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顔の肌が垂れ下がる「たるみ」の自己認識と実態に8.1歳のギャップ――資生堂の研究成果

顔,たるみ
(画像= ACworks / 写真AC、La Caprese)

加齢とともに、顔の肌が垂れ下がる現象「たるみ」――。

2023年8月30日、資生堂は顔の見た目年齢に大きな影響を与える「たるみ」に関して、自己認識と実際の状態の間にギャップがあることを解明した。「たるみ」が顕著に表れる頬、目、フェースラインの3部位に関して調査を行った結果、最も大きなギャップが生じた頬において、自己認識と実際の状態のギャップは8.1歳に達した。

資生堂は、本研究において「自身のたるみ状態を正確に把握することは、たるみケアへの意欲を高める」ことも明らかにしており、本研究成果をもとに本人の状態に合ったたるみケアと、それを適切なタイミングでサポートするソリューションの開発を進める方針を示した。

なお、本研究成果は、皮膚科学分野の国際学術誌 「Skin Research and Technology」 に掲載された(※1)。

今回は資生堂の研究成果を紹介したい。

参考

(※1) Ezure T. Perception gap of aged facial appearance; self-perception is younger than actual status due to angle of viewing. Skin Res Technol. 2023 Jul;29(7):e13398.)

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顔の「たるみ」を、本人はどの程度認識しているのか?

加齢とともに顔の肌が垂れ下がる現象、すなわち「たるみ」の進行は、見た目の年齢を決める大きな要因となる。実際、たるみは美容に関する悩みの上位に挙げられている(※2)。しかしながら、美容医療以外の方法でたるみを改善することは難しいとされていた。

そうした中、資生堂はこの研究領域にパイオニアとして取り組み、肌の複数の機能が衰え重力に抗えなくなることで、たるみが引き起こされることを明らかにしてきた。この一連の研究の中で、たるみは比較的早い年代から始まることを突き止めているが、多くの人がたるみを気にして、ケアを始めるのは中年代以後で、そこには大きな開きがあるのが実情である。そこで、本人が自身のたるみの状態を、どの程度認識しているのか、また実際の状態と自己認識の差が生まれる原因は何かを、解き明かすこととした。

参考

(※2) 「顔の老化のメカニズム -たるみとシワの仕組みを解明する-」 江連智暢著(日刊工業新聞社)より

たるみの実際と自己認識とのギャップ

従来、たるみに関する自己認識を調査するためには主にWeb等を利用したアンケートによる研究手法が用いられてきたが、たるみの程度を判定する基準のあいまいさや、回答者本人の意識・関心のばらつきにより、たるみの自己認識を正確に把握することが困難であった。この課題に対し、今回資生堂では、独自に開発し、学術的にも認められているたるみの判定基準写真(※3)を用いて、自身の写真を見ずに判定基準の写真を見て判定した自分のたるみ度合いをたるみの「自己認識」、別途撮影された自身の写真と判定基準の写真を同時に見て判定した自分のたるみ度合いをたるみの「実際の状態」とし、その「ギャップ」を調べた(図1)。

顔,たるみ

(図1) 出典:資生堂

参考

(※3) Ezure T et al. Sagging of the cheek is related to skin elasticity, fat mass and mimetic muscle function. Skin Res Technol. 2009 Aug;15(3):299-305.

【図1の解説】頬部での測定例
まず、対象者は写真を用いた6段階のたるみ判定基準を見ながら自身のたるみ程度を判定する。マリオネットライン(白い矢印)と肌の膨らみ(黒矢印)の位置を基に、たるみ程度を判定する。自身の写真を見ずに判定した結果をたるみの「自己認識」、自身の写真を見ながら判定した結果をたるみの「実際の状態」とし、例えば前者が「1」、後者が「4」の場合には、たるみの自己認識と実際の状態との「ギャップ」は「3」とする。

上記の方法を使いて、30代~40代の日本人女性36名を対象とし、たるみが顕著に起きる頬、目、フェースラインに関して、自己認識と実際の状態の測定を行った。その結果、たるみの自己認識は、3部位とも本人の自己認識のほうが、実際の状態よりも有意に低く、たるみが少ない状態と認識していることが明らかになった(図2)。さらに、この差を、たるみ度合いと年齢との関係を表す数式(※4)にあてはめ年齢に換算すると、頬部では8.1歳の差となった。この結果から、自身のたるみの状態は正確に把握されていないことが判明した。

顔,たるみ

(図2) 出典:資生堂

参考

(※4) Ezure T et al. Comparison of sagging at the cheek and lower eyelid between male and female faces. Skin Res Technol. 2011 Nov;17(4):510-5.

なぜ、たるみの認識にギャップが生まれるのか?

次に、このたるみ認識のギャップが生まれる原因を検討した。さまざまな角度から対象者の顔の写真を撮影して比較したところ、正面から撮影した顔では、たるみを検出することは困難で、斜め方向から撮影した顔では、たるみが明確に認識できることが明らかになった(図3)。これは、斜めから見た場合には、立体的な顔の形状の把握が容易なためと考えられる。日常生活の中では、鏡で自分の顔を正面から見る機会は多いものの、斜め方向から見ることは少なく、たるみの認識が困難な正面の顔を基に、自身のたるみ程度を認識していると推察される。

顔,たるみ

(図3) 出典:資生堂

【図3の解説】
a) 同一の対象者の顔の写真を、複数の角度から撮影。b) 顔を見る角度により、たるみの見え方は異なる。45°では、深く長いマリオネットライン(矢印)が確認されるが、正面に近づくにつれて、マリオネットラインは目立たなくなり、正面からはマリオネットラインは、ほぼ確認できない。

斜め顔は、たるみに対する意識を変える

さらに、この自分のたるみを正確に認識することが、本人にどのような影響があるのかを検討した。斜めからの写真を見る前後で、たるみ改善への意欲を段階評価法で比較したところ、写真を見た後ではたるみ改善意欲が高くなることが判明した(図4)。この結果から、たるみの認識のギャップにより、本人が適切と思えるたるみケアが実施できていない可能性が示された。

顔,たるみ

(図4) 出典:資生堂

資生堂は、本研究成果をもとに本人の状態に合ったたるみケアと、それを適切なタイミングでサポートするソリューションの開発を進める方針を示した。資生堂の今後の取り組みが注目される。■

(La Caprese 編集部)

特集:美肌を科学する
美肌,科学的根拠
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