2024年5月31日、東京証券取引所でヨネックスの株価が一時1,762円まで買われ、上場来高値を更新した。今年3月11日の安値1,062円から約2カ月半で65.9%の上昇である。
ヨネックスは、スポーツ用品の製造・販売やゴルフ場の運営等を手がける企業である。その源流は、1946年に新潟県で創業した「米山木工所」にまでさかのぼる。米山木工所は、その社名が示す通り、漁業用の木製ウキなどの木工製品を製造する会社であった。その後、漁業用ウキが木製からプラスチック製に変わったことで経営が思わしくなくなり、1957年に木工製品を製造する技術を活かしバドミントンラケットを手がけるようになる。現在はバドミントンやテニス、ゴルフ、スノーボード、ロードバイクなど多様なスポーツ用品をグローバルに展開する企業に成長している。
後段で述べる通り、ヨネックスが公表した、❶2024年3月期・通期(2023年4月1日~2024年3月31日)の連結業績が増収増益となり、売上高で過去最高を更新したことに加え、❷2025年3月期・通期(2024年4月1日~2025年3月31日)の連結業績予想についても増収増益となる見通しが示されたこと、❸さらに、2025年3月期の年間配当予想を前期比4円増の20円に増配する方針を示したこと……など好調な業績が株価のサポート要因となっている。
今回はヨネックスの話題をお届けしよう。
ヨネックス、売上高が過去最高
5月10日、ヨネックスは2024年3月期・通期(2023年4月1日~2024年3月31日)の連結業績を公表した。同期の経営成績は、売上高が前期比8.8%増の1,164億4,200万円と過去最高を更新、本業の利益を示す営業利益は同15.4%増の116億1,100万円、経常利益は同22.4%増の121億9,500万円、純利益は同20.8%増の88億5,900万円と増収増益となった。
同期は、新型コロナウイルス禍の行動制限緩和で、各種スポーツ大会が開催されるなどスポーツ活動が活発化したことに加え、ヨネックスがかねてより推進していた草の根販促活動も奏功し、スポーツ需要が堅調に推移した。さらに、ヨネックスの契約選手の活躍なども追い風となり、売上高は過去最高を更新した。海外子会社では前期に比べ為替が円安に推移したことで業績の円換算による上押し効果もあり、スポーツ用品事業の各地域セグメントで増収となった。
一方、利益面では増収に加え、主に日本における売上総利益率の改善により売上総利益が増加した。販管費は体制強化等による人件費の増加や、システム関連費用、さらなる競技のすそ野拡大に向けたグローバルでの広告宣伝費の増加に加え、円安による外貨建て費用の上昇もあり増加した。しかし、売上総利益の増加が販管費の増加を上回り各段階利益(営業利益・経常利益・純利益)が揃って増益となった。
セグメント別の状況は以下の通りである。
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スポーツ用品事業は増収増益
スポーツ用品事業の売上高は前期比8.9%増の1,159億1,900万円、営業利益は同3.8%増の113億900万円となった。各地域の状況は以下の通り。
日本:バドミントン用品が堅調に推移
日本国内では、バドミントン用品が引き続き堅調に推移した。今年3月に発売した新製品ラケットも好評で、増収となった。テニス用品はここ数年の販売増加が一段落し、通期では微減収となった。その結果、国内全体ではバドミントン用品の増収が寄与し増収となった。海外代理店向けは、大幅な伸びを示した前期と比べて伸び率は落ち着いているものの、引き続きバドミントン市場が活発なアジア地域を中心に増収となった。
利益面では、円安進行による仕入価格の上昇等の影響を受けたものの、セールスミックスや販売価格見直し等により為替の影響を大きく受けた前期に比べ売上総利益率が改善したほか、増収により売上総利益は増加した。販管費はグローバルでの広告宣伝費や、人件費、システム関連の費用の増加に加え、円安に伴う外貨建て費用の上昇も影響し増加したが、売上総利益の増加が販管費の増加を上回り増益となった。
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アジア:中国販売子会社の売上が大幅に伸長
