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日本航空、復活への期待 株価は年初来高値、リスキリングへの取り組みも注目

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※画像はイメージです。(画像= ベンチタイム / 写真AC、La Caprese)

2022年9月19日、日本航空が東京証券取引所に再上場してから10年を迎えた。東京地方裁判所に会社更生法の適用を申請し倒産したのが12年前であり、その後は代表取締役会長兼グループCEO(最高経営責任者)に就任した稲盛和夫氏のもとで経営を再建し、再上場後も業績を一時伸ばした。しかし、2020年以降は新型コロナウイルスの世界的な感染拡大で業績が低迷するなど厳しい経営を余儀なくされていた。

そんな新型コロナウイルス禍の約2年半にわたる「長いトンネル」も、ようやく出口が見えてきたようだ。10月11日からは国内旅行が割引になる「全国旅行支援」がスタートしたことに加え、海外からの入国者数上限の撤廃、外国人の個人旅行とビザなし渡航も解禁されるなど好材料が相次いでいる。先週10月7日には日本航空の株価が一時2,735円まで買われ、年初来の高値を更新する場面もみられた。今年3月8日に記録した年初来安値の1,801円から7カ月で51.9%の上昇であり、市場関係者の期待も高まっているようだ。

今回は日本航空の話題をお届けしよう。

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日本航空のEBITと純損益が大幅に改善

2022年8月1日、日本航空は2023年3月期・第1四半期(2022年4月1日~6月30日)の連結業績を発表した。同期の売上収益は前年同期に比べ102.1%増の2,688億円、EBIT(財務・法人所得税前利益)は275億円の損失、純損益は195億円の損失となった。

EBITと純利益は損失を計上したものの、EBITは前年同期の826億円の損失、純利益も同579億円の損失からそれぞれ約3分の1に縮小するなど大幅な改善傾向が認められた。

同期は新型コロナウイルスのワクチン接種の進展や感染防止のための行動様式の定着等を背景に、航空旅客需要が回復基調となった。「国内旅客需要」は、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置等の行動制限が全面解除されたことなどから、首都圏発を中心に順調に回復したほか、「国際旅客需要」も世界的な出入国制限の緩和・撤廃の動きに加え、日本における厳格な入国制限の一部緩和により徐々に回復した。「貨物事業」は、ロシア・ウクライナ情勢の影響等は否めないものの、海上物流の混乱等を背景に、堅調な需要と単価のさらなる上昇により好調に推移した。

入国制限の緩和で国際旅客が回復に転じる

事業領域毎の取り組みをみてみよう。まず、「フルサービスキャリア事業領域」は、国際旅客が2022年6月から日本への入国制限が1日2万人へと引き上げられたこと等により、日本発着需要が徐々に回復に転じた。また、成田空港経由での乗り継ぎ利便性の高い運航ダイヤを設定したことで、アジア・北米間を中心とする通過需要も確実に取り込むこととなった。一方、国内旅客は、首都圏発に比べて回復ペースが遅れている地方発需要を喚起すべく、自治体や鉄道会社との連携による各種プロモーションを実施した。

「LCC事業領域」においては、国際線中長距離LCCであるZIPAIR Tokyoでゴールデンウィークの一部の便が満席となった。また、2022年12月からはサンノゼ線の就航を決定するなど、国際旅客需要の回復に備えネットワークの拡充も推進した。ジェットスター・ジャパンは、7月より燃費効率が向上した最新鋭のエアバスA321型機による運航を開始し、環境負荷の軽減と快適性の向上に取り組んだ。2021年6月に連結子会社化したスプリング・ジャパンを含む、特徴の異なるLCC3社で今後も事業規模を拡大する方針だ。

「非航空事業領域」においては、「マイルをためる」「マイルをつかう」といった活用シーンが広がるサービスとして、楽天ポイントとのマイルの相互交換をスタートした。2021年度に連結子会社化したJALUXについては、フライトシミュレーター体験の販売や新たな商品開発等を共同で進めた。

日本航空の「リスキリング」への取り組みも注目

冒頭でも述べた通り、今週10月11日からは国内旅行が割引になる「全国旅行支援」がスタートしたほか、海外からの入国者数上限の撤廃、外国人の個人旅行とビザなし渡航も解禁されるなど好材料が相次いでいる。事業領域毎の前向きな取り組みが実を結ぶかたちで、2023年3月期・第1四半期の業績が改善傾向を示す中、株式市場でも期待が広がっているようだ。

ところで、もう一つ、注目したいのが「リスキリング(学び直し)」関連としての側面である。10月3日、岸田文雄首相は衆院本会議の所信表明演説で、個人のリスキリング支援に5年間で1兆円を投じると表明した。働きながら新たなスキルを身につけるリスキリングについては、日本航空も2023年度から全グループ社員3万6,000人を対象に、DX(デジタルトランスフォーメーション)などを柱とした教育プログラムをスタートすることを明らかにしている。

株式市場では「政策に売りなし」という格言がある。岸田内閣が打ち出すリスキリング支援とともに、日本航空の取り組みにも引き続き注目しておきたい。■

(経済ジャーナリスト 世田谷一郎)

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