記事内に広告が含まれています。

日本国民はどれくらい「体を動かしている」のか? 日常生活で「どのくらい動いているのか」「どのくらい座っているのか」を測定・分析――明治安田厚生事業団と笹川スポーツ財団の調査報告

運動,どれくらい,健康
(画像= AiPhotoDesigner01 / 写真AC、La Caprese)

2024年3月22日、明治安田厚生事業団(本部:東京都新宿区)と笹川スポーツ財団(本部:東京都港区)は、「活動量計」を用いた国民の身体活動量の実態把握の第一歩として、首都圏・中京圏・近畿圏の13都府県を対象に実施した共同調査を公表した。

厚生労働省は2024年1月に『健康づくりのための身体活動・運動ガイド 2023』(以下、厚労省ガイド2023)およびエビデンスに基づくライフステージに応じた身体活動量の基準値を策定した。それによると、成人は歩行または同等以上の身体活動を1日60分以上、高齢者は同様の活動を1日40分以上行うことが推奨されている。また、「座っている時間が長くなりすぎないように注意する」という座位行動に関する指針も初めて導入された。

国民が推奨された身体活動量をどのくらい満たしているのかを把握することは、公衆衛生施策やスポーツ施策を発展させる貴重なデータとなる。しかし、日本では国民の身体活動や座位行動の実態把握が十分に行われていないのが現状であった。その一つの大きな要因が、計測機器を使用して高精度な身体活動量を測定した大規模な運動疫学調査が存在しないことだった。

そこで明治安田厚生事業団と笹川スポーツ財団は、本調査で活動量計を用いた国民の身体活動量の実態把握の第一歩として、首都圏・中京圏・近畿圏の13都府県の20歳以上80歳未満の男女を対象にした共同調査を実施した。その結果、上記の厚生労働省の推奨身体活動量を満たしているのは全体の49.5%であることが判明した。

今回は、明治安田厚生事業団と笹川スポーツ財団の調査報告を紹介したい。

スポンサーリンク

日本国民はどれくらい「体を動かしている」のか?

調査概要

▽調査対象:満20歳以上80歳未満の男女 650人(住民基本台帳から層化二段無作為抽出法により抽出)
▽調査地点:首都圏・中京圏・近畿圏の13都府県における計50地点
▽調査方法:訪問留置調査(調査員が回答者宅を訪問して活動量計と調査票を配布し、一定期間内での回答を依頼した後、調査員が再度訪問して活動量計等を回収する方法)
▽調査内容:活動量計による1週間の活動量測定および調査票を用いた生活習慣等の評価
▽調査時期:2023年10月~11月

日常生活で「どのくらい動いているのか」「どのくらい座っているのか」を測定・分析

運動,どれくらい,健康
共同研究の概要 出典:明治安田厚生事業団、笹川スポーツ財団

本調査は三軸加速度センサーが入った活動量計を使用し、身体活動を客観的に測定した。活動量計は腰に装着するだけで身体活動データを1分ごとに記録し、個人の身体活動量や歩数が測定可能で、日常生活で「どのくらい動いているのか」「どのくらい座っているのか」を本格的に測定・分析することができる。本調査の対象者には休日を含めた1週間、就寝時や入浴時などを除き装着してもらった。

スポンサーリンク

厚労省「推奨身体活動量」の達成率は49.5%

運動,どれくらい,健康
厚生労働省のガイドによる推奨身体活動量(1日の3メッツ以上の身体活動の実施時間)の達成率(%)
出典:明治安田厚生事業団、笹川スポーツ財団

本調査では650名の対象者のうち、196名から有効なデータを得ることができた(有効回収率30.2%)。結果は、厚労省ガイド2023が定める1日の推奨身体活動量の達成率で49.5%であった。年齢別では、20〜64歳の若年・中年者が45.6%、65〜79歳の高齢者が61.7%となった。性別でみると、男性では20〜64歳で47.9%、65歳以上は66.7%、女性は20〜64歳で43.6%、65歳以上は52.9%となり、若年・中年者で達成率が低い傾向が認められた。

運動,どれくらい,健康
各行動の中央値 ※数値は研究対象者における1日の活動量の中央値を示す
出典:明治安田厚生事業団、笹川スポーツ財団

ちなみに、1日あたりの歩数は、世代と性別を問わず推奨歩数を下回っていた。1日あたりの座位時間は、高齢女性を除き、8時間を超えていた。これらは、三大都市圏を対象とした結果であり、解釈には注意が必要であるが、活動量を高める余地は十分にあると考えられる。