アジアでは、まず中国販売子会社の回復が顕著であった。中国販売子会社では、第1四半期前半は前年第4四半期からの新型コロナウイルス感染拡大の影響が残ったものの、その後早期にスポーツ活動が回復した。特に第4四半期はネットセールでの販売好調も加わり、前年同期比で売上高が大幅に伸長した。
台湾子会社では、国際大会での地元選手の活躍を活かしたマーケティングやヨネックス主催大会の開催等、さらなる市場活性化に向けた活動にも注力したことで、バドミントン用品の販売が増加した。
利益面では、中国販売子会社において競技層の拡大に伴い幅広い価格帯の製品の販売が増加し売上総利益率が前期を下回る水準で推移したものの、第4四半期は大幅増収により売上総利益が増加した。販管費は主に体制強化に伴う人件費が増加したものの、中国販売子会社の第4四半期の売上総利益の増加や、円安効果もあり増益となった。
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北米:バドミントンは増収だが、テニスは減収
北米販売子会社では、バドミントンにおいて下期は競技の再開により大幅増収となった前年同期と比べて減収となったものの、上期の増収幅が大きく通期では増収を記録した。カナダでは国際大会の開催も市場を活性化し需要が堅調に推移した。テニスでは、引き続き競技は活発に行われているものの、前年下期からの市場全体の在庫増加の影響と前期までの大幅な販売増加の反動もあり、減収となった。その結果、全体ではバドミントン用品の販売増に伴う牽引と円安効果により増収となった。
一方、利益面では増収により売上総利益は増加したものの、マーケティング強化による広告宣伝費や、体制強化に伴う人件費等の販管費の増加が上回り減益となった。
ヨーロッパ:ドイツやイギリスの販売が堅調に推移
ヨーロッパでは、ドイツやイギリスの販売子会社において、バドミントン、テニスともに需要が堅調に推移した。加えて、為替の円安効果もあり増収となった。特にドイツ販売子会社においては、テニス用品が大幅増収となった。
一方、利益面では増収効果に加え、セールスミックスの改善や販売価格の見直し等により売上総利益率が大幅に改善し売上総利益が増加した。人件費や広告宣伝費等の販管費は増加したものの、売上総利益の増加が上回り、大幅増益となった。
スポーツ施設事業は能登半島地震による休業や積雪が響く
スポーツ施設事業の売上高は前期比2.0%減の5億2,200万円、営業利益は同63.0%減の2,100万円と減収減益となった。
同期は、スポーツ施設事業の中核をなすヨネックスカントリークラブで各種コンペやPGAプロを迎えたプロアマ大会、新製品ゴルフクラブの試打会等を実施した。しかし、今年1月の能登半島地震による休業や3月の積雪の影響もあり、累計入場者数は前年を下回った。
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グローバル成長戦略に沿って中長期の成長に向けた基盤づくり
5月10日、ヨネックスは2025年3月期・通期(2024年4月1日~2025年3月31日)の連結業績予想について、売上高で前期比8.2%増の1,260億円、本業の利益を示す営業利益で同7.7%増の125億円、経常利益で同2.5%増の125億円、純利益で同5.0%増の93億円と増収増益となる見通しを示した。見立て通りとなれば売上高で再び過去最高を更新することになる。
ヨネックスは、外部環境は引き続き不透明としながらも、(コロナ禍を経て)スポーツや健康の価値が改めて見直される中で、今後もスポーツを楽しむ人々は世界中で増加するとの見解を示した。その上で、引き続き緩やかな成長を維持しながら、グローバル成長戦略(GGS)に沿って中長期の成長に向けた基盤づくりに取り組む考えを示した。利益面では中長期を見据えたマーケティングと人財への積極的な投資、ITやものづくりの強化に向けた設備投資に伴う減価償却費の増加等を加味した上で、上記の通り、増収増益となる見通しを示した。なお、冒頭で述べた通り、ヨネックスは2025年3月期の年間配当予想を前期比4円増の20円に増配する方針を明らかにしている。
引き続き、ヨネックスの業績や株価を注視しておきたい。■
(La Caprese 編集部)