日清食品HDの株価が上場来高値を更新した理由

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(画像= La Caprese)

2023年2月7日、東京証券取引所で日清食品ホールディングス(以下、日清食品HD)の株価が一時1万1,430円まで買われ、上場来高値を更新した。2022年1月19日の安値7,640円から1年あまりで49.6%の上昇である。

日清食品HDは、インスタントラーメン等を生産する食品グループの持株会社で、主要子会社には日清食品、明星食品、湖池屋、日清シスコ、日清ヨークなどがある。また、タイやインドネシア、インド、オランダ、米国、ブラジルに現地工場を持つなど海外事業も積極的に展開している。

後段で述べる通り、(1)今週2月6日発表の2023年3月期・第3四半期(2022年4月1日〜2022年12月31日)の連結業績が大幅な増収増益となったことに加え(2)通期の連結業績見通しを上方修正したこと(3)今期の年間配当を増額修正したこと、などが株価に追い風となった。

今回は日清食品HDの話題をお届けしよう。

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日清食品HD、大幅な増収増益。アニメ『鬼滅の刃』とのコラボも好調

今週2月6日、日清食品HD は2023年3月期・第3四半期(2022年4月1日〜2022年12月31日)の連結業績を発表した。同期の売上収益は前年同期に比べて18.0%増加の5,014億6,700万円、既存事業コア営業利益(※1)は同18.0%増の513億5,200万円、営業利益は同14.4%増の487億700万円、税引前四半期利益は同13.4%増の505億8,300万円、最終利益は同13.6%増の349億2,300万円と大幅な増収増益となった。

セグメント別では、「日清食品」の売上収益は前年同期に比べて5.6%増加の1,669億6,700万円、コア営業利益(※2)は同4.5%減の249億8,700万円、営業利益は同4.8%減の249億8,600万円となった。同期はカップめん類、袋めん類が売上を伸ばし、前年同期比で増収となった。カップめん類では「最強どん兵衛」の売上が好調に推移したほか、高たんぱく&低糖質の「カップヌードルPRO」シリーズも好調で大きく売上に貢献した。また、2022年10月に発売したアニメ『鬼滅の刃』と「日清のどん兵衛」「日清焼そばU.F.O.」のコラボ商品や、2022年10月に発売した期間限定商品の「日清のどん兵衛 東西だし比べ」も売上に大きく貢献し、前年同期比で増収となった。袋めん類では「0秒チキンラーメン」、2022年9月にリニューアルした「日清これ絶対うまいやつ♪」シリーズも好調に推移し、前年同期比で増収となった。カップライス類は、「日清カレーメシ」シリーズが好調で売上に貢献し増収となった。しかし、一方で原材料価格の上昇等に利益を圧迫され減益となった。

用語解説

(※1) 既存事業コア営業利益:営業利益から新規事業にかかる損益および非経常損益としての「その他収支」を控除した指標。中長期成長戦略上2022年3月期以降積極的かつ継続的な先行投資を予定する新規事業にかかる損益を分離し、その成長投資の基盤となる既存事業の実質的な成長を測定することを目的に採用している。

国内事業は原燃料価格の高騰が利益を圧迫

一方、「明星食品」のセグメントの売上収益は前年同期に比べて6.2%増加の300億900万円、コア営業利益(※2)は同8.9%減の21億2,300万円、営業利益は同8.3%減の21億6,200万円となった。同期の明星食品は「全麺改良」をテーマに掲げ、主要ブランドからプレミアム商品、バリュー商品まで商品価値向上を推進し、前年同期比で増収となった。カップめん類では「明星 濃いぜ!一平ちゃんBIG」が貢献したほか、「明星 一平ちゃん夜店の焼そば」も堅調に推移した。また、2022年7月にリニューアルした「明星 至極の一杯」の伸長に加え、2022年9月に新発売した「でっせ」シリーズなどバリュー商品も好調で、前年同期比で増収となった。袋めん類では「明星 チャルメラ」が堅調に推移したが、2022年6月に実施した価格改定の影響等を受け、袋めん類全体としては減収となった。また、セグメント全体の利益面では原材料価格の上昇等に圧迫され減益となった。

「低温・飲料事業」のセグメントは、売上収益が前年同期に比べて5.4%増加の645億2,900万円、コア営業利益(※2)は同3.6%減の33億2,900万円、営業利益は同12.9%減の31億7,500万円となった。チルド事業では「日清の太麺焼そば」「日清焼うどん」等の売上が伸長したほか、夏場の気温が例年よりも高かった影響から冷しめん類も堅調に推移した。しかし、利益面では、原価率の上昇により前年同期比で減益となった。また、冷凍事業はラーメン類では「冷凍 日清ごくり。」「冷凍 日清本麺」、パスタ類では「冷凍 日清スパ王プレミアム」の各シリーズの売上が堅調に推移し、前年同期比で増収となった。しかし、利益面ではこちらも原価率の上昇により前年同期比で減益となった。飲料事業は、日清ヨークの「ピルクル400」シリーズや「十勝のむヨーグルト」シリーズが好調に推移、さらに2022年9月に発売した睡眠の質を改善し、疲労感を軽減する「ピルクル ミラクルケア」がプラスオンとなり、前年同期比で増収となった。利益面では、エネルギー費・原材料費の高騰を吸収し、前年同期比で増益となった。

