2024年3月13日、ポーラ化成工業(本社:神奈川県横浜市)はタンパク質分解酵素複合体「プロテアソーム」の活性に着目した研究で、❶表皮細胞のプロテアソーム活性が低下すると皮膚の水分を守るタンパク質ZO-1の遺伝子発現量が減少すること、❷皮下組織に存在する腱(けん)細胞のプロテアソーム活性が低下すると皮下組織を支えるタンパク質ミメカンの遺伝子発現量が減少すること、❸植物エキスで表皮細胞、真皮の線維芽細胞、腱細胞のプロテアソーム活性を高めることができること……を発見したと発表した。
ちなみに、真皮の線維芽細胞においてはプロテアソーム活性の低下でコラーゲン産生が減少することが分かっており、本研究成果と総合すると皮膚三層(表皮、真皮、皮下組織)それぞれのプロテアソーム活性が皮膚状態に寄与すること示唆された。
今回はポーラ化成工業の研究成果を紹介したい。
細胞の中の不要なタンパク質を分解するプロテアソームに着目
プロテアソーム(補足資料1)は、細胞の中の不要なタンパク質を取り込み分解する酵素複合体である(タンパク質分解酵素複合体)。たとえば、不要なタンパク質が分解されずに溜まると、細胞増殖の停滞やタンパク質の産生が遅くなるなど、細胞にさまざまな悪影響を及ぼすことが知られている。
また皮膚においては、真皮線維芽細胞のプロテアソーム活性が低下すると、皮膚に弾力を与えるコラーゲンの産生が減少することも判明している。しかし、その一方で、表皮細胞や皮下組織の細胞でプロテアソーム活性が低下すると、皮膚の水分を守る力や皮下組織を支える力にどんな影響を及ぼすのかは分かっていなかった。そこで本研究では、表皮細胞と皮下組織の細胞のプロテアソーム活性の低下による影響を調べた(図1)。
まず、表皮細胞のプロテアソーム活性が低下したときの影響を調べたところ、水分蒸散を防ぐ因子群のうち、タンパク質であるZO-1の遺伝子発現量が減少することが判明した(補足資料2、図3)。その結果、表皮の大切な働きである水分蒸散を防ぐ力が弱まり、皮膚が乾燥しやすくなることが示唆された。
一方、皮下組織にはRC(retinacula cutis)と呼ばれる皮下組織を支える柱のような構造が存在し、皮膚の形状維持に重要な役割を果たしている。RCの構成成分は腱細胞によって作られる。本研究では、腱細胞のプロテアソーム活性が低下すると、RCを構成するタンパク質のうちミメカンの遺伝子発現量が減少することが確認された(補足資料2、図4)。これにより皮下組織を支える力が弱まり、たるみにつながる可能性が示唆された。
次に、皮膚三層を健やかに保つために、プロテアソーム活性を高めるエキスを探索した。その結果、加水分解コメヌカエキスが表皮細胞と腱細胞のプロテアソーム活性を高め、加水分解イネ葉エキスが真皮細胞のプロテアソーム活性を高めることが判明した(補足資料3)。
本研究成果は皮膚全体を健やかに保つのに役立つ知見になると期待される。■