2024年1月19日、三井住友カード(本社:東京都江東区)は、同社が保有するキャッシュレスデータをもとに、訪日外国人の消費動向について分析した調査報告を公表した。
本調査報告は、三井住友カードのデータ分析支援サービス「Custella(カステラ)」の保有するキャッシュレスデータをもとに、日本における訪日外国人のクレジットカード消費動向を「いつ・どこで」のように、業種や地域別などの切り口で俯瞰的かつ正確に捉えたものである。本調査報告の概要は以下の通り。
訪日外国人のクレジットカード消費動向レポート
2022年10月に入国者や帰国者に対する水際対策が緩和され、2023年5月には新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが5類へ移行したほか、円安による追い風や、8月の中国政府による日本への団体旅行解禁も追い風となり、訪日外国人によるクレジットカードの決済金額は大きく伸長した。
そこで本調査では、外国人によるクレジットカードの決済データから、支出内容などを勘案して、訪日外国人による決済データを抽出した。そのデータを、時系列・国籍別・決済地域別・業種別などに細分化して整理・分析した。
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決済額月次推移
訪日外国人による決済額は、2022年10月の水際対策緩和後に急回復し、2023年後半にコロナ禍前(2019年)の水準に回復した。2023年は新型コロナウイルスの5類移行や円安による追い風、さらに8月に中国政府による日本への団体旅行解禁といったイベントもあり、引き続き決済金額が伸長している。
決済地域別
2023年の地域別の決済額をコロナ禍前の2019年と比較すると伸長率に差が見られた。東北・中国・四国などはコロナ禍前の水準を上回る一方、近畿・中部・北海道などでは回復に遅れがみられた。県別にみると、都市部に比べ、地方部において決済額の伸長が顕著であった。
また、コロナ禍前と比較すると、中国人観光客による決済額の構成比が全国的に縮小していた。地域別にみると、コロナ禍前の東北地方における構成比は他地域より低く、近畿地方は比較的高い水準となっている。東北地方の2023年1〜11月における決済額は、2019年同期比で55%増とコロナ禍前の水準を大きく上回ったが、中国人観光客の決済額の構成比は、各地域の回復率に影響を与える要因の一つと考えられる。
国別の決済額構成比
コロナ禍前の2019年には決済額全体の6割程度を中国人観光客が占めていたが、2023年は2割程度の水準に縮小した。一方、中国人観光客以外に着目すると、各国コロナ禍前と比較して構成比は伸長傾向にある。決済額が上位の国を見ると、アメリカや台湾をはじめ、各国の構成比が2倍前後の水準となった。
決済額上位国の金額推移
決済額の上位5カ国の金額指数推移をみると、中国人観光客以外は各国とも2019年の水準を超えており、2023年後半も引き続き右肩上がりの傾向にある。中国人観光客による決済額は緩やかに回復しているものの、2023年11月時点においてコロナ禍前の3割強の水準であり、今後の回復が期待される。
決済業種別
決済業種別で見ると、2019年と比較して百貨店や家電量販店などの業種で決済金額が減少した。その一方で、ホテル・旅館や飲食店・レストランといった観光で利用される業種の決済額が伸長した。コロナ禍前に注目を集めていた「爆買い」などのキーワードに代表されるモノ消費から、コト消費へと訪日外国人の需要がシフトしていると見られる。
国籍の多様化や、体験型消費を重視した施策等が重要
三井住友カードは、本調査結果を踏まえて、「今後も訪日外国人による消費は成長が継続するとみられます」との見解を示した。また、「中国人観光客以外の決済額が直近でも右肩上がりの推移をしていることに加え、中国人観光客についてもコロナ禍前の水準を鑑みると、回復の余地が大きいと考えられます」としている。
また、本調査では国別の決済額構成比をコロナ禍前後で比較すると、中国人観光客に大きく依存した構成から多様化しており、業種別の傾向をみても、モノの消費からコト消費へのシフトが見られた。そのため、「今後の訪日外国人需要の取り込みには、国籍の多様化や、観光をはじめとした体験型の消費への対応を重視した施策などが重要性を増すとみられます」(三井住友カード)と結論づけている。■
(La Caprese 編集部)