2023年7月26日、東京証券取引所でバルミューダの株価が一時1,966円まで売られ、上場来安値を更新した。今年1月5日の高値2,614円から6カ月半ほどで24.8%の下落である。
バルミューダは、家電事業を収益の柱とする企業である。バルミューダの製品は、機能性やデザイン性に定評があり、日本デザイン振興会主催のグッドデザイン賞のほか、キッズデザイン協議会主催のキッズデザイン賞、ドイツの「Design Zentrum Nordrhein Westfalen」が主催するRed Dot デザイン・アワード、同じくドイツの「iF International Forum Design GmbH」が主催するiFデザイン・アワードなど数多くのデザイン賞を受賞している。
そんなバルミューダは、2020年12月16日に東京証券取引所マザーズ市場(当時)に新規上場を果たし、将来有望な新興企業として人気化、2021年1月26日には上場来高値となる1万610円を記録した。ところが、現在の株価は同高値から5分の1以下(2023年7月26日1,966円)に落ち込んでしまっている。
後段で述べる通り、バルミューダが5月12日に発表した①2023年12月期・第1四半期(2023年1月1日~2023年3月31日)の連結業績が最終赤字に転落したほか、②携帯端末事業を終了し、同期に事業整理損5億3,600万円を特別損失に計上したこと、③さらに、通期(2023年1月1日~2023年12月31日)の連結業績予想についても、最終赤字に転落する見通しが示されたこと……などが地合い悪化を助長しているようだ。
今回はバルミューダの話題をお届けしよう。
バルミューダ、最終赤字に転落
5月12日、バルミューダは2023年12月期・第1四半期(2023年1月1日~2023年3月31日)の連結業績を発表した。同期の売上高は前年同期比41.2%減の24億500万円、営業損益は4億1,600万円の赤字(前年同期は1億7,200万円の営業利益)、経常損益は3億5,400万円の赤字(前年同期は1億4,400万円の経常利益)、最終損益は11億4,400万円の赤字(前年同期は9,600万円の最終利益)となった。
まず、注目したいのは、同期の国内における家電業界全体の動きである。一般社団法人日本電機工業会(JEMA)によると、2023年1月から3月における民生用電気機器の国内出荷金額は6,200億円(前年同期比102.5%)であったものの、金額ベースで約6割、数量ベースで9割近い製品カテゴリーにおいて、前年同期の実績を下回った。これは、外出機会の増加や物価上昇による支出先の変化等、消費者の行動変化が家電製品の販売動向に影響を与えたものと考えられる。
バルミューダは、こうした消費環境の変化が売上に影響したとの認識を示した。ちなみに、同期のバルミューダは、製品の体験価値を伝えるためのコミュケーション活動を積極的に展開した。「BETTER MORNING with BALMUDA」と題した特別企画では、キッチンシリーズを愛用している消費者へのインタビューや、SNSに投稿した「お気に入りの朝」の紹介、旗艦店BALMUDA The Store Aoyamaを活用した体験イベント等を実施した。
一方、海外では、各国において製品ラインナップを拡充した。中国ではBALMUDA The Brew(オープンドリップ式コーヒーメーカー)を2月に、韓国ではBALMUDA The Gohan(電気炊飯器)の新モデルを3月に発売した。また1月には、北米におけるさらなる売上拡大の推進を目的に、米国子会社を設立した。
国内販売については、前年同期には新型コロナウイルスの変異株の感染拡大等による巣ごもり需要が残っており、その反動の影響もあった。一方、海外販売は、韓国への出荷調整等により前年実績を下回った。なお、国内においては既存製品のリニューアルモデルや新製品の発売、海外においては製品ラインナップのさらなる拡充や米国駐在員の派遣、東南アジアへの進出等を予定している。
携帯端末事業を終了。業績復活の可能性は?
5月12日、バルミューダは2023年12月期(通期=2023年1月1日~2023年12月31日)の連結業績予想について、売上高で前期比9.4%減の159億5,000万円、営業損益で5億2,000万円の赤字、経常損益で5億5,000万円の赤字、最終損益で12億5,000万円の赤字への下方修正を発表した。ちなみに、前回予想(2023 年2月10日公表)では営業損益で1億円の利益、経常損益で5,000万円の利益、最終損益で3,500万円の利益となる見立てであったが、今回の下方修正で軒並み赤字転落の見通しが示された。
バルミューダは通期予想を下方修正した理由について、❶営業損益および経常損益については、携帯端末事業の終了決定に伴い、見込んでいた費用の一部を特別損失として計上することによる改善効果がある一方で、売上予想の修正に伴う売上総利益の減少、今期並びに来期以降の売上拡大に寄与する広告宣伝費、試験研究費および販売促進費の積み増し等により、期初の予想より減少する見通し、❷最終損益については、経常利益段階までの減少に加え、携帯端末事業の終了決定に伴う特別損失並びに法人税等調整額の計上により、期初の予想を修正した……としている。
バルミューダは、2021年5月に携帯端末事業への新規参入を決定し、その後も5Gスマートフォンを投入するなど事業を継続してきた。しかし、次期モデルの開発が原材料価格の高騰と急速な円安進行を背景に継続困難となり、別モデルの開発も条件が整わなかったことから今回終了を決定したという。なお、それに伴って、2023年12月期・第1四半期に事業整理損5億3,600万円を特別損失に計上した。
冒頭でも述べた通り、バルミューダの製品は機能性やデザイン性に定評があり、これまで数多くの賞を受賞してきた。今後、業績面で復活するのか? 株価の動きとともに注視しておきたい。■
(La Caprese 編集部)