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サルコペニア、フレイルとの関連も指摘される「慢性便秘症」 ビフィズス菌BB536摂取で、高齢者慢性便秘症患者の便秘症状や上腹部症状の改善を確認――順天堂大学の研究成果

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(画像= Canva、La Caprese)

2022年11月28日、順天堂大学の研究グループは「高齢者慢性便秘症患者」に対してビフィズス菌BB536の摂取介入のプラセボ対照二重盲検試験で、便秘症状の改善、ならびに上腹部症状の改善を確認したと発表した。

順天堂大学の研究グループによると、「慢性便秘症」は年齢とともに増加し、特に高齢者で多くみられる疾患であるという。また、近年は腸内のみならず、パーキンソン病やサルコペニア、フレイル、メタボリックシンドローム等の代謝・動脈硬化性疾患との関連や、生命予後との関連も指摘されており、超高齢社会のわが国において「健康長寿」を妨げる一因とも指摘されている。医療現場における便秘症の治療もさることながら、予防や改善といった未病対策としても重要視されているのが現状だ。

今回、順天堂大学の研究グループがリリースしたビフィズス菌BB536の摂取介入のプラセボ対照二重盲検試験は、本邦で初めて実施されたものであり、今後はさまざまな腹部症状を有する高齢者の健康維持に資することが期待されている。

なお、本研究はThe American Journal of GASTROENTEROLOGY誌のオンライン版に2022年10月11日付で公開された。詳細は以下の通りである。

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高齢の「慢性便秘症患者」男女80名で検証

「慢性便秘症」は年齢とともに増加し、特に高齢者で多くみられる疾患である。実際、高齢者は便中のビフィズス菌の比率が減少していることが確認されており、慢性便秘症と腸内細菌叢の関係が注目されている。

特にビフィズス菌BB536は、ヒトでの摂取経験も豊富で安全な多機能プロバイオティクスであり、成人を対象とした臨床試験では、排便回数の改善が確認されている。しかしながら、高齢者の「慢性便秘症」におけるビフィズス菌BB536の有効性や、プロバイオティクス摂取による腸内細菌叢の変化については、これまで詳細な検討がされてこなかったのが実情である。そこで、今回の研究では本菌株の二重盲検ランダム化比較試験を行い、その有効性と安全性を検証した。

対象者は高齢(65歳以上)の「慢性便秘症患者」の男女80名。「慢性便秘症」は、Rome IV基準(機能性便秘+便秘型IBS)を満たし、かつ「便秘症状重症度(CSS)スコア」が6点以上の患者とした。試験デザインは「単施設プラセボ対照ランダム化二重盲検並行群間比較試験」で、対象者をランダムに2群に分け、ビフィズス菌BB536を500億個含む粉末(スティック)、あるいはビフィズス菌を含まないプラセボ粉末(スティック)を1日1スティック、4週間摂取し、さらに摂取後4週間を後観察期間とした(図1)。

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評価は「便秘症状重症度(CSS)」と「FSSG問診票(FSSG)」で、上記「図1」に示す通り摂取前と4週間後、摂取終了4週間後に実施し、腸内細菌叢は摂取前と4週間後に糞便を採取し、解析を実施した。

便秘症状や上腹部症状の有意な改善を確認

結果は、まず「便秘症状重症度(CSS)」による評価において、ビフィズス菌BB536摂取群では、その摂取前(0週目)に比べ摂取4週目で「排便回数」「便秘症状重症度(CSS)スコア」、 8週目(後観察期間)で「排便困難」「便秘症状重症度(CSS)スコア」の有意な改善が確認された。

また、プラセボ群と比較すると、ビフィズス菌BB536の摂取により、摂取4週目で「排便回数」の有意な改善、「排便未完遂回数」や「便秘症状重症度(CSS)スコア」の改善傾向が確認された(図2)。

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他方、「FSSG問診票(FSSG)」による上腹部症状への影響については、ビフィズス菌BB536摂取群で、その摂取前(0週目)と比べて、摂取4週目で「胸やけ」や「嚥下時つかえ」、8週目(後観察期間)で「胃もたれ」「喉違和感」「嚥下時つかえ」「FSSGスコア」において有意な改善が観察された。一方、プラセボ摂取群では摂取前後でいずれも有意な変化は見られなかった。

また、プラセボ摂取群と比較して、ビフィズス菌BB536摂取群は、摂取4週目で「胸やけ」や「食後悪心」、8週目(後観察期間)で「腹部膨満感」「喉違和感」「嚥下時つかえ」「FSSGスコア」に有意な改善または改善傾向が確認された(図3)。

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ちなみに、「高齢者慢性便秘症」と腸内細菌の関連性については、腸内細菌叢解析を行った結果、ビフィズス菌BB536 摂取前後で全体の構成に大きな変動は認められなかった。これらの結果から、菌叢を介した影響よりは、ビフィズス菌BB536の菌体成分や代謝産物が便通に影響を与えている可能性が示唆された。

さまざまな腹部症状を有する高齢者の健康維持に資することを期待

前述の通り、「慢性便秘症」は高齢者で多くみられる疾患である。同時に、高齢者は便中のビフィズス菌の比率が著しく減少することも知られている。今回、ビフィズス菌BB536摂取によって高齢者の「慢性便秘症患者」の便秘症状の改善、さらに上腹部症状も改善されることがプラセボ対照二重盲検試験により、本邦で初めて確認された意義は大きい。

胸やけや心窩部痛、腹痛、下痢、便秘といった消化管症状が慢性的に存在し、その原因となる器質的異常が認められないものを「機能性消化管障害」と呼ぶ。その「機能性消化管障害」のなかには胃痛や胃もたれを呈する「機能性ディスペプシア」「機能性胸やけ」のほか、便秘や下痢を呈する「過敏性腸症候群」などがある。これらの症状は腸内細菌叢の異常、粘膜免疫機構、内臓知覚過敏、中枢神経系調節異常など多くの因子が複雑に関連して発生するため、さまざまな「機能性消化管障害」とのなかで、症状のオーバーラップや移行、消褪が認められることがある。

今回紹介した順天堂大学の研究成果は、さまざまな腹部症状を有する高齢者に対して、ビフィズス菌の摂取が、便秘症状のみならず、上腹部症状も改善することを示唆しており、高齢者の健康維持に役立てられることが期待される。■

(La Caprese 編集部)

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