2023年12月14日、江崎グリコ(本社:大阪府大阪市)は、短鎖脂肪酸を多く生み出す(※1)同社独自のビフィズス菌Bifidobacterium animalis subsp. lactis GCL2505(以下、GCL2505株)と水溶性食物繊維イヌリンによる内臓脂肪(腹部内臓脂肪)、体脂肪(腹部総脂肪)の低減効果を確認したことを明らかにした。
肥満は世界的に急増しており、1975年から2016年の間で3倍近くまで増加している(※2)。日本も例外ではなく、20歳以上の男性の33.0%、女性の22.3%が肥満(BMI≧25 kg/m2)とされている(※3)。江崎グリコは本研究成果について、日常的にGCL2505株とイヌリンを摂取することで、内臓脂肪型肥満やそれによって引き起こされる代謝性疾患の発症を予防できる可能性があるとの見解を示している。
なお、本研究成果は2023年12月7日に国際科学雑誌「Nutrients」に掲載された。以下は、本研究の概要である。
「GCL2505」とイヌリンの摂取による内臓脂肪・体脂肪の低減を確認
腹部内臓脂肪の蓄積は、一般的な肥満より健康への悪影響が大きい
肥満は心血管疾患や糖尿病、一部のがんなどの発症と強く関連しているとされており(※2)、世界的な社会課題である。厚生労働省が令和6年度より展開する「二十一世紀における第三次国民健康づくり運動(健康日本 21(第三次))」においても、個人の行動と健康状態の改善に関する目標の一つとして、肥満者の減少が掲げられている。
肥満の形態の一つである腹部内臓脂肪の蓄積は、一般的な肥満より健康への悪影響が大きいことが知られている(※4)。内臓脂肪組織は、代謝性疾患の発症リスクに影響を及ぼすアディポサイトカインなど、さまざまな生理活性物質を分泌するという報告(※5)もされている。そのため、代謝性疾患の発症を予防するためには、内臓脂肪を減少させることが重要である。
ちなみに、江崎グリコ独自のビフィズス菌であるGCL2505株は健康な成人から分離されたプロバイオティクス株である。これまでの研究により、内臓脂肪の低減効果(※6)や、イヌリンとともに摂取することで、GCL2505株単独の摂取よりも腸内のビフィズス菌を増やすことが明らかにされている(※7)。また、GCL2505株はヒトの腸内にいる一般的なビフィズス菌と比べて、短鎖脂肪酸を多く産生することも報告されている(※1)。短鎖脂肪酸と肥満の関連性について、さまざまな研究が進む中、江崎グリコではGCL2505株とイヌリンによる内臓脂肪、体脂肪への影響を確認する研究に着手した。
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CT検査による腹部内臓脂肪面積、腹部総脂肪面積が有意に低減
BMIが高め(23以上30未満)の成人男女120名を対象に、プラセボ対照二重盲検並行群間比較試験を実施した。
その結果、1日あたり100億個のGCL2505株と2gのイヌリンを 12週間摂取した群(GCL2505群)は、プラセボ群と比較して、CT検査による腹部内臓脂肪面積、腹部総脂肪面積が有意に低減した。また、GCL2505群の糞便中のビフィズス菌数は、プラセボ群と比較して有意に高い値を示した。
「すこやかな毎日、ゆたかな人生」の実現を目指して
GCL2505株とイヌリンを摂取した今回の試験では、内臓脂肪と体脂肪の低減が確認され、内臓脂肪のみが低減した以前の試験(GCL2505株を1日あたり800億個、12週間摂取)(※6)よりも効果的に腹部脂肪を低減できたと考えられる。
健康寿命の延伸には、糖尿病や脂質異常症などの代謝性疾患への対策が不可欠である。そのためには、メタボリックドミノの出発点である肥満、特に内臓脂肪型肥満を予防することが重要と考えられる。今回の結果によって、GCL2505株とイヌリンの継続的な摂取は内臓脂肪、体脂肪の低減につながる有効なアプローチである可能性が示唆された。つまり、日常的にGCL2505株とイヌリンを摂取することで、内臓脂肪型肥満やそれによって引き起こされる代謝性疾患の発症を予防できる可能性がある。
江崎グリコは、今後もGCL2505株と短鎖脂肪酸の可能性を探り、同社のパーパスである「すこやかな毎日、ゆたかな人生」の実現に努める方針だ。■
(La Caprese 編集部)