2023年6月6日、資生堂(本社:東京都中央区)は独自に設定した高周波電気刺激(RF※1)をベースとする特殊複合エネルギー(特殊RF)の照射と、オタネニンジン根抽出液を組み合わせることで、メラニン生成を抑制することに成功したと発表した。本研究成果は、シミの原因の一つとして知られる老化線維芽細胞(※2)の出現を抑制し、さらに正常な線維芽細胞の増殖を促すことで、これらの細胞のバランスを整え、真皮のシミ肌環境を改善するというもの。資生堂によると、美容医療よりも優しい力で作用する物理エネルギー刺激(RF含む)において、真皮線維芽細胞を介したシミ改善のアプローチは、これが初めてのことだという。
今回は資生堂の研究成果を紹介したい。
資生堂、真皮のシミ肌環境を改善する新技術を開発
(図1) 出典:資生堂
老化線維芽細胞は、真皮におけるシミの原因の一つとして知られるが、これまでは美容医療でのアプローチが主であり、一般的に、肌に負担を与えずに真皮環境を十分に改善することは難しいとされてきた。そうした中、資生堂は長年にわたり多くの消費者の肌悩みの一つであるシミの改善に向けて研究に取り組む中で、家庭用美容機器へも応用が可能な物理エネルギー刺激の一つであるRFが真皮まで作用することに着目した。そこで本研究では、美容医療よりも優しい力で独自に設定した特殊RFを用いて、真皮のシミ肌環境を改善する新たなアプローチを探索した。
特殊RFの照射で老化線維芽細胞が減少
シミのある肌の真皮では、老化線維芽細胞が多数存在し、蓄積した紫外線ダメージによってメラニン産生を促進していることが判明している。今回、紫外線による老化線維芽細胞に特殊RFを照射することで、老化線維芽細胞が減少することを確認した。また、オタネニンジン根抽出液の添加により、さらに線維芽細胞全体に占める老化線維芽細胞の割合が低下し、真皮環境が改善することが示された(図2)。
(図2) 出典:資生堂
特殊RFの照射とオタネニンジン根抽出液による併用効果
次に、特殊RF照射ならびにオタネニンジン根抽出液を加えた老化線維芽細胞と3次元表皮モデルを組み合わせて、紫外線照射によるメラニン生成におけるそれぞれの効果を確認した。まず、特殊RFを老化線維芽細胞に照射すると、3次元表皮モデルのメラニン生成が有意に抑制された。また、オタネニンジン根抽出液単独ではメラニン生成抑制効果が認められなかったが、特殊RFと組み合わせることで特殊RF単独に対して有意にメラニン生成を抑制することを確認した(図3)。今回、老化線維芽細胞の比率が変化する際に、メラニン量が有意に低下したことから、シミ改善には老化線維芽細胞と正常な線維芽細胞のバランスが重要であることも明らかになった。
(図3) 出典:資生堂
根本的なシミ・くすみ悩みの解決を目指して
資生堂は、シミ特有の肌状態の解析からさまざまなシミ形成要因を解明するなど、根本的なシミ・くすみ悩みの解決を目指して、長きにわたってシミ研究をリードしてきた。今回、特殊RFと植物エキスの組み合わせによって、シミ肌環境を作り出す老化線維芽細胞と正常な線維芽細胞の両方に働きかけ、真皮のシミ肌環境を改善し、メラニン生成を抑制することを発見できたのは、長年にわたる研究の積み重ねの成果といえるだろう。
資生堂のさらなる研究成果を期待したい。■
(La Caprese 編集部)