2023年7月9日、帝国データバンクは「唐揚げ店」の倒産発生状況について調査報告を発表した。それによると、持ち帰りを中心とした「唐揚げ店」運営企業の倒産は、2023年1月〜6月で9件発生した。これまで最多だった2021年(6件)を上回り、過去最多を更新した。ただ、唐揚げ店は1~2店を展開する小規模な事業者が多い。このため、帝国データバンクは「水面下の廃業や閉店を含めれば、実際はより多くの唐揚げ店が淘汰されたとみられる」との見解を示している。
(図1) 出典:帝国データバンク
出店競争の激化に加え、鶏肉や油、小麦粉などの「原料高」も響く
新型コロナウイルス禍で急拡大した「中食」需要のなかで、冷めても味が落ちにくく、自宅での調理が敬遠されがちな唐揚げが、手軽な持ち帰り総菜として人気を集めた。店舗側でも、少ない店舗面積など初期投資が低く、オペレーションが容易で、原料も安価な鶏肉であることから新たな飲食ビジネスとして唐揚げに注目する企業が増え、店舗数も増加した。
しかしながら、近時は急激な出店が続いたことで都市部を中心に競争が激化し、大手では出店ペースを抑制するなど、市場は徐々にレッドオーシャン化が進んでいる。外出制限が緩和されたことで持ち帰り需要も一服感が出てきたほか、輸入鶏肉や食用油など原材料価格も急騰。強みだった「原価の安さ」が活かせず、仕入原価の上昇に耐え切れずに経営破綻したケースも見られた。足元ではこうした原材料価格の高騰も背景に唐揚げ価格も引き上げが続くものの、B級グルメゆえに「大幅値上げは難しい」といった声も聞かれ、経営の舵取りは次第に難しくなっている。
(図2) 出典:帝国データバンク
足元では安価なムネ肉を使った唐揚げや、素材や作り方にこだわった唐揚げなど、差別化戦略も進んでいる。都市部に比べて相対的に店舗数が少ない地方などでは市場拡大の余地が残るものの、「消費者の胃袋をつかめなくなった唐揚げ店で今後淘汰が進む可能性がある」(帝国データバンク)としている。■
(La Caprese 編集部)