ワコールホールディングス、2024年3月期は最終黒字へ。株価は年初来高値、増配・自社株買いも刺激材料

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(画像= La Caprese)

2023年5月17日、東京証券取引所でワコールホールディングスの株価が一時3,070円まで買われ、年初来の高値を更新した。今年2月14日の安値2,220円から3カ月で38.3%の上昇である。

ワコールホールディングスは、主に衣料品メーカー等を傘下に置く持株会社である。子会社56社および関連会社7社で構成され、事業の主力として婦人のランジェリー等のインナーウェアや、アウターウェア、スポーツウェアなどの製造・販売を展開しているほか、飲食・文化・サービスおよび店舗内装工事の事業も手がけている。

後段で述べる通り、ワコールホールディングスが5月12日に発表した2023年3月期(2022年4月1日~2023年3月31日)の連結業績は最終赤字に転落したが、①2024年3月期(2023年4月1日~2024年3月31日)の連結業績予想については最終黒字となる見通しを示したこと、②2024年3月期の年間配当は前期比20円増の100円に増配する方針を示したこと、③発行済み株式数(自社株を除く)の6.60%にあたる380万株・100億円を上限とした自社株買いとあわせて、2023年5月26日付で350万株の自社株を消却すると発表したこと……などが刺激材料となった。

今回はワコールホールディングスの話題をお届けしよう。

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ワコールホールディングス、2023年3月期は最終赤字に転落

5月12日、ワコールホールディングスは2023年3月期(2022年4月1日~2023年3月31日)の連結業績を発表した。同期の売上収益は前期比9.6%増の1,885億9,200万円、事業利益は730.4%増の41億200万円、営業損益は34億9,000万円の赤字(前期は32億9,100万円の営業利益)、税引前損益は6億9,900万円の赤字(前期は40億8,300万円の税引前利益)、そして最終損益は17億7,600万円の赤字(前期は17億3,200万円の最終利益)となった。

同期は国内事業において、引き続き「顧客データの活用」「オンラインとオフラインの融合」などによる顧客体験価値の向上に向けた独自のCX戦略を推進するとともに、収益力の向上に向けた取り組みを強化し、「レジリエントな企業体質への転換」を進めた。また、海外事業では既存進出エリアでの堅実な売上拡大に加え、EC事業の拡大など、さらなる成長に向けた取り組みを進めた。一方、財務戦略については、収益力の向上と資本効率の改善に向けた諸施策を進め、ROEの向上に取り組んだ。

その結果、上記の通り、売上収益は増加した。事業利益も増収効果に加え、ワコールでのフレックス定年制度の一部改定が利益にプラスに影響したことから、大幅に増加した。しかし、その一方で、営業損益は旧大阪事業所の固定資産売却益や、ワコールインターナショナル(米国)に係るのれんや無形資産などの減損損失、ワコールでのフレックス定年制度の特別運用の実施に伴う費用計上などで赤字に転落した。税引前損益、最終損益も営業赤字が響いて赤字転落となった。

主なセグメントの状況は以下の通りである。

ワコール事業(国内)

ワコール事業(国内)のセグメントは、経済活動に対する制限の緩和が進んだものの、話題性のある商材の不足などを背景に店舗への来店客数が伸び悩んだことに加え、物価上昇を受けた買い控えや、取引先の仕入抑制などの影響もあり、想定を大幅に下回る結果となった。再成長に向けて注力するCX戦略については、顧客データの統合を通じたリテンションマーケティングの強化などが奏功し、会員顧客による購買は計画通りに推移したものの、新規を含む非会員顧客による購買については、来店や顧客獲得につながる効果的なプロモーション施策を打ち出せなかったことから低調な推移となった。

ワコール事業(海外)

ワコール事業(海外)のセグメントは、ワコールヨーロッパにてボディポジティブのトレンドの高まりを背景に「Elomi」ブランドが伸長したことに加え、スイムウェアも好調に推移した。百貨店や専門店、ECの売上も堅調に推移し、成長トレンドを維持した。

