2023年8月28日、東京証券取引所で森永乳業の株価が一時6,026円まで買われ、年初来の高値を更新した。今年3月1日の安値4,535円から6カ月足らずで32.9%の上昇である。
森永乳業は、牛乳や乳製品、アイスクリーム、飲料その他の食品等の製造・販売を手がける企業である。その源流は1917年に創業した日本煉乳にまでさかのぼる。創業100周年を迎えた2017年には、グループ理念を新たに策定し、「かがやく“笑顔”のために」というコーポレートスローガンを掲げた。このスローガンには、日々の生活や、家族や仲間との団らんを通じて、内面から自然とあふれてくる“笑顔”を生み出していきたい、という想いが込められている。
後段で述べる通り、森永乳業が8月9日に公表した2024年3月期・第1四半期(2023年4月1日~2023年6月30日)の連結業績で営業利益が前年同期比53.3%増と大幅な増益を示したことが、株価にも刺激材料となった。森永乳業は2024年3月期・通期(2023年4月1日~2024年3月31日)の連結業績予想を据え置くなど、慎重な姿勢を崩していないが、株式市場では業績の上振れ期待も広がっているようだ。
今回は森永乳業の話題をお届けしよう。
森永乳業、営業利益は53.3%増
8月9日、森永乳業は2024年3月期・第1四半期(2023年4月1日~2023年6月30日)の連結業績を発表した。同期の売上高は前年同期比7.2%増の1,397億3,800万円、本業の利益を示す営業利益は同53.3%増の96億4,500万円、経常利益は同49.0%増の104億9,900万円、純利益は東京工場跡地売却による特別利益として657億円を計上したこともあり、同1,699.2%増の529億4,200万円と大幅な増益となった。
同期は、栄養・機能性食品事業および主力食品事業において、ヨーグルトや育児用ミルク、ビバレッジ、チーズ、デザートなどの価格改定や、機能性ヨーグルト、チルド飲料「マウントレーニア」、アイスなどの高付加価値商品の提供に努めた。BtoB事業の増収、MILEI GmbH(ミライ社)が堅調に推移したことや新規連結した海外子会社の寄与など海外事業の拡大もあり、全体で増収となった。
利益面では、原燃料価格や各種オペレーションコストを中心に、引き続きさまざまなコストアップの影響を受けた。特に原材料については、2023年4月に乳製品向け生乳取引価格の引き上げが行われた。また、2023年4月に実施した東京工場跡地売却にかかる一時的な税負担や、M&Aによるのれん償却費の増加など、新たなコストアップも発生した。一方で、価格改定や、利益率の高い事業や商品の拡大によるプロダクトミックスの改善、海外事業の拡大、グループ全体でのコストの見直しなどに努めたことが功を奏し、増益となった。とはいえ、森永乳業は原燃料価格の高騰など依然として、厳しい環境が継続するとの認識を示すなど、慎重な姿勢を崩していない。
なお、事業分野別(4本の事業の柱)の業績概況は以下の通りである。
栄養・機能性食品事業
栄養・機能性食品事業では、ヨーグルトの価格改定に取り組んだほか、健康志向の高まりを背景に機能性ヨーグルトの拡大にも継続して注力した。特に「ビヒダス ヨーグルト 便通改善」が堅調に推移した。また、育児用ミルクなどの栄養食品、流動食などを扱うクリニコ社の寄与もあり、事業全体で増収となった。
利益面では、原材料・エネルギー価格の上昇の影響や、オペレーションコストの増加の影響を受けたものの、価格改定やプロダクトミックスの改善、コスト削減などに努め、増益となった。
主力食品事業
主力食品事業は、原材料・エネルギー価格の上昇の影響や、オペレーションコストの増加の影響を受けたものの、ビバレッジ、チーズ、デザートなどの価格改定や、「マウントレーニア」、アイスなどの高付加価値商品の拡大によるプロダクトミックスの改善、コスト削減などに努め、事業全体で増収増益となった。
BtoB事業
BtoB事業は、原材料・エネルギー価格の上昇の影響や、オペレーションコストの増加の影響を受けたものの、構成比の高い業務用乳製品において、消費動向の回復に応じた拡販や価格改定を進め、事業全体で増収増益となった。また、健康ニーズの高まりから、森永乳業の保有する菌体をはじめとする機能性素材への高い関心も継続した。
海外事業
海外事業では、乳原料を製造販売するMILEI GmbH(ミライ社)が好調に推移したほか、M&Aにより新たに連結子会社となったNutriCo Morinaga (Pvt.) LTD.(ニュートリコモリナガ社)、Turtle Island FoodsHoldings, Inc.(タートル アイランド フーズ社)の寄与もあり事業全体でも増収となった。
利益面では、原材料・エネルギー価格の上昇の影響や、M&Aによるのれん償却費の増加などがあったものの、増収効果もあり事業全体で増益となった。
営業利益の進捗率は48.2%、通期業績の上振れ期待も
8月9日、森永乳業は2024年3月期・通期(2023年4月1日~2024年3月31日)の連結業績予想について、売上高で前期比4.6%増の5,500億円、本業の利益を示す営業利益で同16.5%減の200億円、経常利益で同18.3%減の206億円、純利益で同241.9%増の577億円と従来予想(5月15日公表)を据え置いた。
第1四半期は大幅な増益となったものの、森永乳業は原燃料価格の高騰など依然として、厳しい環境が継続するとの認識を示すなど、慎重な姿勢を崩していない。とはいえ、第1四半期の営業利益の進捗率は通期予想の48.2%、同じく経常利益の進捗率は51.0%に達しており、株式市場では通期業績の上振れ期待が広がりを見せている点に留意する必要がありそうだ。
コーポレートスローガン「かがやく“笑顔”のために」を掲げる森永乳業の取り組みを、引き続き注視しておきたい。■
(La Caprese 編集部)