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キユーピー、株価は年初来高値。鳥インフルエンザを克服し「復活」の兆し?

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(画像= La Caprese)

2023年10月6日、東京証券取引所でキユーピーの株価が一時2,626円まで買われ、年初来の高値を更新した。今年1月11日の安値2,116円から9カ月で24.1%の上昇である。

キユーピーは、東京都渋谷区に本社を置く食品メーカーである。その源流は、1919年にソース類や缶詰などの製造会社として創業した「食品工業」にまでさかのぼる。1925年には日本で初めてマヨネーズの製造・販売を開始、1957年には食品工業から現在のキユーピーに社名を変更している。創業104年の歴史を誇る、食品メーカーの老舗(しにせ)であり、現在はマヨネーズを始めとする一般ソース類のほか、各種食料品および食品添加物、医薬品や化粧品などの化学製品、飼料・肥料などの製造・販売等を手がけている。

後段で述べる通り、キユーピーが10月5日に発表した2023年11月期・第3四半期(2022年12月1日〜2023年8月31日)の連結業績は減益となったものの、2023年11月期・通期(2022年12月1日〜2023年11月30日)の連結業績予想が大幅に上昇修正され、減益幅が縮小する見通しが示されたことが株価にも刺激材料となった。

今回はキユーピーの話題をお届けしよう。

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2023年11月期・第3四半期は増収減益

10月5日、キユーピーは2023年11月期・第3四半期(2022年12月1日〜2023年8月31日)の連結業績を発表した。同期の売上高は前年同期比5.6%増の3,358億9,700万円、本業の利益を示す営業利益は同37.7%減の133億4,100万円、経常利益は同34.3%減の150億8,300万円、純利益は同23.8%減の110億8,100万円となった。

同期は高病原性鳥インフルエンザ(以下、鳥インフルエンザ)の感染拡大の影響に加え、穀物やエネルギーの国際価格も高値で推移するなど極めて厳しい経営環境が継続した。そうした中、国内では市場担当制を活かし消費者の多様化するニーズに対応するとともに、収益性の高い体質づくり、新たな価値提案の実現に向けて取り組んだ。また、海外では引き続き中国・東南アジア・北米を中心にKEWPIEブランドの浸透を加速させ、成長ドライバーとして拡大を進めてきた。

その結果、上記の通り、売上高は海外の安定成長や、調味料・タマゴ商品の価格改定による単価上昇などにより増収となった。しかし、利益面では、主原料およびエネルギー・一般原資材の高騰の影響を受けたことにより営業減益となったほか、経常利益や純利益も前年同期を大きく下回ることとなった。

主なセグメントの概況は以下の通りである。

市販用

市販用では、マヨネーズやドレッシング、パスタソース、育児食や介護食、パッケージサラダや惣菜など、家庭で使用する幅広い商品を製造し、スーパーマーケットやドラッグストア、ECサイトなどを通じて販売している。

同期の市販用の売上高は前年同期比1.4%増の1,323億800万円、営業利益は同33.5%減の73億2,700万円となった。同期は、調味料の価格改定による単価上昇等で増収となる一方で、主原料高騰等による影響を受け減益となった。

業務用

業務用では、レストランやホテル、ベーカリー、デリカ、コンビニエンスストアなどのさまざまな商品の原料として使用される、液卵、凍結卵、酢などの素材から、調味料、調理ソース、オムレツ、タマゴサラダなどの加工品まで、幅広い業務用商品の製造・販売を手がけている。

同期の業務用の売上高は前年同期比5.1%増の1,220億3,800万円、営業利益は同57.5%減の23億9,600万円となった。同期は、価格改定効果やタマゴ商品の販売価格が鶏卵相場高騰により上昇し増収となったものの、利益面では主原料高騰等による影響を受けて減益となった。

海外

海外では、中国や東南アジア・北米・欧州においてマヨネーズやドレッシングなどの調味料を中心とした製造・販売を手がけている。

同期の海外の売上高は前年同期比16.7%増の553億7,200万円、営業利益は同3.9%増の70億1,500万円となった。同期は、中国や東南アジア、北米が堅調に推移し増収となった。また、利益面では北米の拡大と主原料高騰の影響が緩和されたことにより増益となった。

フルーツ ソリューション

フルーツ ソリューションでは、家庭で使用するジャムやスプレッド、食品メーカー向けのフルーツ加工品などの製造・販売を手がけている。

同期のフルーツ ソリューションの売上高は前年同期比4.7%増の131億3,200万円、営業利益は同31.1%増の4億1,700万円となった。同期は、食品メーカー向けの販売増加や家庭用ジャム・スプレッドの価格改定効果等により増収増益となった。

ファインケミカル

ファインケミカルでは、ヒアルロン酸や卵黄レシチンなどを医薬品・化粧品・食品の原料として製造・販売している。また、それらの素材を自社の栄養補助食品やスキンケア商品へも展開している。

同期のファインケミカルの売上高は前年同期比10.5%増の84億2,000万円、営業利益は同51.8%減の5億5,500万円となった。同期は、通信販売が好調に推移し増収となったものの、広告宣伝の強化や原料販売でのコスト増等により減益となった。

キューピーは完全復活するのか?

10月5日、キユーピーは2023年11月期・通期(2022年12月1日〜2023年11月30日)の連結業績予想について、売上高で前期比5.3%増の4,533億円、本業の利益を示す営業利益で同29.2%減の180億円、経常利益で同27.0%減の199億円、純利益で同25.2%減の120億円となる見通しを示した。これは従来予想(7月5日公表)に比べて売上高でプラス1.4%、営業利益でプラス28.6%、経常利益でプラス25.9%、純利益でプラス41.2%の上方修正である。

キユーピーは、鳥インフルエンザの感染拡大による鶏卵供給の減少や国際的な穀物・エネルギーおよび為替の相場動向などに懸念があるものの、❶価格改定の浸透、❷海外セグメントの業績が堅調に推移していること、❸鳥インフルエンザによる影響が当初想定より少ない見込みであること……などを考慮して通期の連結業績予想を上方修正したとしている。

株式市場では新型コロナウイルスの感染症法上の分類が「5類」へ引き下げられたことを受け、経済・社会活動の正常化が進む中、外食産業でV字型の業績回復を示す関連銘柄が相次ぎ、株価が急上昇する場面も見られた。そうした状況下、キューピーは鳥インフルエンザによる影響で出遅れ感が強かったが、ここにきて連結業績予想を上方修正するなど回復の兆しが見られ始めている。

果たして、キューピーは完全復活するのだろうか? 同社の業績や株価を注視しておきたい。■

特集:外食産業「復活」への期待
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