「目尻のシワ」と「ほうれい線」のできやすさを予測するDNAの特徴を発見。――2022年7月13日、日本メナード化粧品(愛知県名古屋市)から、そんな研究成果が発表された。
シワやタルミなど肌の老化によって生じる見た目の変化には「個人差」がある。この「個人差」には紫外線などの「環境要因」だけでなく、その人が生まれつき持っている「遺伝的要因」が関与していることがわかっている。日本メナード化粧品はこれまでに、この「個人差」について、特に遺伝的な傾向から予測する技術の開発に取り組み、将来のシワ・タルミや肌質、ストレスと関連の強いDNAの特徴(=SNP:詳細は後述)を見出してきた。
日本メナード化粧品が今回明らかにした研究成果は、1,200人の日本人女性を対象に遺伝情報の解析および自身のシワ・タルミの状態に関するアンケートを実施し、それぞれの結果を組み合わせた関連解析によって導き出されたもの。日本メナード化粧品によると、個人のシワ・タルミのできやすさを遺伝的傾向から予測する技術や、個人の肌質に合った化粧品・美容方法の提案などへの応用が期待されるという。
今回は日本メナード化粧品の研究成果を紹介したい。
「目尻のシワ」「ほうれい線」に関わるSNP
日本メナード化粧品は、日本人女性1,200人(平均年齢49.0歳)を対象に、唾液サンプルよりDNAを抽出し、約540万箇所のSNPを解析した。加えて、同じ被験者に対し、自身の生活習慣やシワ、タルミなどについてアンケートを実施した。
そして、上記の遺伝情報データとアンケートデータとの関連解析の結果から、「目尻のシワ」との関連性が高いSNPとして『rs2303098』や『rs889126』を含む複数のSNPを発見した。『rs2303098』にはCCタイプ、CTタイプ、TTタイプがあり、「CCタイプ<CTタイプ<TTタイプ」の順に目尻のシワができやすい傾向が認められた(図1)。また、これらのSNPはコラーゲンの一種であるCOL5A3遺伝子中に存在していることから、「SNPの違いがコラーゲン産生に関与し、シワの形成に影響を与える」可能性を見出した。
同時に、上記の関連解析の結果から、ほうれい線(ほほのタルミジワ)との関連が示唆されるSNPとして『rs4876369』や『rs6980503』を含む複数のSNPも発見した。『rs4876369』にはAAタイプ、AGタイプ、GGタイプがあり、「AAタイプ<AGタイプ<GGタイプ」の順にほうれい線ができやすい傾向が認められた。また、これらのSNPは細胞の増殖等に関わるRAD21遺伝子近傍に存在しており、「SNPの違いが新しい細胞の産生に関与し、ほうれい線の形成に影響を与える」可能性を見出した。
より詳細なシワやタルミのメカニズム研究へ
ちなみに、日本メナード化粧品によると、DNAには、アデニン(A)、チミン(T)、シトシン(C)、グアニン(G)という4種類の塩基が並んでできているという。この塩基の特定の並び方が遺伝情報となる。
ヒトの遺伝情報は約30億個のDNAの「塩基配列」で構成されており、この塩基配列には個人間で差がある。特に一つの塩基配列のみが人によって異なっている部分をSNP(Single Nucleotide Polymorphism、一塩基多型)と呼ぶ。ヒトのゲノムの中には推定で約1,000万箇所のSNPがあるとされており、その塩基配列の違いが体質や病気のかかりやすさなどの個人差に関わると考えられている。ちなみに、SNPには一つひとつに「rs番号」と呼ばれる世界共通のIDが割り振られている。(図2)
日本メナード化粧品はこれまでに、日本人女性を対象にした数多くの研究を通じて「ストレスの感じやすさに関わるSNP」や「肌質に関わるSNP」「将来のシワやタルミに関わるSNP」を見出してきた。今回の研究成果は、個人の肌の特徴を精度よく予測する技術の開発や、肌質にあった化粧品や美容方法の提案などへの応用が考えられるという。加えて、新たに見出されたSNPやその近傍の遺伝子について詳しく研究することで、より詳細なシワやタルミのメカニズム研究の進歩につながることも期待されている。
なお、本研究成果は国際科学誌「Experimental Dermatology」のオンライン版に掲載された。
引き続き、日本メナード化粧品の取り組みに注目していきたい。■
(La Caprese 編集部)