2024年2月20日、東京証券取引所で東洋水産の株価が一時8,689円まで買われ、上場来高値を更新した。2023年1月13日の安値4,760円から13カ月で82.5%の上昇である。
東洋水産は、東京都港区に本社を置く総合食品メーカーである。その源流は1953年に築地市場内にて創業した「横須賀水産」にまでさかのぼる。横須賀水産は水産物の仕入れ・加工・販売を手掛けていたが、1956年に魚肉ハム・ソーセージや缶詰などの加工食品へ進出し、社名を「東洋水産」に改称している。その後、即席麺市場に参入し、1962年に「マルちゃん」ブランドが誕生した。ちなみに、マルちゃんの笑顔には「お客様に美味しさや楽しさ、幸せをお届けしたい」という願いが込められている。
後段で述べる通り、東洋水産が公表した2024年3月期・第3四半期(2023年4月1日~2023年12月31日)の連結業績で大幅な増収増益となったことが、株価のサポート要因となっているようだ。今回は、東洋水産の話題をお届けしよう。
東洋水産、営業利益は50.6%増
1月31日、東洋水産は2024年3月期・第3四半期(2023年4月1日~2023年12月31日)の連結業績を公表した。同期の経営成績は、売上高が前年同期比10.2%増の3,583億9,900万円、本業の利益を示す営業利益は同50.6%増の480億1,100万円、経常利益は同57.9%増の536億2,100万円、純利益は同57.3%増の399億400万円となった。
主なセグメントの概況は以下の通りである。
水産食品事業:コストダウン効果で大幅な増益
水産食品事業の売上高は前年同期比6.2%増の229億7,500万円、セグメント利益は同55.3%増の2億3,200万円となった。同期はコンビニエンスストアの来店客数や業務用・外食用食材の需要回復から販売が伸長したことや、ふるさと納税返礼品の納入があったこと等から増収となった。利益面では原材料価格が下落した商材によるコストダウンの効果により大幅な増益となった。
海外即席麺事業:セグメント利益は74.3%増
海外即席麺事業の売上高は同期比19.4%増の1,539億3,600万円、セグメント利益は同74.3%増の313億9,100万円となった。同期は、米国にて2023年第1四半期に発生した一部得意先の在庫調整による影響はあったものの、7月以降の受注数量は主力商品の「Instant Lunch」シリーズ、新商品を発売した「Bowl」シリーズを中心に前期を上回って推移した。また、メキシコでは主力商品のカップ麺、袋麺ともに好調に推移したほか、2022年10月に米国、メキシコで実施した価格改定による販売単価の上昇もあって大幅な増収増益となった。
国内即席麺事業:主力の「赤いきつねうどん」「緑のたぬき天そば」が伸長
国内即席麺事業の売上高は前年同期比2.2%増の762億7,000万円、セグメント利益は同21.3%増の79億4,500万円となった。同期は、カップ麺において「麺づくり」シリーズや「焼そば」シリーズ等が苦戦したが、主力商品の「赤いきつねうどん」「緑のたぬき天そば」が伸長したほか、「MARUCHAN QTTA」シリーズや「麺之助」シリーズ、「ごつ盛り」シリーズ等も堅調に推移して増収となった。一方、袋麺では「マルちゃん正麺」シリーズが堅調に推移したが、「マルちゃんZUBAAAN!」シリーズが目標に届かず減収となった。利益面では人件費等の増加はあったものの、販売促進費や広告宣伝費等の減少により大幅な増益となった。
低温食品事業:価格改定効果と売上拡大で大幅増益
低温食品事業の売上高は前年同期比8.0%増の431億3,600万円、セグメント利益は同33.1%増の55億9,900万円となった。同期は主力商品の積極的な拡売と新商品の発売により好調に推移した。生麺では「マルちゃん焼そば3人前」シリーズの拡充と「北海道小麦の玉うどん3食入」シリーズのリニューアル効果に加え、新商品の「札幌の味2人前」シリーズも売上の増加に寄与した。冷凍食品では産業給食、行楽関係の需要が回復し、業務用商品が伸長した。利益面では原材料費や製造経費の増加はあったものの、価格改定効果と売上の拡大により大幅な増益となった。
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加工食品事業:魚肉ハム・ソーセージ商品や米飯商品等が堅調
加工食品事業の売上高は前年同期比2.1%減の148億8,900万円、セグメント利益は同39.3%増の5億7,700万円となった。同期は魚肉ハム・ソーセージ商品等や米飯商品等が堅調に推移した。その一方で、フリーズドライ商品等は苦戦した。米飯商品では価格改定や在宅療養者向け需要が一段落した影響があったものの、全体的には大きな落ち込みはなく、堅調に推移した。フリーズドライ商品は価格改定や猛暑等の影響により販売が落ち込み減収となったが、秋冬の需要期に入り回復傾向を示した。利益面では販売促進費や人件費等の増加はあったものの、動力費等の減少により増益となった。
冷蔵事業:配送収入等の増加が寄与
冷蔵事業の売上高は前年同期比4.4%増の183億5,400万円、セグメント利益は同10.8%増の19億5,100万円となった。同期は、物価上昇や円安の影響等により、原材料を中心とした輸入品は低調な荷動きとなった。しかし、安定的な保管在庫の確保と国内における製造品の取扱いが堅調だったことで、関連する配送や付帯作業等が増加し、増収となった。利益面では人件費や補修費等の増加による影響はあったものの、配送収入等の増加により増益となった。
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連結業績予想に対する営業利益の進捗率は92.3%
1月31日、東洋水産は2024年3月期・通期(2023年4月1日~2024年3月31日)の連結業績予想について、売上高で前期比6.9%増の4,660億円、本業の利益を示す営業利益で同28.9%増の520億円、経常利益で同30.4%増の570億円、純利益で同29.8%増の430億円と従来予想(2023年10月31日公表)を据え置いた。
東洋水産は通期の連結業績予想を据え置いた理由として、今後の景気・個人消費動向、原材料価格や動力費、為替等の影響が不透明であり、現時点で業績への影響を合理的に算定することが困難であることを挙げている。とはいえ、通期に対する第3四半期の進捗率は、売上高で76.9%、営業利益で92.3%、経常利益で94.1%、純利益で92.8%に達しており、すでに各段階利益で90%を超えている点が気になるところである。今後、東洋水産が連結業績予想を修正する可能性もないとはいえないので注意が必要だろう。■
(La Caprese 編集部)