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愛三工業、営業利益は57.9%増。株価は年初来高値、EV向け部品の新工場建設へ

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(画像= tabinekobaron / 写真AC、La Caprese)

2023年9月15日、東京証券取引所で愛三工業の株価が一時1,374円まで買われ、年初来の高値を更新した。今年1月16日の安値669円から8カ月で105.4%の上昇である。

愛三工業は、愛知県大府市に本社を置く、トヨタ自動車系の自動車部品メーカーである。主に燃料ポンプなどエンジン向けの部品を取り扱っている企業で、2022年にはデンソーから燃料ポンプ事業を買収している。この買収により、燃料ポンプの世界シェアは4割に達し、世界トップになった。また、今年8月にはEV(電気自動車)向け部品の新工場の建設計画を発表(詳細は後述)するなど、次世代事業への投資にも注力している。筆頭株主はトヨタ自動車で、2023年3月31日現在の持株比率は28.7%である。

後段で述べる通り、①トヨタ自動車の増産計画等に加えて、②8月に愛三工業がEV向け部品の新工場の建設計画を発表したこと、③愛三工業の2024年3月期・第1四半期(2023年4月1日~2023年6月30日)の連結業績が大幅な増収増益となったこと、④9月14日にトヨタ系自動車部品大手のアイシンが中期経営計画を発表し、将来的に政策保有株式をゼロとする方針を明示したことから、他のトヨタ系企業も資本効率の向上につながる施策を推進するのではないか、との思惑が広がったこと、⑤為替の円安進行……などが株価にも追い風となった。

今回は愛三工業の話題をお届けしよう。

愛三工業、EV向け部品の新工場建設へ

トヨタ自動車は、❶今年6月にEVの性能向上に向けて「全固体電池」と呼ばれる次世代型の電池を2027年~2028年に実用化する方針を明らかにしたほか、❷8月には、2023年9~11月の車両生産計画にて、世界生産を前年同期比10%増の274万台程度に設定し、そのうち国内生産を26%増の計94万台程度と大幅に増産する計画を示した。こうした中、トヨタ自動車系のサプライヤーとして重要な役割を担う愛三工業の業績期待も高まっている。ちなみに、❸愛三工業は今年8月にEV向け部品の新工場の建設計画を発表している。投資額は生産設備を除いて約25億円で、車載電池を保護するアルミ製のケースなどを2025年4月から生産する計画である。

2024年3月期・第1四半期の営業利益は57.9%増

愛三工業の業績を見てみよう。愛三工業が7月27日に発表した2024年3月期・第1四半期(2023年4月1日~2023年6月30日)の連結業績は、売上高は前年同期比37.6%増の691億3,100万円、本業の利益を示す営業利益は同57.9%増の39億3,100万円、経常利益は同50.9%増の48億5,700万円、純利益は同89.1%増の38億6,700万円と大幅な増収増益となった。

主なセグメントの概況は以下の通りである(売上高はセグメント間の内部売上高を含む)。

日本

日本の売上高は、販売数量の増加により前年同期比18.7%増の245億6,400万円となった。一方、営業利益は収益改善努力などにより同3.0%増の3億8,300万円と増収増益となった。

アジア

アジアの売上高は為替の影響および販売数量の増加により前年同期比15.9%増の285億8,600万円、営業利益は同12.0%増の19億5,700万円と増収増益となった。

米州

米州の売上高は譲受事業を含む販売数量の増加により前年同期比2.5倍の168億5,200万円、営業利益は同4.7倍の11億400万円と大幅な増収増益となった。

欧州

欧州の売上高は為替の影響により前年同期比24.7%増の38億9,100万円、営業利益は1億9,300万円(前年同期は700万円の営業損失)となった。

円安進行、今期の業績にどう影響するか?

7月27日、愛三工業は2024年3月期・通期(2023年4月1日~2024年3月31日)の連結業績予想について、売上高で前期比16.3%増の2,800億円、本業の利益を示す営業利益で同2.7%増の140億円、経常利益で同0.6%減の140億円、純利益で同2.3%増の87億円と従来予想(4月26日公表)を据え置いた。

ちなみに、愛三工業は2024年3月期・通期の想定為替レート(ドル円)を1ドル=130円に設定している。9月半ばのドル円レートは147円台で推移しており、想定為替レートを17円下回っているのが実情である。さらに、冒頭で述べた通り、9月14日にはトヨタ系自動車部品大手のアイシンが中期経営計画を発表し、将来的に政策保有株式をゼロとする方針を明示した。株式市場では他のトヨタ系企業も資本効率の向上につながる施策を推進するのではないか、との思惑が広がっている点も気になるところだ。

引き続き、愛三工業の業績や株価を注視しておきたい。■

(La Caprese 編集部)

特集:世界のトヨタ「自動車帝国」の反撃
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