最後に注意を要するのは、厚労省ガイド2023の推奨値はあくまでも「目安」であるということである。それまで体を動かしていなかった人が、急に長時間の運動をするとケガをする恐れもある。この「目安」より身体活動量が少ない人は、「今より少しでも多く体を動かす」ことが推奨される。■

注釈

※活動量計を用いた本共同研究では、WHO(世界保健機関)が定める、3メッツ以上=中高強度/1.6~3メッツ未満=低強度の身体活動量も計測している。
中央値と平均値について:〈中央値〉とは、すべてのデータの数値を小さいほうから順に並べた際、中央にあるデータの値。〈平均値〉とは、すべてのデータの値を足し合わせた合計をデータの個数で割った値。今回は、他と比べて極端に小さな値、または極端に大きな値(外れ値)の影響を受けにくい、中央値を使用して結果を示した。

スポンサーリンク

【参考】研究責任者コメント

甲斐裕子氏(明治安田厚生事業団体力医学研究所 副所長 / 上席研究員)

体力医学研究所では、2017年より活動量計を使った研究に取り組み、身体活動・座位行動の測定と分析について独自のノウハウを蓄積してきました。笹川スポーツ財団との協力により、長年の課題であった「客観的測定による、より高精度な身体活動・座位行動の国民の実態」に一歩近づけたのは、社会的にも学術的にも大きな成果と考えます。身体活動量は64歳以下の若い世代の方が多いのですが、推奨値が高齢者よりも高いため、結果として達成率が低くなっていました。

また、女性は、歩数が少ない一方で低強度身体活動が多い等、活動量計ならではの活動パターンの特性もわかりつつあります。なお、本調査の回答率は、活動量計を使用した類似調査よりも優れています。しかし、データの代表性を確保するためには、さらに回答率を高める必要があります。今後は、回答率を高める工夫の検討とともに、身体活動・座位行動と環境や格差についても分析を進め、活動量を高めるための政策提言につなげていきたいと考えています。

吉田智彦氏(笹川スポーツ財団 シニア政策ディレクター)

身体活動量に関する代表性の高い客観的データの収集は、運動疫学研究のレベルを高めるのみならず、健康増進政策やスポーツ政策において科学的根拠に基づく質の高い政策策定に貢献することが期待できます。スポーツ政策の観点では、運動・スポーツの実施について、広く普及啓発や環境整備を行い国民のスポーツ実施率の向上等の量的な指標に焦点を当てた施策に加えて、運動・スポーツによる健康の保持増進などの効果をより高めるため、質的な視点をもった取り組みを推奨する方針が示されています。

本調査の継続的かつ調査エリアを拡大した実施を通じて信頼度の高いデータを蓄積し、例えば身体活動の時間、活動の強度や種類の分析などにより身体活動の量と質の両面から総合的に評価する基準の提示を目指していきます。

スポンサーリンク

【参考】 厚生労働省『健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023』とは?
運動,どれくらい,健康
出典:厚生労働省『健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023』

2024年1月、厚生労働省は『健康づくりのための身体活動・運動ガイド 2023』およびエビデンスに基づくライフステージに応じた身体活動量の基準値を策定した。それによると、成人は歩行または同等以上の身体活動を1日60分以上、高齢者は同様の活動を1日40分以上行うことが推奨されている。また、「座っている時間が長くなりすぎないように注意する」という座位行動に関する指針も初めて導入された。

身体活動とは?

身体活動とは「安静にしている状態より多くのエネルギーを消費する全ての動作」を指し、運動やスポーツだけではなく、日常生活における労働・家事・移動なども含む。厚労省ガイド2023では、3メッツ(※)以上の身体活動(歩行、庭仕事、子どもと遊ぶ、水泳など)の基準が示されている。

座位行動とは?

座位行動とは「座位、半臥位および臥位におけるエネルギー消費量が1.5メッツ以下の全ての覚醒行動」と定義され、座ったり横になって休んだりするすべての状態(睡眠除く)を指す。長すぎると健康に悪影響があるため、厚労省ガイド2023において初めて指針が示された。

注釈

※メッツ:「安静時を1としたときに、何倍のエネルギーを消費するか」を示す“活動強度”の単位。歩行は3メッツ、速歩は4.5メッツ、ランニングは10メッツ。週に3時間のランニングを行った場合、10メッツ×3時間=週30メッツ・時となる。

あわせて読みたい!
タイトルとURLをコピーしました