2023年12月18日、資生堂(本社:東京都中央区)は山形県で伝統的に生産されている紅花の品種「もがみべにばな」から抽出したエキスが、血管内皮細胞同士の接着を担うVE-カドヘリンに働きかけ、毛細血管の構造を安定化する効果を見出す研究成果を発表した。
血管の構造は、①壁細胞の接着、②血管内皮細胞同士の接着の主に二つの要素によって安定化している。資生堂ではこれまでにも、血管内皮細胞と血管壁細胞の接着を安定化する効果を持つ成分を見出してきたが、今回新たな発見により、内皮細胞同士の接着も促し、より毛細血管の構造を安定に導く可能性を発見したことになる。資生堂は、本研究成果を血管に着目した、シミ・くすみ、しわ、たるみといったエイジング悩みにアプローチするソリューションへと応用する方針である。
今回は資生堂の研究成果を紹介したい。
ホリスティックな視点の皮膚科学研究
資生堂は「肌本来の美しさを引き出すには体内との関わりが大切」と考え、血管、リンパ管、神経、免疫など、皮ふと全身との関わりを踏まえたホリスティックな視点での皮膚科学研究にいち早く取り組んできた。特に血管については、独自の血管観察技術を開発・活用しながら、血管の状態とシミ、しわ、たるみなど多くの肌状態との関連を明らかにしてきた。前述の通り、血管の構造は、①壁細胞の接着、②血管内皮細胞同士の接着の主に二つの要素によって安定化されている。資生堂はこれまでに、血管内皮細胞と血管壁細胞の接着を安定化する効果を持つ成分について見出してきた。
さらに、資生堂は紅花について30年以上にわたり着目しており、血流を促す効果が知られているアデノシンが紅花に含まれていることも確認している。今回、日本をオリジンとする資生堂としての視点、また過去の研究から紅花が血流に関係するというサイエンスの視点から、山形県で生産される「もがみべにばな」から抽出したエキス(以降、「べにばな」から抽出したエキス)に新たに着目した。血管と美容との関係が大きく注目される中、本研究では「べにばな」から抽出したエキスが血管にもたらす影響について検証した。
「べにばな」から抽出したエキスの毛細血管に対する機能確認
毛細血管は血管内皮細胞とそれを覆う壁細胞の二層構造になっている。毛細血管の構造には内皮細胞と壁細胞の接着に加えて、血管の内側を形成する血管内皮細胞同士の接着が重要である。
そこで、血管内皮細胞を培養し「べにばな」から抽出したエキスを添加し、血管内皮細胞同士の接着を担うVE-カドヘリンの発現の様子を観察した。
その結果、「べにばな」から抽出したエキスの添加により、細胞同士の接着部位にVE-カドヘリンが密に集まることが確認できた(図2)。さらに、VE-カドヘリンの発現量を確認したところ、「べにばな」から抽出したエキス添加により上昇していることも判明した(図3)。これらの結果より、「べにばな」から抽出したエキスが、血管内皮細胞同士の接着を担うVE-カドヘリンに働きかけ、血管構造の安定化に寄与していることが示唆された。
資生堂は、本研究成果を血管に着目した、シミ・くすみ、しわ、たるみといったエイジング悩みにアプローチするソリューションへと応用する方針である。
資生堂のさらなる研究成果を期待したい。■
(La Caprese 編集部)