2024年4月26日、野村不動産ホールディングスの株価が一時4,461円まで買われ、年初来高値を更新した。今年3月14日の安値3,633円から1カ月余りで22.8%の上昇である。
野村不動産ホールディングスは、主に不動産開発による価値創造を行う「デベロップメント分野」と、不動産関連サービスの提供による価値創造を行う「サービス・マネジメント分野」を展開する企業群の持株会社である。「デベロップメント分野」は、住宅部門、都市開発部門、海外部門、「サービス・マネジメント分野」は、資産運用部門、仲介・CRE部門、運営管理部門の計6部門で事業を構成している。
後段で述べる通り、野村不動産ホールディングスが先週4月25日に公表した、❶2024年3月期・通期(2023年4月1日~2024年3月31日)の連結業績で純利益が過去最高益を更新したほか、❷2025年3月期・通期(2024年4月1日~2025年3月31日)の連結業績予想についても増収増益となる見通しが示されたこと、❸さらに、2025年3月期の年間配当予想を前期比25円増額の165円に増配する方針を示したこと……などが株価にも刺激材料となった。
今回は野村不動産ホールディングスの話題をお届けしよう。
野村不動産ホールディングス、純利益が過去最高
4月25日、野村不動産ホールディングスは2024年3月期・通期(2023年4月1日~2024年3月31日)の連結業績を公表した。同期の経営成績は、売上高が前期比12.2%増の7,347億1,500万円、本業の利益を示す営業利益は同12.6%増1,121億1,400万円、事業利益は同8.1%増の1,136億6,500万円、経常利益は同4.4%増の982億4,800万円、純利益は同5.6%増の681億6,400万円と増収増益となり、純利益で過去最高益を更新した。
同期の住宅分譲市場は、首都圏において2年連続で年間供給戸数が減少する中、旺盛な需要が継続し、販売価格の上昇が見られた。旺盛な需要の背景としては、住宅ローンの金利が安定的に推移したこと、共働き世帯の増加等により購入者における世帯所得が向上したこと等が影響したと想定される。一方、賃貸オフィス市場では、働き方の多様化に即した、より付加価値の高いオフィスへの需要等が見られ、都心エリアを中心に空室率が改善した。また、これまで新型コロナウイルス禍の影響を大きく受けていた商業施設・ホテル市場では、行動制限や入国制限がおおむね解除されたことにより、サービス消費やインバウンド需要の回復が進んだ。
また、不動産投資市場では、国内において長期金利が緩やかな上昇傾向にあるものの、依然として良好な資金調達環境と投資家の旺盛な投資意欲によって、物件取引量が堅調に推移し、市場規模の拡大が継続した。中古住宅の流通市場では、旺盛な需要によって、首都圏中古マンションの取引件数は高い水準で推移し、取引価格の上昇が継続する等、堅調な市況が続いた。
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収益不動産事業で物件売却収入が増加
部門別では、主力の「住宅部門」が好調だった。収益不動産事業において、物件売却収入が増加したことが同部門の業績に寄与した。ちなみに、同期はマンション分譲で「プラウドタワー目黒MARC」(東京都品川区)、「プラウドシティ豊田多摩平の森」(東京都日野市)、「プラウドシティ大津京」(滋賀県大津市)等を、戸建分譲では「プラウドシーズン光が丘グレイス」(東京都練馬区)等、計4,298戸(前期比156戸増)を売上に計上した。なお、同期末における契約済未計上残高は3,461戸(前期末比358戸減)で、次期計上予定売上高に対する期首時点の契約率は72.5%となっている。
「都市開発部門」も好調に推移した。同期は主に収益不動産事業において、物件売却収入が増加したことが同部門の業績に寄与した。一方で、「海外部門」は減収減益となった。「資産運用部門」は増収増益、「仲介・CRE部門」は増収減益、「運営管理部門」は増収増益となった。
その結果、同期は前述の通り、純利益で過去最高益を更新した。
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増配計画など株主還元姿勢も好材料
4月25日、野村不動産ホールディングスは2025年3月期・通期(2024年4月1日~2025年3月31日)の連結業績予想について、売上高で前期比7.5%増の7,900億円、本業の利益を示す営業利益で同1.7%増の1140億円、事業利益で同3.8%増の1,180億円、経常利益は同1.8%増の1,000億円、純利益は同2.7%増の700億円と増収増益となる見通しを示した。見立て通りとなれば、純利益で再び過去最高益を更新することとなる。
なお、冒頭で述べた通り、野村不動産ホールディングスは2025年3月期の年間配当予想を前期比25円増額の165円に増配する方針を示した。野村不動産ホールディングスは、①2022年4月に策定した中長期経営計画フェーズⅠ(2023年3月期~2025年3月期)において、総還元性向40~50%の方針を掲げていることに加え、②2025年3月期より、配当の安定性の向上を目的に年間の配当金について、DOE(年間配当額÷期中平均自己資本)で4%を満たす水準を下限とする方針を設定している。2025年3月期の増配計画はこれら①②の方針に基づくものである。
引き続き、野村不動産ホールディングスの業績や株価を注視しておきたい。■
(La Caprese 編集部)