2024年2月2日、東京証券取引所で第一屋製パンの株価が一時855円まで買われ、昨年来高値を更新した。2023年1月16日の安値360円から1年余りで137.5%の上昇である。
第一屋製パンは、東京都小平市に本社を置く製パン会社である。1947年の創業以来、時代のニーズを捉えた各種パン類をはじめ、和菓子、洋菓子、クッキー等の製造・販売を手がけてきた。中でも1998年6月1日に発売した「ポケモンパン」は、今年で26年目を迎えるロングセラーシリーズとなっている。また、2009年12月には豊田通商と資本業務提携契約を締結し、2010年からはトヨタ生産方式(TPS)を導入しているのも大きな特徴である。
後段で述べる通り、第一屋製パンが公表した、❶2023年12月期・第3四半期(2023年1月1日~2023年9月30日)の連結業績が回復傾向を示したほか、❷先週1月30日に2023年12月期・通期(2023年1月1日~2023年12月31日)の連結業績予想で営業利益・経常利益・純利益を大幅に上方修正したこと……などが株価にも刺激材料となっている。
今回は第一屋製パンの話題をお届けしよう。
第一屋製パン、食品事業の好調で黒字転換
2023年11月14日、第一屋製パンは2023年12月期・第3四半期(2023年1月1日~2023年9月30日)の連結業績を発表した。同期の売上高は前年同期比10.0%増の194億8,000万円と大幅な増収となった。一方、利益面では原材料価格の高騰や人件費が増加する状況下において、生産効率の向上、物流コストを中心とした販売管理費の低減に努めた結果、本業の利益を示す営業利益は2億6,700万円(前年同期は4億600万円の営業損失)、経常利益は2億8,500万円(前年同期は4億1,400万円の経常損失)、純利益は2億5,100万円(前年同期は8億9,100万円の純損失)と各利益が黒字に転換した。
同期は、新型コロナウイルス禍の行動制限緩和により、社会経済活動の正常化が進み、緩やかながら景気回復への期待が広がった。しかし、製パン業界においては、為替変動に加えて、エネルギーコストや原材料価格の高騰等に伴う物価上昇が実績賃金の伸びを上回る中、消費者の節約志向が強まり、販売競争が激化するなど、厳しい経営環境が継続した。
こうした中、第一屋製パンは部門間の連携強化を図るとともに、2023年7月1日より各コストの上昇に対処するため一部商品の価格改定を実施した。また、主力のロングセラー商品のリニューアルやキャンペーン等の販促を実施するなど、継続的に各年代・世帯構成に合わせた商品を開発・発売し商品力の強化を図った。さらに、2022年12月末をもって横浜工場(神奈川県横浜市)を閉鎖したことによる生産拠点の集約効果も業績に寄与した。
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「大きなデニッシュ」シリーズ、「ひとくちつつみ」シリーズが大幅に伸長
同期は、収益の柱となる食品事業の売上高が前年同期比10.1%増の193億5,800万円、セグメント営業利益が同139.8%増の10億9,300万円と好調に推移した。
食品事業では、2023年4月に主力品の「大きなデニッシュ」シリーズ、6月に「ひとくちつつみ」シリーズのリニューアルを実施したことが功を奏し、売上高が大幅に伸長した。また、ハンバーガーチェーンおよびコーヒーショップチェーン向けなどの業務用商品も、新型コロナウイルスの感染法上の位置づけ変更に伴う人流の回復やチェーンの販促に合わせた商品提案により、前年を上回る実績となった。さらに、2023年6月に発売25周年を迎えたテレビアニメキャラクター商品も、テレビアニメの新シリーズスタートに伴う商品リニューアルや、発売25周年に伴う記念キャンペーン等で、引き続き好調だった。
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2023年12月期・通期の連結業績予想で各利益を大幅に上方修正
先週1月30日、第一屋製パンは2023年12月期・通期(2023年1月1日~2023年12月31日)の連結業績予想について、売上で前期比7.1%増の261億1,800万円、本業の利益を示す営業利益で5億9,700万円(前期は6億6,900万円の営業損失)、経常利益で6億1,700万円(前期は5億5,400万円の経常損失)、純利益で4億7,400万円(前期は11億4,500万円の純損失)となる見通しを示した。これは従来予想(2023年11月14日公表)に比べて、売上でマイナス1.5%、営業利益でプラス66.7%、経常利益でプラス71.8%、純利益でプラス76.2%の大幅な上方修正である。
第一屋製パンは上方修正の理由について、①商品の販売構成が変化したことによる収益性の向上(低採算製品の販売抑制、高採算製品の伸長)に加え、②エネルギーコストの高騰の影響が想定よりも低減されたこと……を挙げている。
なお、第一屋製パンは2月14日に2023年12月期・通期の連結業績の発表を予定している。ここで上記の連結業績予想に対してどのような実績が示されるのか。さらに、2024年12月期・通期(2024年1月1日~2024年12月31日)の連結業績予想についてどのような見通しが示されるのか、株価の動きとともに注視しておきたい。■
(La Caprese 編集部)