8%の上昇である。

後段で詳述する通り、9月9日発表の2022年7月期の連結決算で売上高、営業利益、経常利益が過去最高を更新したほか、今期(2023年7月期)についても2ケタの増収増益と増配を想定していること、さらに自己保有株を除く発行済株式総数の1.25%にあたる400万株(取得総額5億円)を上限とする自社株買いを実施すると発表したことなどを背景に上げ足を加速している。

ちなみに、過去1カ月間の日経平均株価の騰落率はマイナス3.89%、同じくTOPIX(東証株価指数)のマイナス2.99%に対して、日本駐車場開発はプラス32.53%と大幅にアウトパフォームしている(10月7日終値時点)。

今回は日本駐車場開発の業績をみてみよう。

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日本駐車場開発、売上高・営業利益・経常利益が過去最高

日本駐車場開発は9月9日、2022年7月期(2021年8月1日~2022年7月31日)の連結決算を発表した。売上高は前期比10.4%増の262億7,100万円、本業の利益を示す営業利益は同40.4%増の45億8,200万円、経常利益は34.1%増の46億3,900万円でいずれも過去最高を更新した。また、純利益も33.8%増の31億2,500万円と大幅に増加した。

同期は新型コロナウイルスの影響に加えて、原材料価格の高騰や急速な円安進行に伴う物価の上昇など、景気の先行き不透明感が広がった。このような状況下、日本駐車場開発との関係性の高い不動産業界ではオフィスの集約や縮小の影響などから空室率が上昇した。同じく、レジャー・観光業界は新型コロナウイルス禍で、ワーケーションやグランピングなど消費者ニーズの変化がみられた。

こうした中、日本駐車場開発は「ハッピートライアングル:関わる人全てがハッピーなビジネスを」という企業理念のもと、駐車場事業(国内・海外)やスキー場事業、テーマパーク事業の3つの主力事業において、環境変化や顧客需要変化を捉えた商品・サービスの提供といった事業の改善(選択と集中)に取り組んだ。その結果、駐車場事業およびテーマパーク事業が過去最高の売上高と営業利益を達成し、スキー場事業についても2022年1月に緊急事態宣言が発令され外出自粛があった中でも、前年から大きく回復することとなった。

新型コロナ禍で検索サイトの情報を充足。市場分析、新規開拓を推進

具体的にセグメント別の業績をみてみよう(※各セグメントの業績数値にはセグメント間の内部取引高を含んでいる)。

まず、「駐車場事業」の売上高は前期比2.4%増の145億9,700万円、営業利益は同10.2%増の35億4,600万円となった。同期は新型コロナウイルス禍で対面による月極駐車場の問い合わせ等が減少する中、検索サイトの情報を充足させるなどの利便性を高めたことで、オンラインによる問い合わせが新型コロナ前(2019年7月期)に比べて264%増加した。月極契約の成約件数の増加はもとより、その膨大な問い合わせデータ(ニーズ)を活用して市場を分析し、新規月極駐車場の開拓に取り組んだ。その結果、新規物件の高い成約率と早期収益化を実現した。

一方、海外駐車場事業においては、進出していた5か国の拠点のうち、地政学リスクを考慮して中国現地法人を売却、台湾法人を会社清算、インドネシア法人を休眠状態とし、タイと韓国に経営資源を集中した。その結果、タイと韓国は増収増益となった。タイでは稼働が悪化したオフィス・ホテルへの駐車場サブリース提案や、駐車場検索サイトの改善が順調に進んだことにより新規物件および新規ユーザーの獲得をもたらした。さらにカーディーラー、銀行等のまとまった駐車場需要に対しても積極的に提案を行い、受注を進めた。韓国においては、不採算物件の見直しや、既存物件の改善を進めた。

「NSDキッズプログラム」で子どもの来場者数が65%増

「スキー場事業」の売上高は前期比22.5%増の55億6,900万円、営業利益は2億5,400万円で前期の赤字(営業赤字4億2,800万円)から黒字転換した。

2021年12月から2022年5月上旬にかけてのウィンターシーズンは、グループ各スキー場ともに十分な自然降雪に恵まれた。また、新型コロナウイルスの影響は1月中旬よりオミクロン株が蔓延したことにより、同期間は学校団体やバスツアー等の来場者数が減少したものの、2月後半からは観光需要が徐々に回復し、3月の国内来場者数は新型コロナ前(2019年3月)を超えるなど回復傾向が鮮明となった。

加えて、小学生および未就学児の子どもを対象としたシーズン券が無料となる「NSDキッズプログラム」を募集した。このプログラムは、国内のスキー人口創出を目的とした中期的な取り組みとして、家族でスキー場へ遊びに行きやすい環境づくりを目的としたものである。その結果、今シーズンに同プログラムを開催したグループ6か所のスキー場における子どもの来場者数は前期比65.0%増の8万2,000人に達した。

また、グリーンシーズン(2021年8月から11月上旬および2022年4月下旬から7月)は、新型コロナウイルス第5波が8月にかけてピークに達したことや、繁忙期となるお盆期間は連続して雨天となったことから同月の来場者数は前年を下回ることとなった。しかしながら、9月中旬以降は新型コロナウイルスの新規感染者数が減少傾向となり、マイカー利用等の一般顧客だけでなく、バスツアーなどの団体旅行も徐々に再開され、10月から11月にかけてのグループ全施設の来場者数は前期を上回り、観光需要の回復傾向が鮮明となった。なお、グリーンシーズンが本格化した今年7月は新型コロナウイルス禍で初めて行動制限のない夏を迎えることができたこともあって、来場者数は過去最高の45万1,000人となった。

「楽天トラベルゴールドアワード2021」を受賞

「テーマパーク事業」は売上高が前期比24.8%増の54億8,500万円、営業利益は39.4%増の10億6,100万円で、グループ化以来、過去最高の業績を達成した。

2021年8月から9月は、新型コロナウイルス禍の緊急事態宣言解除後からの団体誘致活動等が功を奏し、那須ハイランドパークの10月から7月までの10カ月間の来場者数は過去最高となった。また、那須高原りんどう湖ファミリー牧場においては、湖面に映る幻想的な花火で好評の「りんどう湖花火大会」において、初のゴールデンウィーク開催を実現した。その結果、テーマパーク事業の来場者数は前期比13.7%増の80万1,000人と2ケタの伸びを達成した。

一方、宿泊事業では那須地域の食材を厳選して提供するBBQレストラン「BBQ Village」をオープンしたほか、那須高原りんどう湖ファミリー牧場の乳製品を使用した朝食メニューの提供など、滞在中の魅力創出を図り「楽天トラベルゴールドアワード2021」を受賞した。また、2022年7月には日本最大級のグランピングエリア「ソランピング」を新たにオープンしたことで、過去最高の宿泊者数を記録した。

2023年7月期の営業利益は24.4%増の57億円と予想

日本駐車場開発は今期(2023年7月期)の連結業績について、売上高で前期比11.9%増の294億円、本業の利益を示す営業利益で同24.4%増の57億円、経常利益は20.7%増の56億円、純利益は15.2%増の36億円を予想している。

冒頭で紹介した通り、過去1カ月間の日経平均株価およびTOPIXのパフォーマンスがマイナスに沈むなか、日本駐車場開発が大幅なプラスを記録しているのは、新型コロナウイルス禍や原材料価格の高騰等に直面しながらも好業績を実現する「経営力」が評価されているといえそうだ。

引き続き日本駐車場開発の業績と株価動向から目が離せない。■

(La Caprese 編集部)

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