2023年11月29日、東京証券取引所でしまむらの株価が一時1万7,580円まで買われ、年初来の高値を更新した。今年1月16日の安値1万2,000円から10カ月半で46.5%の上昇である。
しまむらは、ファストファッションブランドを中心とした衣料品チェーンストアを展開する企業である。主力のしまむらを筆頭に、アベイル、バースデイ、シャンブル、ディバロなど多数のブランドを全国展開しているほか、台湾など海外へも進出している。しまむらで購入したファッションで全身をコーディネートした人を「しまラー」と呼ぶ流行語を生んだほか、しまむらの商品画像をインスタグラムで拡散する「しまパト」と呼ばれる現象も起きている。
後段で述べる通り、しまむらが公表した、❶2024年2月期・第2四半期(2023年2月21日~2023年8月20日)の連結業績が増収増益となったことに加えて、❷2023年11月の既存店売上高(10月21日〜11月20日)が前年同月比4.3%増と3カ月ぶりのプラスに転じたこと……などが株価のサポート要因となった。
今回はしまむらの話題をお届けしよう。
しまむら、最終増益のポジティブサプライズ
10月2日、しまむらは2024年2月期・第2四半期(2023年2月21日~2023年8月20日)の連結業績を発表した。同期の売上高は前年同期比5.1%増の3,168億3,800万円、本業の利益を示す営業利益は同4.3%増の301億7,300万円、経常利益は同3.5%増の307億2,500万円、最終利益は同1.6%増の209億5,400万円と増収増益となった。
ちなみに、しまむらが6月26日に公表した従来予想では、第2四半期の最終利益で前年同期比6.3%減となる見通しが示されていた。しかし、実際には上記の通り、最終増益に転じるポジティブサプライズとなった。
しまむらが展開する事業別の概況は以下の通りである。
しまむら事業
主力のしまむら事業の売上高は前年同期比5.4%増の2,373億2,500万円となった。
同期は、ブランド力の進化のため、自社開発ブランド(Private Brand、以下PB)とサプライヤーとの共同開発ブランド(Joint Development Brand、以下JB)で品揃えの拡充や高価格帯の拡大を進めた。また、猛暑対応では冷感素材を使用した「FIBER DRY」や「COOL」シリーズが好調だった。おでかけ需要やオケージョン需要、帰省需要に対応した夏物も積極展開し、アウター衣料、実用品ともに好調に推移した。
一方、広告宣伝では、チラシや動画CMのWEB配信を拡大し、売上向上に寄与した。また、創業70周年企画では、インフルエンサーや有名タレントを起用したチラシが集客力向上やSNS会員数の増加に寄与した。
商品調達では売れ筋商品を短期間で追加する短期生産サイクルを実用品に拡大し、売上向上に寄与した。また、海外サプライヤーと直接取引する貿易部の活用や生産国比率の見直しは仕入原価上昇の抑制に寄与した。なお、同期は6店舗を開設、9店舗を閉店し、1,415店舗となった。
アベイル事業
アベイル事業の売上高は前年同期比6.9%増の316億2,600万円となった。
同期は、レディースとメンズのアウター衣料でJBを中心にトレンド商品の品揃えを強化し、Y2Kファッションや平成ブランドとのコラボ企画が売れ筋となった。おでかけ需要への対応では厚底スニーカーやサンダル、帽子やアームカバーが好調だった。チラシではカップルコーデや親子コーデなどの新企画が好調で、個店対応では都市部と地方で店舗特性に沿った品揃えとチラシ配布を行い対象店舗の売上が好調に推移した。なお、同期は1店舗を開設、2店舗を閉店し、312店舗となった。
バースデイ事業
バースデイ事業の売上高は前年同期比1.1%増の363億5,000万円となった。
