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ANAの株価が年初来高値を更新した理由

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(画像= Canva、La Caprese)

航空業界は2020年以降、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大で行動制限措置がとられるなか、厳しい経営を余儀なくされていた。そんな行動制限も段階的に緩和され、2022年10月11日からは海外からの入国者数上限の撤廃に加え、外国人の個人旅行とビザなし渡航も解禁されたほか、国内旅行が割引になる全国旅行支援がスタートするなど周囲環境は着実に好転している。

そうしたなかで注目されるのが、ANAホールディングスだ。先週11月4日にはANAホールディングス(以下、ANA)の株価が一時3,022円まで買われ、年初来の高値を更新した。今年3月8日につけた年初来安値の2,150円から約8カ月で40.6%の上昇である。

後段で述べる通り、ANAが10月31日に発表した2023年3月期・第2四半期(2022年4月1日~9月30日)の連結業績で営業利益、経常利益、純利益が揃って黒字に転換したことに加え、通期(2022年4月1日~2023年3月31日)の連結業績予想についても純利益で90.5%の上方修正を筆頭に軒並み増額したことが株価にも追い風となった。

今回はANAの話題をお届けしよう。

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ANA、2023年上半期の営業損益は3年ぶりの黒字転換

10月31日、ANAは2023年3月期・第2四半期(2022年4月1日~9月30日)の連結業績を発表した。売上高は前年同期に比べて83.4%増の7,907億円、本業の利益を示す営業利益は314億円(前年同期は1,160億円の赤字)、経常利益は302億円(前年同期は302億円の赤字)、純利益は195億円(前年同期は988億円の赤字)となった。上半期の営業損益が黒字に転換するのは3年ぶりのことだ。

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(図1)

冒頭で述べた通り、上半期の航空業界を取り巻く環境は、国内線の行動制限緩和のほか、国際線でも各国の入国制限の緩和が進んだこと等を背景に旅客需要が急速に回復し、業績改善をもたらすこととなった。

ANA、国際線・国内線ともに旅客需要が急増

セグメント別では、主力の「航空事業」の売上高が前年同期に比べて92.5%増の7,128億円、営業利益は399億円(前年同期は1,137億円の赤字)となった。国際線・国内線ともに旅客需要が急増したことに加えて、国際線貨物事業も堅調に推移したことなどから、売上高は前年同期を大幅に上回り、営業損益も黒字に転換した。

ちなみに、国際線旅客や国内線旅客、国際線貨物、LCCの旅客収入は下記「図2」に示す通りで、いずれも前年同期比で大幅な伸びを示している。文字通り「V字回復」と呼ぶにふさわしい伸長だ。

(図2)

国際線旅客では、各国の入国制限の緩和により大きく増加した「北米=アジア間」の接続需要を取り込んだことに加え、日本においても9月から水際対策が一段と緩和され、日本発のビジネス需要や駐在員の一時帰国需要が一層強まったこと等から、旅客数・収入ともに前年同期を大幅に上回る結果となった。

一方、国内線旅客は、緊急事態宣言の発令やまん延防止等重点措置の適用がない環境のもと、ゴールデンウィークや夏休みを中心にレジャー需要が着実に増加した。加えて、ビジネス需要も徐々に回復傾向を示し、旅客数・収入ともに前年同期を大幅に上回ることとなった。

また、LCCも行動制限の緩和に伴い国内線のレジャー需要が大きく増加したことから、旅客数・収入ともに前年同期を大幅に上回った。

旅行事業は人件費の増加で営業赤字

一方、「航空関連事業」のセグメントは売上高が前年同期に比べて16.3%増の1,135億円、営業損益は32億円の赤字(前年同期は16億円の黒字)となった。同セグメントは旅客需要の回復を背景に機内食関連業務が増加したほか、国際貨物の取扱高が拡大したこと等により、売上高は前年同期を上回った。しかし、その一方で人件費が増加したこと等から、営業損失を計上する結果となった。

「旅行事業」のセグメントは、売上高が前年同期に比べて63.2%増の319億円、営業損益は12億円の赤字(前年同期は1億円の赤字)となった。同セグメントは、国内旅行需要の回復に加えて、ダイナミックパッケージ商品の取扱高が増加、さらに支払いにマイルを利用できる「ANAトラベラーズホテル」商品も好調に推移した。さらに、9月にはゴルフ場のWeb予約サービス「ANAトラベラーズゴルフ」を開始する等、新たなサービスを展開した。海外旅行については、4月にハワイ方面のツアー催行を約2年ぶりに再開した。このような状況下、売上高は前年同期を上回ったものの、人件費が増加したこと等から営業損益は赤字となった。

また、「商社事業」のセグメントは売上高が前年同期に比べて24.1%増の476億円、営業損益は15億円の黒字。「その他」のセグメントは売上高が前年同期比1.5%増の177億円、営業損益は3億円の赤字であった。

ANA、2023年3月期の純利益を90.5%上方修正

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(図3)

ANAは主力の「航空事業」の急速な回復を踏まえ、2023年3月期(2022年4月1日~2023年3月31日)の連結業績予想を、売上高で前期比66.6%増の1兆7,000億円、営業利益は650億円(前期は1,731億円の赤字)、経常利益は550億円(前期は1,849億円の赤字)、純利益は400億円(前期は1,436億円の赤字)にそれぞれ上方修正した。これは従来予想に比べて、売上高で2.4%、営業利益で30.0%、経常利益で83.3%、純利益では90.5%の上方修正となる。

2020年以降、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大で厳しい経営を余儀なくされていた航空業界であったが、ようやく「テイクオフ」の体制に入りはじめたようだ。

引き続き、ANAの業績・株価を注視しておきたい。■

(経済ジャーナリスト 世田谷一郎)

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