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日本製鉄、株価は昨年来高値を更新 値決め期間の短縮報道も追い風に?

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※画像はイメージです。(画像= TAKASANshot / 写真AC、La Caprese)

2023年1月11日、東京証券取引所で日本製鉄の株価が一時2,473円まで買われ、昨年来の高値を更新した。2022年1月28日に記録した安値1,787円から1年足らずで38.4%の上昇である。

1月6日付の日本経済新聞(電子版)で、日本製鉄が国内の建設用鋼材の販売価格の値決め期間を従来よりも2カ月短縮し、3カ月ごとに実施すると報じられたことが株価にも追い風となったようだ。高層ビルなどの大型物件は工期が長いため、建設用鋼材の価格は一度決めると基本的には途中で変えられないという事情があった。しかし、ロシアのウクライナ侵攻による供給不安などで原料価格の乱高下が激しく、(原料価格の変動を)販売価格に反映しやすくするために、値決め期間の短縮を決めたと伝えられている。株式市場では、値決め期間の短縮により原料高の転嫁が迅速に行われることで、日本製鉄の業績にプラスに作用するとの観測が広がったもようである。

今回は日本製鉄の業績をチェックしてみよう。

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日本製鉄、事業利益で過去最高益

日本製鉄が公表した2023年3月期・第2四半期(2022年4月1日~2022年9月30日)の連結業績は売上収益が前年同期に比べて22.5%増加の3兆8,744億600万円、事業利益(※)は同13.4%増の5,417億5,200万円で過去最高益を更新した。一方、本業の利益を示す営業利益は同26.5%増の5,417億5,200万円、税引前利益は同28.0%増の5,325億700万円、親会社の所有者に帰属する四半期利益は同24.7%増の3,723億7,200万円で増収増益となった。

同期は、中国の需要回復の見通しが立たない状況下に加え、米国はインフレ抑制を優先、欧州はインフレにより購買力低下、新興国は通貨安で景気悪化、ASEAN(東南アジア諸国連合)の鋼材市況も下落するなど、世界的に鋼材需要は急減速した。日本国内では、建設等で実需は底堅いものの、半導体の供給制約で自動車生産の回復に遅れが生じていたほか、エネルギーや資源価格の高騰、為替の円安進行などにも見舞われた。

このような、厳しい事業環境が継続する中、日本製鉄は従来からの抜本的な収益構造対策を継続するとともに、経営環境の変化に対する臨機応変な所要変動対応、円安の影響も含めた原燃料コスト上昇に対する販売価格への適切な反映による適正マージン確保等により収益の最大化に取り組んできた。その結果、東アジアの有力鉄鋼メーカーと比較しても相対的に強固な収益基盤を構築しつつある。こうした取り組みが、厳しい環境下でも事業利益で過去最高をもたらすところとなっている。

※用語解説 事業利益

※事業利益とは、持続的な事業活動の成果を表し、日本製鉄グループの業績を継続的に比較・評価することに資する連結経営業績の代表的指標である。売上収益から売上原価、販売費および一般管理費、並びにその他費用を控除し、持分法による投資利益およびその他収益を加えて算出される。その他収益およびその他費用は、受取配当金、為替差損益、固定資産除却損等から構成される。

事業環境の変化が業績にどう影響するのか?

日本製鉄は、2023年3月期(2022年4月1日~2023年3月31日)の連結業績予想について、売上収益で前期比17.5%増の8兆円、事業利益で同7.3%減の8,700億円、親会社の所有者に帰属する当期利益で同5.1%増の6,700億円となる見通しを示している。

ただし、上記の見通しは2022年11月1日に公表されたものであることに注意する必要がある。たとえば、中国は2023年1月8日から新型コロナウイルスの感染対策を大幅に見直し、入国後の隔離や患者の強制的な隔離などの措置を撤廃するなど、「ゼロコロナ」政策を終了している。また、為替についても、日本銀行が2022年12月19~20日に開いた金融政策決定会合で、従来0.25%程度としてきた長期金利の変動許容幅を0.5%に拡大する、大規模緩和を修正する方針を決定したことで流れに変化がみられる。さらに冒頭で述べた通り、日本製鉄は2023年1月6日に、国内の建設用鋼材の販売価格の値決め期間を短縮し、原料高の転嫁を迅速に行う方針も伝えられている。

こうした事業環境の変化を加味すると、日本製鉄は今後通期の業績見通しを修正してくる可能性もないとはいえない。引き続き、日本製鉄の業績・株価の動きを注視しておきたい。■

(La Caprese 編集部)

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