同期はJBの展開を拡大し、主力JBの「futafuta(フタフタ)」と新生児向けJBの「Cottoli(コトリ)」、トレンド商品を拡大したジュニア向けJBの「rabyraby(ラビラビ)」が夏物を中心に好調だった。また、オケージョン需要への対応では、スイムグッズや浴衣・甚平が売上を伸ばした。販促ではSNSによるデジタル販促を拡大し販促媒体の多様化を進め、インフルエンサーや雑誌モデルを活用した販促も推進した。なお、同期は4店舗を開設し、店舗数は317店舗となった。
シャンブル事業
シャンブル事業の売上高は前年同期比4.2%増の75億2,100万円となった。
同期は、「Mushroom(マッシュルーム)」などのJBを中心にアウター衣料が売上を伸ばした。また、おでかけ需要への対応では、帽子やアームカバーなどの服飾雑貨やコスメが好調だった。キャラクター商品では新たに展開したジブリやディズニーのチラシ商品が売れ筋となった。ギフト向け商品は、消費者が商品やラッピング資材を自由に選べる「ギフトマルシェ」に対応した商品を拡充し、中でも食品やお菓子が好調だった。なお、同期は5店舗を開設、3店舗を閉店し、115店舗となった。
ディバロ事業
ディバロ事業の売上高は前年同期比15.5%増の4億3,700万円となった。
同期は、おでかけ需要でメンズとレディースのカジュアルシューズやスニーカーが売上を伸ばしたほか、夏の猛暑によりサンダルや帽子も好調だった。また、ヤング向け商品では厚底スニーカーやスポーツサンダルが売れ筋となった。販促ではチラシのデジタル化やSNSでの情報発信を推進し、アウター衣料と服飾雑貨、シューズのトータルコーディネート提案を強化して、販促と売場を連動させたことが集客力向上につながった。なお、同期の店舗開設・閉店はなく、16店舗での営業となった。
思夢樂事業
思夢樂事業の売上高は前年同期比17.5%増の7億8,200万NT$(35億7,700万円)と伸長した。
台湾全域で店舗を展開する思夢樂は、20代から60代の女性とその家族をターゲットとした総合衣料の専門店として、日常生活で必要なソフトグッズが「消費者の欲しい時に必ずある」店舗の実現に向けて、事業の再構築を進めた。また、商品力の強化では日本企画のPBやJB、台湾企画のPBの比重を高めて他社との差別化を図り、売上高に占めるPBとJBの割合は55%となった。ラインロビングでは、キャラクターやスポーツ、ビジネス関連商品のほか、アウトドア関連商品も新たに展開し、それぞれ専用売場を設置したことで認知度が高まり、売上を伸ばした。さらに、販売力の強化ではSNSを活用したデジタル販促を拡大して集客力向上につなげた。なお、同期は1店舗を開設、1店舗を閉店し、40店舗での営業となった。
既存店売上高が3カ月ぶりのプラス
10月2日、しまむらは2024年2月期・通期(2023年2月21日~2024年2月20日)の連結業績予想について、売上高で前期比3.1%増の6,350億8,800万円、本業の利益を示す営業利益で同2.4%増の545億7,100万円、経常利益で同2.1%増の555億2,200万円、最終利益で同3.9%増の395億2,200万円と従来予想(4月3日公表)を据え置いた。
なお、冒頭でも述べた通り、11月24日にしまむらが発表した2023年11月の既存店売上高(10月21日〜11月20日)は前年同月比4.3%増と3カ月ぶりのプラスに転じた。同月は後半に気温が急低下したことで、アウター衣料と実用品の初冬物や冬物が売上を伸ばした。また、販促では創業70周年の大創業祭と大感謝祭が集客に効果的だった。冬物では、PB「CLOSSHI」であたたか素材を使用した「FIBER HEAT」や、高価格帯の「CLOSSHI PREMIUM」が婦人・紳士の肌着や寝具・インテリアを中心に好調だった。
引き続き、しまむらの業績や株価を注視しておきたい。■
(La Caprese 編集部)