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三越伊勢丹ホールディングス、株価は上場来高値。営業利益と経常利益が過去最高、自社株買いも追い風に

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(画像= ぽせ〜どん / 写真AC、La Caprese)

2024年5月22日、東京証券取引所で三越伊勢丹ホールディングスの株価が一時3,071円まで買われ、上場来高値を更新した。今年1月4日の安値1,511円から4カ月半で103.2%の上昇である。

三越伊勢丹ホールディングスは百貨店等を運営する企業群を傘下に置く持株会社である。売上全体の8割を占める「百貨店業」は、1673年に創業した越後屋(現在の三越)、1754年創業の紅屋(現在の岩田屋)、1872年創業の小間物商(現在の丸井今井)、1886年創業の伊勢屋丹治呉服店(現在の伊勢丹)のDNAを継承するコア事業であり、国内・海外あわせて25社の企業群を擁している。このほか、「クレジット・金融・友の会業」「不動産業」「その他の事業」を展開している。

後段で述べる通り、三越伊勢丹ホールディングスが公表した、❶2024年3月期・通期(2023年4月1日~2024年3月31日)の連結業績で営業利益と経常利益が過去最高を更新するなど、大幅な増収増益となったことに加え、❷2025年3月期の年間配当予想を前期比10円増額の44円に増配する方針を示したこと、❸発行済み株式数の2.3%に当たる850万株、金額で150億円を上限とする自社株買いを発表したこと……などが株価にも刺激材料となった。

今回は三越伊勢丹ホールディングスの話題をお届けしよう。

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三越伊勢丹ホールディングス、営業利益と経常利益が過去最高

5月14日、三越伊勢丹ホールディングスは2024年3月期・通期(2023年4月1日~2024年3月31日)の連結業績を公表した。同期の経営成績は、売上高が前期比10.1%増の5,364億4,100万円、本業の利益を示す営業利益は同83.6%増の543億6,900万円、経常利益は同99.5%増の598億7,700万円、純利益は同71.7%増の555億8,000万円と大幅な増収増益となり、営業利益と経常利益で過去最高益を更新した。

同期は中期経営計画(2022~2024年度)に基づく事業活動の第1フェーズである「百貨店の再生」を掲げた2年目として、スピード感を持ちながら重点戦略の実行を進め、再生フェーズの早期達成を図った。同時に、次期フェーズの「まち化準備」フェーズに向けた取り組みを加速させるべく、地域百貨店や関係会社の事業構造改革への注力、「百貨店の科学(科学的視点を取り入れ経費や要員などをコントロールするための基準等を策定した手引書)」のグループ会社への浸透による経費コントロールを推し進め、国内百貨店事業を筆頭とした経営効率の大幅な改善により財務体質の強化を図った。

その結果、伊勢丹新宿本店、三越銀座店の総額売上高が過去最高額を記録し、計画値を大きく上回る好調な推移を見せたほか、地域主要店舗もそれぞれ大幅増収を達成し業績に寄与した。このような経営環境の好転を追い風に、三越伊勢丹ホールディングスは計画当初の長期目標である10年スパンでの営業利益額500億円を2年目で達成した。さらに2008年4月の三越と伊勢丹統合以降の最高営業利益も更新した。

セグメント別の概況は以下の通りである。

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百貨店業

百貨店業の売上高は前期比7.8%増の4,483億1,900万円、営業利益は同121.0%増の451億5,900万円と増収増益となった。

同期は国内百貨店において、新型コロナウイルス禍の行動制限緩和により入店客数が大幅に増加したほか、訪日外国人旅行者によるインバウンド消費も全国的に活況を呈した。特に伊勢丹新宿本店、三越銀座店は両店舗ともに、総額売上高が過去最高額を記録し、計画値を大きく上回る好調な推移を見せた。さらに国内百貨店全体では韓国や台湾、タイ、米国などからの訪日客数および購買金額が伸長した。その結果、コロナ禍前の2018年度の免税売上高を大幅に上回るとともに、過去最高額を更新した。

