記事内に広告が含まれています。
スポンサーリンク

「マイナス金利解除」は企業業績にどう影響するのか?

マイナス金利解除,企業への影響
(画像= Canva、La Caprese)

2024年3月19日、日本銀行(以下、日銀)は金融政策決定会合において、マイナス金利政策の解除を正式に決定した。政策金利の上昇は約17年ぶりとなる。今後、日銀が金融政策の正常化へと舵を切る場合、2022年度末時点で平均1%を下回った企業の借入金利も、市場金利に連動して緩やかに上昇していくことが見込まれる。

こうした中、帝国データバンクは過去1年間に決算を迎えた企業で長短借入金を含む有利子負債を有する約9万社を対象に、❶借入金利の上昇に伴う支払利息への負担や、❷経常利益に与える影響について調査分析したレポートを発表した。本調査では、借入金利の上昇幅について、+0.5%~最大+4.0%を想定して試算した。また、決算期末のデータに基づくため、借入金の返済・借り換え、追加での借り入れによる有利子負債の増減については考慮しないものとした。

以下はその概要である。

スポンサーリンク

借入金利「1%上昇」で企業の7%が経常赤字へ転落

本調査の条件

分析にあたっての条件は、下記の通りと定義した。
▽分析企業:長短借入金を含む「有利子負債」と、それに伴う「支払利息」が発生している企業。対象は全国約9万社(全国・全業種)。決算期末のデータに基づくため、借入金の返済・借り換え、追加での借り入れによる有利子負債の増減については考慮しない。
▽用語定義:借入金利は、有利子負債(銀行等、保険、ノンバンク、個人借入等を含む借入金、社債、CP等を含む総額)に対する利息の割合。

借入金利が0.5%上昇した場合、経常利益を平均4.6%押し下げる

マイナス金利解除,企業への影響
(図1) 出典:帝国データバンク

まず、企業の借入金利が0.5%上昇した場合、企業では1社当たり年間平均で136万円の利息負担が新たに発生し、経常利益を平均4.6%押し下げることが分かった。また、追加での利息増により、経常損益が黒字から赤字へと転落する企業は3.8%発生する試算となった。

マイナス金利解除,企業への影響
(図2) 出典:帝国データバンク

また、1%まで引き上げられた場合、利息負担は年273万円の増加、赤字へと転落する企業は7.1%と1割に迫る結果となった。さらに、借入金利が2%まで上昇する局面を想定した場合は、利息負担は平均で545万円の増加、経常利益は平均で18.2%減少、赤字へと転落する企業は全体の1割を超える計算となった。総じて、価格転嫁が進まず収益力に乏しい中小企業ほど利息負担が大きい傾向が見られた。

スポンサーリンク

「金利のある世界」に備えた企業の意識変革が求められる

ちなみに、帝国データバンクが「マイナス金利撤廃」の議論が本格化する前の2023年1月に、金利上昇による事業への影響について1,390社を対象に調査した際には、金利上昇により「マイナスの影響が大きい」と回答した企業が40.0%を占めていた。足元では、借り換えなどの場面において「すでに足元の貸出金利は上がっている」とする金融機関もあり、「マイナスの影響」を実感する企業はさらに増加している可能性がある。

マイナス金利解除,企業への影響
(図3) 出典:帝国データバンク

今回、マイナス金利政策は正式に解除となったものの、日銀は4月に発表する「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」までは実体経済の状況を確認していくとみられ、頻繁な利上げは当面見送られるとの予想もある。帝国データバンクは「金融機関による貸し出しでも、これまで続けてきた横並びの低金利競争を背景に、大幅な金利引き上げに突入することは考えにくい」との見解を示している。

とはいえ、これまで極めて低く抑制された「超低金利の世界」が順次終了することはほぼ確実とみられ、借り換えや新規借り入れ時の返済負担増に苦慮する中小企業が増加する可能性も高まっている。今後到来する「金利のある世界」に備えた意識変革が企業にも強く求められる。■

タイトルとURLをコピーしました