2023年5月31日、東京証券取引所で青山商事の株価が一時1,317円まで買われ、年初来の高値を更新した。今年1月18日の安値812円からおよそ4カ月半で62.2%の上昇である。
青山商事は、ビジネスウェアを中心とした各種衣料品の企画から製造、販売を中心に事業展開を行っている企業である。中核事業となるビジネスウェア事業のほか、カード事業、印刷・メディア事業、雑貨販売事業、総合リペアサービス事業、フランチャイジー事業なども展開している。
後段で述べる通り、青山商事が5月12日に発表した2023年3月期(2022年4月1日~2023年3月31日)の連結業績が大幅な増収増益となったことに加えて、2024年3月期(2023年4月1日~2024年3月31日)の年間配当予想について大幅な増配計画を示したことなどが、株価にも刺激材料となったようだ。
今回は青山商事の業績をみてみよう。
青山商事、2023年3月期の営業利益は226.0%増
5月12日、青山商事は2023年3月期(2022年4月1日~2023年3月31日)の連結業績を発表した。同期の売上高は前期比10.6%増の1,835億600万円、本業の利益を示す営業利益は226.0%増の71億1,000万円、経常利益は69.6%増の87億3,400万円、純利益は216.7%増の42億7,800万円と大幅な増収増益となった。
同期はウクライナ紛争の長期化や、急速な為替変動、エネルギー価格の上昇、物価高騰など先行き不透明な状況が継続する一方、ウィズコロナの新たな段階への移行が進み、各種政策の効果もあって、景気の持ち直しも見られた。こうした中、新型コロナウイルス禍の行動制限や外出制限につながる規制が緩和されたこともあり、売上高が2ケタを超える増収となったほか、利益面でも大幅な増益となった。
主要セグメントの状況は以下の通りである。
ビジネスウェア事業
ビジネスウェア事業の売上高は前期比11.6%増の1,263億7,900万円、セグメント利益(営業利益)は同365.3%増の31億5,600万円と大幅な増収増益となった。
同期は新型コロナウイルス禍で約2年間停滞していた買い替え需要や、行動制限緩和によるオケージョン需要の回復が見られ、主力アイテムであるメンズスーツやフォーマルウェアの売上高が前期を上回ることとなった。その結果、ビジネスウェア事業の既存店売上高は前期比で11.7%増となった。
カード事業
カード事業は外出機会の増加などに伴い、ショッピングおよびキャッシング取扱高が増えたことなどから、売上高は前期比3.6%増の50億1,300万円、セグメント利益(営業利益)は同10.9%増の22億500万円となった。なお、2023年2月期の「AOYAMAカード」の有効会員数は400万人、営業貸付金残高は528億8,900万円となった。
印刷・メディア事業
印刷・メディア事業はチラシやDM(ダイレクトメール)、デジタル販促関連の売上が回復したことや、新規でタクシーサイネージ端末などデバイス関連の売上も寄与したことなどから、売上高は前期比1.2%増の122億9,900万円、セグメント利益(営業利益)は5億1,400万円(前期はセグメント損失(営業損失)3億3,700万円)となった。
雑貨販売事業
雑貨販売事業は、行動制限の緩和などによる巣ごもり需要の減少に加え、水道光熱費やキャッシュレス決済手数料などのコストがかさんだことなどから、売上高は前期比1.9%減の157億3,100万円、セグメント利益(営業利益)は同52.2%減の2億3,300万円となった。なお、2023年2月末の店舗数は113店舗である。
総合リペアサービス事業
総合リペアサービス事業は、人流回復やサービス価格改定などにより、日本事業の売上が回復したことに加え、すでに回復していた海外事業の売上がさらに伸長したことなどから、売上高は前期比21.9%増の123億8,200万円、セグメント利益(営業利益)は2億9,300万円(前期はセグメント損失(営業損失)5億1,900万円)となった。なお、同期の出店は19店舗、退店は30店舗で、期末店舗数は608店舗となった。
フランチャイジー事業
フランチャイジー事業は、新型コロナウイルス禍の行動制限緩和などにより、フードサービス事業の売上がコロナ禍前(2020年3月期)の水準まで回復したことや、リユース事業の売上も大幅に伸びたことなどから、売上高は前期比20.0%増の131億5,700万円、セグメント利益(営業利益)は同313.7%増の8億7,200万円となった。なお、業態別の期末店舗数(2023年3月末現在)は、焼肉きんぐが39店舗、ゆず庵が13店舗、セカンドストリートが16店舗、ジャンブルストアが1店舗、エニタイムフィットネスが6店舗となった。
中期経営計画「Aoyama Reborn 2023」の実現を目指して
5月12日、青山商事は2024年3月期(2023年4月1日~2024年3月31日)の連結業績予想について、売上高で1,970億円、本業の利益を示す営業利益で110億円、経常利益で110億円、純利益で70億円となる見通しを示した。なお、従来、営業外収益および営業外費用に計上していた不動産賃貸料および不動産賃貸原価は、2024年3月期より売上高および売上原価に計上する方法に変更する予定であるため、前期と比較した増減率は示していない。
青山商事は、中核事業であるビジネスウェア事業について、生産年齢人口の減少やカジュアル化が進む中でも、消費者は感染症リスクを考慮しながら、自分に合った商品やサービスをインターネット等で手軽に求める動きが浸透しており、EC市場拡大はもとより、オーダー市場も確実に伸長しているとの認識を示した。また、個性やオリジナリティを重視する中で、再生素材やエコ素材を使用した商品などサステナブル商品を選ぶことなども増え、ビジネスウェアに対する消費者の意識が大きく変化しているとの見解を示した。
このような経営環境の中、青山商事は2024年3月期が最終年度となる中期経営計画「Aoyama Reborn 2023」の3つの経営ビジョン「ビジネスウェア事業の変革と挑戦」「グループ経営の推進」「サステナブルへの取組」の実現と、KPI(重要経営指標)および事業活動を通じた持続可能な社会の発展に貢献するためのESG目標の達成に向けて取り組む意向を示した。
なお、冒頭で述べた通り、青山商事は2024年3月期の年間配当予想について前期比16円増の42円と大幅な増配計画を示した。
引き続き、青山商事の業績や株価を注視しておきたい。■
(La Caprese 編集部)