水素水の摂取により脳の神経細胞死を抑制できることが判明。――2023年1月5日、日本獣医生命科学大学とドクターズ・マン(神奈川県横浜市)の共同研究により、そのような成果が明らかになった。
ドクターズ・マンは、医療および予防領域での水素活用製品の開発・研究から製造・販売・レンタルまで携わっている企業である。2006年から水素研究を続ける同社は、数多くの医療機関や大学などと多種多様なテーマで共同研究に取り組んでおり、予防領域における水素活用のさらなる推進を目指している。
なお、本研究成果はPublic Library of Scienceより刊行されている科学雑誌『PLOS ONE』にて、「Pharmacokinetics of hydrogen administered intraperitoneally as hydrogen-rich saline and its effect on ischemic neuronal cell death in the brain in gerbils(スナネズミへの水素水腹腔内投与後の血中動態と脳虚血性神経細胞死への効果)」のタイトルの論文で掲載された。
今回は日本獣医生命科学大学とドクターズ・マンの研究成果を紹介したい。
水素分子が脳虚血後の神経細胞死の抑制に貢献
日本獣医生命科学大学とドクターズ・マンの研究チームは、これまでに水素分子の摂取が降圧効果や過剰な免疫機能を抑制することを明らかにしてきた。
しかしながら、摂取後の水素分子の血中動態については、体サイズの大きなブタでの報告のみで、研究に多用されている齧歯類での報告はなかった。そこで今回、脳虚血研究の実績の高いスナネズミを用いて、水素分子の血中動態と脳虚血負荷に対する有効性を検証した。
その結果、繰り返し腹腔内投与された水素水中に含まれる水素分子は速やかに近傍の静脈に吸収される一方で、動脈血中にはほとんど存在しないことが判明した(図-1、2)。それにも関わらず、水素分子の投与は脳虚血後の大脳皮質の神経細胞のアポトーシスを抑制し、細胞死を軽減することを見出した(図-3)。
水素分子による神経細胞死の抑制には未だ解明されていないメカニズムも?
現在、水素分子の摂取には水素ガスもしくは水素水による2つの方法がある。特に、水素水による水素分子の摂取には特別な機器を必要としないため、多くの研究報告がなされている。
しかしながら、水素分子の血中動態と病態に対する有効性を同時に比較した研究はほとんどないのが実情であった。その意味でも、今回紹介した日本獣医生命科学大学とドクターズ・マンの研究成果の意義は大きい。
ただ、本研究においても水素分子が脳虚血後の神経細胞死の抑制に貢献していることは明らかであるが、脳に運ばれる動脈血中の水素濃度は予想以上に低レベルであり、水素分子による神経細胞死の抑制には未だ解明されていないメカニズムが存在する可能性もあるという。日本獣医生命科学大学とドクターズ・マンは、引き続き水素分子の別の効果も検証していく予定である。■
(La Caprese 編集部)