2023年4月28日、東京証券取引所でキッコーマンの株価が一時8,040円まで買われ、年初来の高値を更新した。今年2月24日の安値6,170円から2カ月ほどで30.3%の上昇である。
キッコーマンは、しょうゆをはじめとする調味料や加工食品を製造・販売する企業である。キッコーマンが本社を置く千葉県野田市とその周辺は、古くからしょうゆ造りが盛んな地域であった。野田市の公式ホームページでは、1661年(寛文元年)に、上花輪村名主の高梨兵左衛門が野田でしょうゆ醸造を開始しており、これが野田におけるしょうゆの商品化の始まりとされている。1917年にはキッコーマンの源流となる野田しょうゆと万上味淋が創業。その後、合併を経て1927年に商標をキッコーマンに統一した。
後段で述べる通り、キッコーマンが4月27日に発表した①2023年3月期(2022年4月1日~2023年3月31日)の連結業績が増収増益となり、最終利益で10期連続の過去最高益を更新したほか、②2024年3月期(2023年4月1日~2024年3月31日)の連結業績予想についても微増ながら最終利益で11期連続の過去最高益となる見通しが示されたこと、③さらに、上限200万株・100億円の自社株買いを実施すると発表したことが追い風となった。
今回はキッコーマンの話題をお届けしよう。
キッコーマン、最終利益で10期連続の過去最高益
4月27日、キッコーマンは2023年3月期(2022年4月1日~2023年3月31日)の連結業績を発表した。同期の売上収益は前期比19.8%増の6,188億9,900万円、事業利益は同12.4%増の587億7,700万円、営業利益は同9.2%増の553億7,000万円、最終利益は同12.4%増の437億3,300万円となった。その結果、最終利益は10期連続で過去最高益を更新した。
同期は、国内の食料品製造・販売事業において、しょうゆ・酒類が前期を上回ったものの、食品・飲料が前期に及ばなかった。一方、海外事業では、食料品製造・販売および食料品卸売事業ともに好調に推移し、前期の売上を大きく上回った。
キッコーマンの収益の柱となる、国内の食料品製造・販売事業、海外の食料品製造・販売事業および食料品卸売事業の状況は以下の通りである。
国内:食料品製造・販売事業は苦戦が続く
国内:食料品製造・販売事業の売上収益は前期比2.6%減の1,449億5,900万円、事業利益は35.7%減の74億7,000万円と減収減益だった。
しょうゆ部門では、家庭用分野で「いつでも新鮮」シリーズ、「特選 丸大豆しょうゆ」などのペットボトル品が前年同期を下回り、同分野全体としても前期を下回った。一方、加工・業務用分野は、外食店を中心に需要が回復し、前期を上回った。なお、加工・業務用しょうゆは2023年2月に原材料価格高騰等を背景とした価格改定を行った。この結果、部門全体として前期の売上を上回った。
食品部門では、つゆ類でストレートタイプつゆの「具麺」シリーズ、「濃いだし本つゆ」、白だしが好調だった。その一方でたれ類は前期を下回ることとなった。また、「うちのごはん」では「混ぜごはんの素」シリーズが好調に推移した。デルモンテ調味料も前期を上回った。なお、デルモンテ調味料は2022年5月および2023年3月、たれ類は2022年10月に原材料価格高騰等を背景とした価格改定を実施した。前期は食材事業を譲渡した影響もあり、部門全体として前期の売上を下回った。
飲料部門では、豆乳飲料の主力商品である調製豆乳1L、豆乳飲料1Lの売上が前期を下回った。一方で、デルモンテ飲料は、トマトジュースが堅調に推移した。同期はデルモンテ飲料が2022年5月および2023年3月に原材料価格高騰等を背景とした価格改定を行った。この結果、部門全体としては前期の売上を下回った。
酒類部門では、本みりんの家庭用分野において、「濃厚熟成本みりん」や「米麹こだわり仕込み本みりん」などが売上を伸ばした。また、加工・業務用分野でも外食店を中心に需要が回復し、前期を上回った。ワインも前期を上回った。なお、本みりんは2022年10月、調理用ワインは2023年2月に原材料価格高騰等を背景とした価格改定を行った。この結果、部門全体としては前期の売上を上回った。
海外:食料品製造・販売事業が好調
海外:食料品製造・販売事業の売上収益は前期比24.1%増の1,437億3,600万円、事業利益は同19.9%増の272億4,000万円と大幅な増収増益となった。
しょうゆ部門は、北米市場の家庭用分野で、主力商品であるしょうゆに加え、しょうゆをベースとした調味料などの拡充に注力したほか、加工・業務用分野では顧客のニーズに合わせたきめ細かな対応で事業の拡大を図った。この結果、前期の売上を上回った。一方、欧州市場においては、主要市場のイギリスなどで売上を伸ばした。欧州経済の低迷、ロシア・ウクライナ情勢による影響もあったが、全体としては為替換算(円安進行)の影響もあり前期の売上を上回った。アジア・オセアニア市場においては、フィリピン、インドネシア、タイなどで売上を伸ばした。この結果、部門全体で前期の売上を上回った。
デルモンテ部門では、アジア・オセアニア地域で、フルーツ缶詰・コーン製品、トマトケチャップ等を製造・販売しており、部門全体で前期の売上を上回った。また、その他食料品部門では、主に北米地域において、健康食品を製造・販売しており、部門全体で前期の売上を上回ることとなった。
海外:食料品卸売事業は大幅な増収増益
海外:食料品卸売事業は、北米や欧州、アジア・オセアニアとも順調に売上を伸ばした。この結果、同事業全体の売上収益は前期比31.1%増の3,435億800万円、事業利益は同39.1%増の245億9,800万円と大幅な増収増益となった。
今期は最終利益で11期連続の過去最高益を予想
上記の通り、セグメント別では国内の食料品製造・販売事業が減益となるなど苦戦を強いられたが、その一方で海外の食料品製造・販売事業および食料品卸売事業が大幅な増収増益となり、業績全体をけん引した。
そうした中、キッコーマンは4月27日、2024年3月期(2023年4月1日~2024年3月31日)の連結業績予想について、売上収益で前期比3.0%増の6,375億円、事業利益で同6.7%増の627億円、営業利益で同3.4%減の535億円、最終利益で0.4%増の439億円となる見通しを示した。営業利益は減益となるものの、最終利益は微増となり11期連続の過去最高益を更新するとの見立てである。
なお、キッコーマンは同日、上限200万株・100億円の自社株買いを発表した。取得期間は2023年5月10日~12月29日で、自己株式を除く発行済株式総数に対する割合は1.04%となる。
引き続き、キッコーマンの業績や株価の動きが注目されるところである。■
(La Caprese 編集部)