2023年5月23日、東京証券取引所で横浜ゴムの株価が一時3,130円まで買われ、上場来高値を更新した。今年1月16日の安値1,948円から4カ月ほどで60.7%の上昇である。
横浜ゴムは、創業106年の歴史を誇るタイヤ・ゴムメーカーの老舗(しにせ)である。その源流は、1917年に古河財閥の中核企業である橫濱電線製造(現在の古河電気工業)と米企業のBFグッドリッチの合弁会社として設立した「横浜護謨製造」までさかのぼる。1921年に日本初となるコードタイヤ「ハマタウン・コード」の開発を皮切りに、1933年にはパンクに強い「ゴールデンプライタイヤ」を発売、1954年には日本初のスノータイヤ「Y-29」、1955年には日本初のチューブレスタイヤ「ハマセーフティ」「ハマライナー」をそれぞれ発売するなど、日本の自動車産業の発展とともに歩んできた。
後段で述べる通り、横浜ゴムが5月12日に発表した2023年12月期・第1四半期(2023年1月1日~2023年3月31日)の連結業績は減益となったが、通期(2023年1月1日~2023年12月31日)の連結業績予想については大幅な増益となる見通しが示されたことが、株価にも刺激材料となった。
今回は横浜ゴムの話題をお届けしよう。
横浜ゴム、2023年12月期・第1四半期は増収減益
5月12日、横浜ゴムは2023年12月期・第1四半期(2023年1月1日~2023年3月31日)の連結業績を発表した。同期の売上収益は前年同期比10.1%増の2,043億1,400万円、事業利益は同4.8%減の130億1,300万円、営業利益は同2.4%減の132億600万円、最終利益は同4.4%減の97億500万円と増収減益となった。
セグメント別では、主力となるタイヤの売上収益は前年同期比10.3%増の1,796億5,800万円、事業利益は10.4%減の125億6,900万円となった。同期は、新車用タイヤが中国での自動車メーカー向け販売が低調だったものの、国内および北米での新規車種獲得などに加え、円安も寄与し、売上収益は前年同期を上回った。また、市販用タイヤは、日本では年初の降雪により国内で冬用タイヤの販売が堅調に推移したほか、海外でADVANなど高付加価値商品の拡販に努めた結果、中国、アジア地域でも販売を伸ばし、売上収益は前年同期を上回った。
一方、MB(マルチプル・ビジネス)の売上収益は前年同期比9.9%増の225億1,900万円、事業利益は6億3,500万円(前年同期は2億4,200万円の事業損失)となった。同期は、ホース配管事業が北米での自動車生産の回復を受けて、売上収益が前年同期を上回った。工業資材事業は、コンベヤベルトの国内販売が前年同期を上回り、また航空部品も民間航空機向けの補用品需要が回復したことにより、売上収益は前年同期を上回った。
タイヤ生産財事業の「さらなる成長ドライバー」を期待
5月12日、横浜ゴムは2023年12月期(通期)の連結業績予想について、売上収益で前期比16.2%増の1兆円、事業利益は同20.6%増の845億円、営業利益は同26.4%増の870億円、最終利益は同24.1%増の570億円となる見通しを示した。これは従来予想(2023年2月17日公表)に比べて売上収益でプラス11.1%、事業利益でプラス15.8%、営業利益でプラス19.2%、最終利益でプラス23.9%の大幅な上方修正である。
横浜ゴムは上方修正の理由について、Trelleborg Wheel Systems Holding AB(TWS)の連結子会社化に加え、前提となる為替レートの見通しを従来より円安に修正したことを挙げている。
ちなみに、TWSはスウェーデンに本社を置く農業機械用や産業車両用タイヤなどを生産販売する企業である。横浜ゴムは、TWSの連結子会社化について、2021年度から2023年度までの中期経営計画『Yokohama Transformation 2023(YX2023)』において、タイヤ生産財事業のさらなる成長ドライバーと位置付けるオフハイウェイタイヤ(OHT)事業の拡大を見据えたものであることを明らかにしている。
横浜ゴムによると、OHT事業はタイヤ生産財の中でも安定的に高い収益を確保できる事業であり、TWSの連結子会社化により、現在2:1になっているタイヤ消費財とタイヤ生産財の売上構成比を世界市場規模に合わせて1:1に適正化するとともに、タイヤ商品やサービスの研究開発・生産・販売・品質・サステナビリティなどすべての領域において成長を目指す方針である。
引き続き、横浜ゴムの業績や株価を注視しておきたい。■
(La Caprese 編集部)