「菓子事業」のセグメントは、売上収益が前年同期に比べて5.6%増加の549億6,400万円、コア営業利益(※2)は同28.0%減の21億8,500万円、営業利益は同29.9%減の21億7,600万円となった。日清シスコは菓子販売が堅調に推移したものの、シリアルの伸び悩みや原材料高騰等により、前年同期比で減収減益となった。ぼんちでは「ピーナツあげ」や「海鮮揚煎」シリーズをはじめとした主力商品が好調に推移したが、原材料高騰等の影響により前年同期比で増収減益となった。また、湖池屋においては高付加価値戦略を推進するとともに、主力商品の「湖池屋ポテトチップス」シリーズやリニューアルした「スコーン」を中心に販売が拡大し、前年同期比で増収となった。ただ、利益面では、国内で順次実施している価格改定による改善も見られたものの、海外における急激な原材料高騰や馬鈴薯不足の影響により、前年同期比で減益となった。

海外事業が絶好調、米州地域の営業利益は263.4%増

海外事業では、「米州地域」のセグメントにおける売上収益は前年同期に比べて64.1%増加の1,047億3,800万円、コア営業利益(※2)は同269.3%増の95億8,600万円、営業利益は同263.4%増の95億6,100万円と大幅な増収増益となった。同期は既存商品の収益力向上に加え、新たな需要の創造に向けた付加価値商品の提案強化や導入推進に取り組んだ。売上については、インフレや資材価格高騰等に伴い価格改定を実施し、価格浸透を図りつつ各国の戦略を着実に実行した。ブラジルでは積極的な営業・マーケティング施策の連動により主力商品「Nissin Lamen」や「CUPNOODLES」の堅調な売上に加え、新商品「U.F.O.」の販売開始も売上増に貢献した。また、米国においても高い即席めん需要が継続する中、価格改定の実施・浸透や差別優位性を明確にした付加価値商品の販売好調により、セグメント全体で増収となった。利益面では、主要原材料の高騰があったものの、価格改定による販売単価増の増収効果、高価格帯商品の販売食数増、為替の影響等によりセグメント全体で大幅な増益となった。

一方、「中国地域」のセグメントは売上収益が前年同期に比べて23.6%増加の494億6,800万円、コア営業利益(※2)は同25.0%増の54億300万円、営業利益は同41.6%増の58億9,000万円と大幅な増収増益となった。同期は中国大陸での高付加価値商品市場が拡大する中、販売エリア拡大と中国版カップヌードル「合味道」のブランド強化に取り組んだ。売上については即席めんの価格改定の影響により前年同期比で増収となった。また、利益面でも原材料費の高騰を売上増により吸収し前年同期比で増益となった。

用語解説

(※2) コア営業利益:営業利益から非経常損益としての「その他収支」を控除した金額。

通期の業績見通しの上方修正、年間配当の増額修正も追い風に

日清食品HDは、2023年3月期(2022年4月1日~2023年3月31日)の連結業績予想について、売上収益で前期比15.8%増加の6,600億円、既存事業コア営業利益で同15.0%増の570億円、営業利益で同11.6%増の520億円、最終利益で同7.3%増の380億円となる見通しを示した。これは従来予想(2022年5月13日公表)に比べて売上収益でプラス10.9%、既存事業コア営業利益でプラス9.6%、営業利益でプラス5.1%〜10.6%、最終利益でプラス15.2%〜22.6%の大幅な上方修正である。

日清食品HDは上方修正の理由について、国内事業においては引き続き原燃料価格の高騰など厳しい事業環境が見込まれるものの、米州地域を中心とした海外事業が好調に推移していることから、売上収益・利益面ともに従来予想を上回る見通しである、としている。

さらに日清食品HDは、期末配当予想についても65円から75円に引き上げると発表した。これにより、65円を実施済みの中間配当と合わせた年間配当は前期比10円増の140円となる。

ウクライナ情勢の長期化に加えて、世界的な原燃料価格の高騰などマーケットを取り巻く環境は依然として不透明だ。このような厳しい情勢にありながら、日清食品HDの業績が大幅な増収増益を示したことが、株式市場での高評価につながっているのだろう。

引き続き、日清食品HDの業績や株価を注視しておきたい。■

(La Caprese 編集部)

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