2023年5月2日、東京証券取引所で京成電鉄の株価が一時5,050円まで買われ、年初来の高値を更新した。今年1月17日の安値3,460円から3カ月半で46.0%の上昇である。
京成電鉄は、千葉県市川市に本社を置く鉄道事業者である。その源流は、1909年創業の京成電気軌道にまでさかのぼる。社名は東京の「京」と成田の「成」に由来しており、東京都区部東部と千葉県北部に路線を有する鉄道会社として発展してきた。現在では、鉄道事業を筆頭にバス事業、タクシー事業で構成する「運輸業」のほか、「流通業」や「不動産業」「レジャー・サービス業」「建設業」など幅広い事業展開を行なっている。ちなみに、京成電鉄は東京ディズニーリゾートなどを運営するオリエンタルランドの筆頭株主でもある。また、京成電鉄は成田空港へのアクセス路線である「成田空港線(愛称:成田スカイアクセス線)」を有していることから、株式市場でインバウンド関連銘柄として注目されることもある。
後段で述べる通り、京成電鉄が4月28日に発表した①2023年3月期(2022年4月1日~2023年3月31日)の連結業績で営業損益、経常損益、純損益が黒字に転換したことに加えて、②2024年3月期(2023年4月1日~2024年3月31日)の連結業績予想についても、大幅な増収増益となる見通しが示されたこと、③2023年3月期の配当を前期比3円増額の20円とし、2024年3月期も20円を継続する方針を示したこと……が株価にも刺激材料となった。
今回は京成電鉄の話題をお届けしよう。
京成電鉄、営業黒字に転換。鉄道など運輸業が好調
4月28日、京成電鉄は2023年3月期(2022年4月1日~2023年3月31日)の連結業績を発表した。同期の営業収益は前期比17.8%増の2,523億3,800万円、本業の利益を示す営業利益は102億2,800万円(前期は52億100万円の営業損失)、経常利益は267億6,400万円(前期は31億9,100万円の経常損失)、純利益は269億2,900万円(前期は44億3,800万円の純損失)となった。同期は新型コロナウイルス禍の行動制限が緩和される中、一部セグメントに弱さがみられたものの、総じて改善傾向を示し、営業損益、経常損益、純損益がそれぞれ黒字に転換した。なお、京成電鉄はグループ経営体制の強化を見据え、2022年9月1日付で新京成電鉄を完全子会社している。
セグメント別の状況は以下の通りである。
運輸業の営業収益が25.7%増、黒字に転換
運輸業のセグメントは、営業収益が前期比25.7%増の1,478億5,900万円、営業利益は7億8,400万円(前期は127億3,500万円の営業損失)となった。鉄道事業、バス事業、タクシー事業の状況は下記の通りである。
鉄道事業
同期の鉄道事業は、京成電鉄および北総鉄道において、2022年10月に沿線の活性化策として成田空港線(愛称:成田スカイアクセス線)および北総線の運賃の値下げを実施した。また、安全輸送確保の取り組みとして、スカイライナーをはじめとした有料特急の全列車への警備員の乗車を開始したほか、高架橋の耐震補強工事および駅のバリアフリー化工事等を進めた。さらに、大規模工事については、葛飾区内の押上線連続立体化工事において、京成立石駅の仮駅舎新設工事を推進したほか、「一級河川荒川水系荒川改修事業に伴う京成本線荒川橋梁及び綾瀬川橋梁架替工事」において、工事に着手するなど、各種工事を推進した。
営業面では、2022年11月にダイヤ改正を実施した。スカイライナーの一部列車を新たに新鎌ヶ谷駅に停車させることで、松戸・柏エリアからの成田空港へのアクセスを充実させたほか、生活様式の変化を踏まえて運行体制を見直し、一部路線・時間帯においてワンマン運転を開始した。また、スカイライナー車両を使用した貸切臨時列車「團十郎号」を運行したほか、「スカイライナーご利用4,000万人達成記念式典」を開催した。さらに、人気タレントが演じる「京成王子」をモチーフにしたテレビCMおよび特別装飾のスカイライナーをリニューアルした。
バス事業
バス事業は、新型コロナウイルス禍の需要減少等を踏まえ、高速バス路線において運休・減便を実施してきたが、行動制限の緩和による需要回復の状況に応じて順次復便を進めた。また、同期は「バスターミナル東京八重洲」の開業に伴い、東京駅発着の一部路線において同ターミナルへの乗り入れを開始した。一般乗合バス路線においては、需要の変化に応じたダイヤ改正等を実施したほか、千葉海浜交通において創立50周年を記念した各種施策を実施した。