また、経費面では全国の店舗で「百貨店の科学(収支構造改革)」による取り組みを進めた結果、固定費の圧縮や販売管理費の抑制などの経費コントロールが進み、百貨店業全体として大幅な収支の改善につながった。

一方、海外店舗では2024年4月に中国・天津市内の2店舗(天津伊勢丹・天津濱海新区伊勢丹)を賃貸借契約終了に伴い閉店した。海外計では増収増益となり、引き続き国・地域ごとの状況に合わせた、“選択と転換“を加速させ、商業運営ノウハウを活かした新たな取り組みの拡大を進める方針である。

クレジット・金融・友の会業

クレジット・金融・友の会業の売上高は前期比6.3%増の327億6,600万円、営業利益は同6.8%増の40億5,000万円と増収増益となった。

同期は、エムアイカードが百貨店業の売上拡大に伴うグループ内でのクレジットカード利用が好調に推移したほか、社会経済活動の正常化により航空・旅行・飲食領域等のグループ外加盟店での取扱高も大幅に増加し、カード手数料収入が拡大した。また、カードファイナンスの強化が奏功し、割賦手数料収入も伸長した。さらに、収支構造改革の実行と経費コントロールの徹底により運営費を大幅に圧縮し、前年に対し増収増益を達成した。

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不動産業

不動産業の売上高は前期比30.6%増の267億8,700万円、営業利益は同24.1%減の30億4,400万円と増収減益となった。

同期は、三越伊勢丹プロパティ・デザインが高い技術力と高付加価値な提案営業の強みを活かした結果、ホテル・オフィス・商業施設等からの受注が増加した。さらに都心の大型案件の完工等により、売上が拡大し、原材料価格の高騰の影響を強く受けながらも、前年に対し増収増益を確保した。しかし、その一方で保有物件におけるテナントの入れ替え等により、賃料収入が減収となった。

その他

その他の売上高は前期比17.2%増の911億2,300万円、営業利益は同82.4%増の20億7,300万円と大幅な増収増益となった。

同期は旅行業の三越伊勢丹ニッコウトラベルで、国内外の旅行需要が本格的に回復した。三越創業350周年を記念した特別旅行企画や欧州リバークルーズ客船旅行など、高付加価値な旅行企画を中心に好調に推移した。円安の長期化や世界的インフレによるエネルギー価格の高騰等の影響を受けながらも、コロナ禍における固定費の削減などの損益分岐点の引き下げの取り組みも寄与し、4年ぶりの黒字転換となった。

一方、メディア事業を展開するスタジオアルタはグループのリソースを最大限活用し収益を拡大させる「連邦戦略」推進の一環として、本年より百貨店内の広告メディア事業を統合したグループ統合ハウスエージェンシー化を進めた。グループ内の広告案件の請負や主力の屋外広告販売が好調に推移し、前年に対し大幅な増収増益となった。

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自社株買いも追い風に

5月14日、三越伊勢丹ホールディングスは2025年3月期・通期(2024年4月1日~2025年3月31日)の連結業績予想について、売上高で前期比2.2%増の5,480億円、本業の利益を示す営業利益で同17.7%増の640億円、経常利益で同15.2%増の690億円、純利益で同4.6%減の530億円となる見通しを示した。見立て通りとなれば、営業利益と経常利益で再び過去最高益を更新することとなる。ちなみに、純利益は前年度の法人税等調整額(▲96億円)の計上を加味したもので、三越伊勢丹ホールディングスは実質増益を計画しているとの見解を示した。

なお、冒頭でも述べた通り、三越伊勢丹ホールディングスは発行済み株式数の2.3%に当たる850万株、金額で150億円を上限とする自社株買いも発表した。取得期間は、2024年5月15日から2024年10月31日で、東京証券取引所における市場買付を実施する。また、取得した自社株は2024年11月29日付で全て消却する計画である。

引き続き、三越伊勢丹ホールディングスの業績や株価を注視しておきたい。■

(La Caprese 編集部)

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