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資生堂、構造改革で「復活への道」切り拓くか? 株価は昨年来高値、中国の需要回復期待も

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※画像はイメージです。(画像= Canva、La Caprese)

2023年1月30日、東京証券取引所で資生堂の株価が一時6,844円まで買われ、昨年来の高値を更新した。2022年11月4日の安値4,813円から3カ月近くで42.2%の上昇である。

資生堂は、2020年12月期に新型コロナウイルスの感染拡大を受けて8期ぶりの最終赤字に転落した。人類を脅かす感染症のパンデミック(世界的大流行)に見舞われる中、資生堂は構造改革に着手した。構造改革はスキンケア事業への集中とデジタル活用を柱としたもので、その一環として、2021年7月には国内の日用品事業を欧州系投資ファンドに売却したほか、同12月にはドルチェ&ガッバーナとのライセンス契約を解消、さらにベアミネラルなど米国の3つの化粧品ブランドも米投資ファンドに売却した。

一方、今週1月29日には在日本の中国大使館が日本人向けの渡航ビザ(査証)の発給手続きを同日から再開すると発表した。翌1月30日付の日本経済新聞(朝刊)では、中国が新型コロナウイルスを封じ込める「ゼロコロナ」政策で減速した経済をテコ入れするため、日中間のビジネス交流の活性化を狙ったと報じた。報道を受けて、株式市場ではインバウンド(訪日外国人)消費など中国需要の回復期待が広がり、資生堂の株価にも追い風となったようだ。

今回は資生堂の業績をみてみよう。

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資生堂、構造改革でコア営業利益21.9%増

資生堂が2022年11月10日に公表した2022年12月期・第3四半期(2022年1月1日~2022年9月30日)の連結業績は、売上高が前年同期に比べて4.7%増加の7,627億4,300万円、営業利益は同62.7%減の356億6,000万円、コア営業利益は同21.9%増の362億3,500万円、親会社の所有者に帰属する四半期利益は同38.2%減の290億4,600万円となった。

ちなみに、コア営業利益は「営業利益から構造改革に伴う費用・減損損失等、非経常的な要因により発生した損益(非経常項目)を除いて算出」したものである。上記の通り、営業利益は62.7%減少しているが、コア営業利益は21.9%増加しているのが特徴の一つといえるだろう。

セグメント別では、「日本事業」の売上高が前年同期に比べて9.9%減の1,786 億円、コア営業損益は59億円の損失となった。同期の「日本事業」は経費効率化を進めたものの、パーソナルケア事業譲渡に伴う減益等により、コア営業損失を計上することとなった。

「中国事業」のセグメントは、売上高が前年同期に比べて9.9%減の1,719 億円、コア営業損益は87億円の損失となった。一方、「アジアパシフィック事業」は売上高が前年同期に比べて3.4%増の487億円、コア営業利益は同0.9%減の41億円となった。「アジアパシフィック事業」は、台湾など一部の国・地域で回復に遅れが見られたものの、韓国や東南アジアを中心に力強い成長をみせた。

米国のコア営業利益は427.5%増、欧州も213.9%増と絶好調

一方、「米州事業」のセグメントは、売上高が前年同期に比べて9.1%増加の979億円、コア営業利益は同427.5%増の68億円と大幅な増収増益となった。「米州事業」は新型コロナウイルス禍の行動制限緩和と経済活動の正常化に伴い、化粧品市場全般に成長を継続した。特に「NARS」ブランドは新商品の好調に加えて、デジタルマーケティング強化を通じた Eコマースの力強い成長により、シェアを拡大した。また、「クレ・ド・ポー ボーテ」も北米アンバサダーを新たに起用するなど現地ニーズをとらえたプロモーションによって好調に推移した。

「欧州事業」のセグメントは、売上高が前年同期に比べて12.9%増の897億円、コア営業利益は同213.9%増の86億円と大幅な増収増益となった。「欧州事業」も新型コロナウイルス禍の行動制限の緩和と経済活動の正常化に伴い、化粧品市場の全カテゴリーで成長を継続した。特に「NARS」や「narciso rodriguez」等が需要の回復を捉えたプロモーションにより、力強い成長を実現し、シェアを拡大した。加えて、「クレ・ド・ポー ボーテ」についても店舗数拡大を進め、売上を拡大した。

「トラベルリテール事業」の売上高は前年同期に比べて35.5%増の1,201億円、コア営業利益は同73.1%増の268億円、「プロフェッショナル事業」の売上高は前年同期に比べて23.8%減の84億円、コア営業利益は同20.6%増の13億円となった。

中国の回復がキーポイントになるか?

上記の通り、資生堂の2022年12月期・第3四半期(2022年1月1日~2022年9月30日)の業績をみると、日本と中国が苦戦を余儀なくされる一方で、米国と欧州は新型コロナウイルス禍の行動制限緩和と経済活動の正常化で大幅な増収増益を記録するなどセグメントで明暗を分けているのがわかる。特に資生堂の今後の業績を展望するうえで、構造改革の進捗とともに、中国の需要回復がキーポイントになる可能性もありそうだ。

冒頭で述べたように、在日本の中国大使館は今週1月29日に日本人向けの渡航ビザ(査証)の発給手続きを再開すると発表した。中国が「ゼロコロナ」政策で減速した経済をテコ入れするため、日中間のビジネス交流の活性化を狙っているとの報道もあり、株式市場ではすでに需要回復期待を織り込んでいるようにも見受けられる。

ちなみに、資生堂は来週2月10日に2022年12月期(通期)の決算発表を予定している。ここで構造改革の進捗とともに、来期(2023年12月期)の見通しについて、どのような見解が示されるのか注目される。■

(La Caprese 編集部)

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