2023年1月12日、東京証券取引所で大戸屋ホールディングスの株価が一時3,255円まで買われ、昨年来の高値を更新した。2022年1月4日につけた安値2,690円から12カ月で21.0%の上昇である。
大戸屋ホールディングスは、家庭料理を意識した和定食などを提供する「大戸屋ごはん処」などの外食チェーンを展開する事業会社の運営を行う持株会社である。2020年9月にコロワイド <7616> による大戸屋ホールディングス株の公開買い付けが成立し、同年11月の株主総会での取締役交代等の承認可決を経て、コロワイドの子会社となった。
後段で述べる通り、2023年1月6日に大戸屋ホールディングスが公表した2022年12月の既存店売上高が14カ月連続で前年実績を上回るなど好調な数字が示されたことが評価されているようだ。とはいえ、同社の2023年3月期・第2四半期(2022年4月1日~2022年9月30日)の連結業績は増収減益であり、通期見通しも下方修正されるなど気がかりな面もある。
今回は大戸屋ホールディングスの業績をみてみよう。
大戸屋、2023年3月期・第2四半期は増収減益
2022年11月8日、大戸屋ホールディングスは2023年3月期・第2四半期(2022年4月1日~2022年9月30日)の連結業績を発表した。同期の売上高は前年同期に比べて31.4%増の110億5,500万円、本業の損益を示す営業損益は2億4,900万円の赤字(前年同期は6億1,400万円の営業赤字)、経常損益は1億7,500万円の赤字(前年同期は5億8,600万円の経常赤字)、最終損益は1億5,700万円の赤字(前年同期は6億8,300万円の赤字)で増収減益となった。
セグメント別では、「国内直営事業」の売上高が前年同期に比べて32.2%増の63億200万円、セグメント損益は3億3,500万円の赤字(前年同期は5億2,800万円の赤字)となった。同期は駅前や商業施設など出店立地別のメニュー編成に取り組み、2022年6月にはグランドメニューの改定を実施した。また、過去の人気メニューを月替わりで「復刻」メニューとして販売したほか、季節限定メニューや期間限定「アジアン」メニューの販売を行った。さらに、毎月8日に「大戸屋ごはんの日」アプリクーポンの配信、テレビCM放映等の広告宣伝などの効果もあって売上高は前年同期比32.2%増と改善した。
「国内フランチャイズ事業」のセグメントは、売上高が前年同期に比べて26.6%増の32億7,900万円、セグメント利益は同41.2%増の5億1,500万円となった。国内フランチャイズ事業においても、2022年6月にグランドメニューを改定し、定期的な季節限定メニューや期間限定メニューを展開、さらにテレビCM放映等の広告宣伝効果もあって、売上高およびセグメント利益ともに改善することとなった。
海外は店内飲食の規制緩和などで改善もみられる
一方、「海外直営事業」のセグメントは、売上高が前年同期に比べて29.1%増の11億7,700万円、セグメント損益は1億2,300万円の赤字(前年同期は2億円の赤字)となった。同期の海外直営事業は、新型コロナウイルス禍で依然として厳しい環境が続いた。しかしながら、米国ではニューヨーク州で新型コロナウイルスのワクチン接種が進み、店内飲食の制限等の規制緩和があったこと等から売上高は前年同期より改善することとなった。
「海外フランチャイズ事業」のセグメントは、売上高が前年同期に比べて86.3%増の1億800万円、セグメント利益は3,400万円(前年同期は1,800万円の損失)であった。こちらも海外直営事業と同じく、新型コロナウイルス禍で厳しい環境が続いている。しかしながら、地域によって差はあるものの店内飲食の制限等の規制緩和もみられたことから売上高およびセグメント利益ともに改善することとなった。
気になる人手不足や原油・原材料価格の高騰
2022年11月8日、大戸屋ホールディングスは、2023年3月期(2022年4月1日~2023年3月31日)の連結業績予想について、売上高で前期比28.0増の241億200万円、本業の利益を示す営業利益は9億7,400万円、経常利益は10億5,700万円、純利益は53.3%減の8億9,100万円となる見通しを示した。これは従来予想(2022年5月11日公表)に比べて売上高で4.2%減、営業利益で30.6%減、経常利益で23.3%減、純利益で6.4%減の下方修正である。
大戸屋ホールディングスは下方修正の理由について、(1)2022年7月以降に新型コロナウイルスの感染者が増加したうえ、人手不足により店舗運営が圧迫されたこと、さらに物価上昇に伴う消費マインドの停滞で売上高が当初の予想を下回ったこと、(2)原油・原材料価格の高騰に伴い仕入れ価格および光熱費が上昇したこと等により、営業利益・経常利益・純利益が当初の予想を下回ったこと……を挙げている。人手不足によるオペレーションの課題や投資コストの削減に対応するべく、ショッピングモール内のフードコートモデルを確立したほか、店舗労働時間の管理徹底による労務費の適正化等、事業環境の変化に順応した取り組みを強化しているものの、通期見通しについては2022年11月8日時点で下方修正せざるを得なかったようだ。
冒頭で述べた通り、2022年12月の既存店売上高は前年同月に比べて9.8%増と14カ月連続のプラスを記録するなど好調な数字を示している。とはいえ、上記の人手不足や原燃料価格の高騰などのマイナス要因も引き続き気がかりである。
今後、大戸屋ホールディングスが通期見通しを再度修正してくるのか注視しておきたい。■
(La Caprese 編集部)