タクシー事業
タクシー事業は、京成タクシー船橋、京成タクシー習志野、京成タクシー市川、京成タクシーかずさ、舞浜リゾートキャブにおいて、事前確定運賃サービスを開始したほか、関鉄水戸タクシー、関鉄ハイヤー、関鉄タクシーにおいて、スマートフォンアプリによるタクシー配車サービスを導入し、利便性およびサービス向上に努めた。
流通業は営業損失が拡大
流通業のセグメントは、営業収益が前期比8.1%増の512億6,400万円、営業損失は4億2,900万円(前期は3億500万円の営業損失)となった。
同期のストア業では、京成ストアにおいて店舗出荷型ネットスーパーを「リブレ京成千葉寺店」にて開始した。また、コミュニティー京成において「リトルマーメイド堀切菖蒲園駅店」等の2店舗を新たにオープンした。さらに、「ファミリーマート舎人ライナー日暮里駅店」を新たにオープンしたほか、既存店舗の運営を引き継ぐなど、収益の拡大に努めた。
一方、その他流通業では、ユアエルム八千代台店において「リブレ京成八千代台ユアエルム店」のリニューアルや、生活利便施設等の新規テナントを誘致するなど、改装を実施し、集客力の向上を図った。また、京成バラ園芸において、昨年度にオープンしたいちご狩り施設をバージョンアップし、集客に努めた。
不動産業は増収増益
不動産業のセグメントは、営業収益が前期比5.6%増の289億5,200万円、営業利益は前期比12.1%増の97億9,400万円となった。
不動産賃貸業では、市川市南八幡の賃貸施設を取得したほか、千葉市中央区において高齢者施設の建設工事を推進した。また、賃貸住宅予定地として足立区千住河原町の土地を取得した。不動産販売業では、中高層住宅「パークホームズ千葉」を全戸完売し、引き渡しがおおむね完了したほか、来年度に引き渡し予定の中高層住宅「サングランデ千葉 都賀テラス」を販売した。また、中高層住宅予定地として松戸市東松戸および千葉市中央区の土地を取得した。このほか、複合施設予定地として、京成電鉄を代表企業とする4社が鎌ケ谷市新鎌ヶ谷駅前県有地の事業予定者に決定したほか、千葉市中央区の産業用地整備支援事業に参画した。
レジャー・サービス業、営業収益は56.0%増だが…
レジャー・サービス業のセグメントは、営業収益が前期比56.0%増の125億8,000万円、営業損失は8億2,400万円(前期は19億6,600万円の営業損失)となった。
同期のレジャー・サービス業は、京成ホテルミラマーレにおいて、京成の電車をテーマにしたコンセプトルームが好評だったことから、販売期間を延長した。また、京成トラベルサービスにおいて、新型コロナウイルスの感染対策を考慮したうえで、京成線内を特別行路で運行する各種のイベント列車ツアー等、多様な旅行商品の企画・催行により、収益の確保に努めた。さらに、イウォレ京成において、フランチャイズ契約に基づき「サブウェイ 成田空港第1ターミナル南ウイング店」等2店舗の営業を開始したほか、「100時間カレーEXPRESSららぽーと柏の葉店」の営業を開始した。
建設業は増収増益
建設業のセグメントでは、鉄道施設改良工事や京成グループ外から受注している各種工事を実施した。その結果、営業収益は前期比5.6%増の279億4,400万円、営業利益は同36.9%増の10億8,100万円となった。
京成電鉄、今期は大幅な増収増益を予想
4月28日、京成電鉄は2024年3月期(2023年4月1日~2024年3月31日)の連結業績予想について、営業収益で前期比22.4%増の3,088億円、本業の利益を示す営業利益で同142.5%増の248億円、経常利益は同57.7%増の422億円、純利益は同23.7%増の333億円と大幅な増収増益となる見通しを示した。
京成電鉄はその理由について、運輸業のセグメントにおいて、新型コロナウイルス禍の行動制限緩和による移動需要の回復や、新京成電鉄の業績の通期寄与等を挙げている。なお、冒頭で述べた通り、京成電鉄は2023年3月期の配当を前期比3円増額の20円とし、2024年3月期についても20円を継続する方針を示した。
引き続き、京成電鉄の業績や株価を注視しておきたい。■
(La Caprese 編集部)