睡眠の質の善し悪しによる「肌状態の変化」は体感性の高い症状とされている。では、実際に満足な睡眠がとれていないと感じるときに肌はどのような状態になっているのだろうか? そこで、注目されるのが花王 <4452> の研究だ。花王は2022年6月10日〜11日に東京で開催された『第47回 香粧品学会』において、日々の睡眠と肌状態との関連性についての研究成果を発表している。
ちなみに、睡眠状態を調べるには、(1)脳波測定のような機器を用いて客観的に測定する方法と、(2)質問紙などによって主観的に評価する方法がある。機器で測ると、深い眠りの状態(ノンレム睡眠)と浅い眠りの状態(レム睡眠)を知ることができるが、今回の研究で花王は「本人が睡眠に満足できているかどうか」という視点(体感性)に焦点を当てるため、(2)の主観的評価を採用している。
今回は花王の研究成果を紹介しよう。
「寝つき」が悪いと、肌が乾燥し、肌の生まれ変わりが遅くなる?
本研究では20代〜80代の女性204名を対象に、ピッツバーグ睡眠質問票(日本語版)(※1)を用いて1カ月間の睡眠の評価をしてもらい、同時に肌の状態についての意識調査および機器計測等(※2)を実施した。
その結果、睡眠不良群(75名)は睡眠良群(129名)よりも「肌が乾燥する」「顔が疲れて見える」という回答の割合が高いことが判明した(図1)。
さらに、今回の検討では、睡眠の要素のなかでも「寝つきの良さ」が肌状態と関係していることも判明した。
睡眠質問票のスコアより、寝付くのに30分以上かかることが週に1回以上ある人を「寝つきの悪い群(49名)」、それ以外を「寝つきの良い群(155名)」として肌状態を解析したところ、「寝つきの悪い群」は「寝つきの良い群」に比べて、頬の角層水分量が低いこと、頬の角層細胞面積が大きいことが確認された(図2)。角層細胞面積は大きいほど肌の生まれ変わりが遅くなることを示しており、加齢によって大きくなることが知られている。したがって、寝つきが悪い状態が続くと、肌が乾燥し、肌の生まれ変わりが遅くなる可能性が考えられる。
質の良い睡眠は美肌への第一歩!
睡眠の質による「肌状態の変化」は体感性の高い症状とされているが、今回紹介した花王の研究では「寝つきの善し悪し」が肌状態に関係があることも明らかになった。生活習慣を見直してできるだけ睡眠時間を確保することはもちろん大切であるが、「寝つきを良くする(30分以内に寝つけるようにする)」ことも重要であることが示唆された。
ちなみに、花王は「寝つきを良くする」するための心がけとして、(1)お風呂でリラックスしたり、(2)寝る前のスマホをちょっとだけ我慢したりするなど、すっと眠りにつくための工夫をして質の良い睡眠をとることが、「美しい肌への第一歩」であると指摘している。■
(La Caprese 編集部)