2023年6月28日、東京証券取引所で住友ゴム工業の株価が一時1,423円まで買われ、年初来の高値を更新した。今年3月20日の安値1,095円から3カ月余りで30.0%の上昇である。
住友ゴム工業は、兵庫県神戸市に本社を置く、タイヤおよびスポーツ用品等を製造する企業である。その源流は、1909年に英国のダンロップ社が日本で設立したゴム工場にまでさかのぼる。1910年には、日本初の近代的ゴム工場として自転車タイヤ・チューブや人力車タイヤ(ソリッド)の生産を開始、1911年にはゴム手袋や水枕の生産を開始している。そして、1913年には記念すべき「国産第1号」となる自動車用タイヤの生産をスタートした。また、スポーツ用品では、1930年にゴルフボールと硬式テニスボールの生産を開始。1960年に住友電工、住友商事の資本参加を経て、1963年に日本側の出資比率が50%を超えたことで、現在の「住友ゴム工業」に社名を変更した。
後段で述べる通り、住友ゴム工業が5月15日に発表した2023年12月期・第1四半期(2023年1月1日~2023年3月31日)の連結業績は減益となったものの、通期(2023年1月1日~2023年12月31日)の連結業績予想については大幅な増益となる見通しが示されており、株価にも追い風となっているようだ。
今回は住友ゴム工業の話題をお届けしたい。
住友ゴム工業、2023年12月期・第1四半期は大幅な減益
5月15日、住友ゴム工業は2023年12月期・第1四半期(2023年1月1日~2023年3月31日)の連結業績を発表した。同期の売上収益は前年同期比10.5%増の2,767億6,100万円、事業利益は同46.1%減の79億7,600万円、営業利益は同45.2%減の77億6,700万円、最終利益は同65.9%減の40億600万円と大幅な減益となった。
セグメント別の状況は以下の通りである。
タイヤ事業は前年同期比81.5%の大幅減益
タイヤ事業の売上収益は前年同期比9.0%増の2,297億9,200万円、事業利益は同81.5%減の19億3,400万円となった。
まず、国内新車用タイヤは、世界的な半導体不足等により自動車メーカーの減産が続いた影響を受け低調に推移したものの、足元の販売状況は前年同期を上回るなど回復傾向が見られ始めている。また、国内市販用タイヤについては、冬タイヤのプレミアム商品が市場の高い支持のもと前年同期を上回る販売を達成したものの、全体としての販売は前年同期から微減となった。
海外新車用タイヤについても、半導体不足の影響による自動車メーカーの減産がマイナス要因となったが、新型コロナウイルス感染症の影響で大きく落ち込んだ前年同期よりも販売は回復し、前年同期を若干上回ることとなった。また、海外市販用タイヤは、アジア・大洋州地域において販売が徐々に回復したものの、前年同期を下回ることとなった。インドネシアやタイでは前年同期に比べると新型コロナウイルス禍の行動制限が緩和されたこともあり回復傾向が見られ、販売が前年同期を上回った。欧州においてはインフレ進行の影響もありタイヤ需要が鈍化、販売は前年同期を下回った。北米ではワイルドピークシリーズが堅調だった。南米も旺盛な需要を背景に堅調に推移した。
スポーツ事業は大幅な増収増益
スポーツ事業の売上収益は前年同期比19.5%増の354億6,800万円、事業利益は同37.2%増の54億5,900万円となった。
同期は、ゴルフ用品が北米・韓国など海外を中心に販売が好調だった。テニス用品も、欧州を中心に各地で販売が好調だったほか、ウェルネス事業も値上げ効果や新規総合店の開店もあり、売上収益は前年同期を上回って推移した。その結果、スポーツ事業は上記の通り、大幅な増収増益となった。
産業品他事業は医療用ゴム製品などが拡大
産業品他事業の売上収益は前年同期比15.6%増の115億100万円、事業利益は同69.6%増の5億7,200万円と大幅な増収増益となった。
同期は、国内の使い切りゴム手袋やOA機器用ゴム部品で販売が減少したものの、医療用ゴム製品やインフラ事業などで受注が拡大した。その結果、産業品他事業は上記の通り、大幅な増収増益となった。
通期見通しを修正。最終利益は123%増へ
5月15日、住友ゴム工業は2023年12月期(通期=2023年1月1日~2023年12月31日)の連結業績予想について、売上収益で前期比5.6%増の1兆1,600億円、事業利益で同100.3%増の440億円、営業利益で同130.2%増の345億円、最終利益で同123.0%増の210億円となる見通しを示した。これは従来予想(2023年2月14日公表)に比べて、売上収益でマイナス3.3%、事業利益でプラス25.7%、営業利益でプラス15.0%、最終利益でプラス16.7%の修正である。
住友ゴム工業は修正の理由について、想定よりも半導体不足による自動車メーカーの減産基調が継続した影響等により、売上収益においては従来予想を下回る見込みとしている。一方、利益面については、海上輸送コストや原材料価格の高騰の影響が緩和傾向にあること等を考慮して、事業利益、営業利益、最終利益を従来予想からそれぞれ大幅に上方修正したと説明している。
引き続き、住友ゴム工業の業績や株価を注視しておきたい。■
(La Caprese 編集部)