一方、ワコールインターナショナル(米国)は急激な物価上昇などに伴う個人消費の減速を受け、低調に推移した。米国ワコールは、店頭売上の低迷や取引先の仕入抑制、主力商品の生産遅延などの影響による実店舗チャネルの苦戦が響き、現地通貨ベースで減収となった。

「LIVELY」ブランドを展開するIntimates Online, Inc.は、足元のマーケティング環境の悪化を受け、2022年8月に経営体制を刷新して収益性の改善に取り組んだが、広告宣伝費を大幅に抑制したことで訪問客数が落ち込み、大幅な減収となった。

中国ワコールは、ゼロコロナ政策下での厳格な行動制限による商業施設の休業や来店客数の減少に加え、ECの苦戦が響き、大幅な減収となった。

ピーチ・ジョン事業

ピーチ・ジョン事業は、主力の「ナイスバディシリーズ」の店頭売上が好調に推移したことなどから直営店の売上は前期を上回った。一方、自社ECでの売上は、新たなミューズや新商品を活用したコンテンツマーケティング施策を実施して訪問者の増加を図ったものの、効果を得ることができず、前期を下回った。なお、中国子会社の事業活動は2022年12月をもって終了している。

その他

その他のセグメントは、ルシアンにて自社ブランドの売上が回復したものの、大手衣料品チェーン向けのプライベートブランド商品の販売が不調で、減収となった。七彩およびAiについては、行動制限の緩和に伴う需要の回復から増収となった。

2024年3月期、最終黒字に向けた3つの課題

5月12日、ワコールホールディングスは2024年3月期(2023年4月1日~2024年3月31日)の連結業績予想について、売上収益で前期比8.7%増の2,050億円、事業利益は同46.3%増の60億円、営業利益は60億円(前期は34億9,000万円の営業赤字)、税引前利益は70億円(前期は6億9,900万円の税引前赤字)、最終利益で48億円(前期は17億7,600万円の最終赤字)と、最終黒字に復活する見通しを示した。

ワコールホールディングスは2024年3月期の課題について、①資本効率重視の経営へさらなる変化②ガバナンスの強化③事業収益力の改善……を挙げている。

「資本効率重視の経営へさらなる変化」については、将来の成長を加味した市場評価である時価総額が純資産を下回って推移しており、収益性を早期に改善し、資本コストを上回る資本収益性を達成することで、低迷するPBRを1倍以上の水準に回復させることを重要課題であるとの認識を示した。そのうえで、各事業会社・各事業部が従来以上に収益性と資本効率を重視する経営へ移行するとともに、実効性の高い戦略を策定・遂行することで、持続的な成長を通じた中長期的な企業価値向上を実現する方針を示した。

「ガバナンスの強化」については、資本効率重視の経営へ移行し、資本コストを上回る資本収益性を達成するために、業務執行に対する取締役会の監督機能のさらなる強化を図り、経営の実効性を高める必要があるとの認識を示した。また、ワコールホールディングスの課題である収益力と資本効率の改善を着実に実行するため、取締役会のスキルセットを検証し、投資・金融資本市場に関する経験や知見を有する社外取締役を追加選任することも明らかにした。

「事業収益力の改善」については、新型コロナウイルス禍の各国・地域の行動規制は緩和されたものの、感染症の経験を通して変化した消費者ニーズや消費行動への対応が不十分であったため、収益の回復が遅れているとの認識を示した。こうした状況を踏まえ、ワコールホールディングスは新しい顧客体験価値の提供と新規事業の創出によって再成長を実現すると同時に、コスト構造改革を継続し、事業効率を高める方針を示した。

なお、冒頭で述べた通り、ワコールホールディングスは、2024年3月期の年間配当について、前期比20円増の100円に増配する方針を示した。さらに発行済み株式数(自社株を除く)の6.60%にあたる380万株・100億円を上限とした自社株買いを発表した。取得期間は、2023年5月22日~2024年3月22日。あわせて、2023年5月26日付で350万株の自社株を消却することも発表している。

引き続き、ワコールホールディングスの業績や株価を注視しておきたい。■

(La Caprese 編集部)

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