EVを購入するならどのメーカー? 「1位 トヨタ」「2位 日産」「3位 ホンダ」――リサーチ・コンサルティング会社のJ.D. パワージャパン(東京都港区)が2022年12月26日に発表したEV(電気自動車)に関するアンケート調査で、そのような傾向が浮き彫りとなった。また、同調査では「自動車メーカー以外の企業(Apple、ソニーなど)によるEVイメージ」についてのアンケートも行っており、大変興味深い回答を得ている。
ちなみに、米ミシガン州トロイに本社を置くJ.D. パワーは、消費者のインサイトやアドバイザリーサービス、データ分析における国際的なマーケティングリサーチカンパニーである。50年以上にわたり、ビッグデータやAI、アルゴリズムモデリング機能を駆使し、消費者行動を捉え、世界を牽引する企業に、ブランドや製品との顧客の相互作用に関する情報を提供している。
今回は、J.D. パワージャパンの2022年EVイメージ調査を紹介したい。
将来EVを購入するなら、どのメーカー?
EVを検討している人に、購入するとしたらどのメーカーのEVを選ぶと思いますか、と尋ねたところ、1位がトヨタ(41%)、2位が日産(18%)、3位がホンダ(14%)という結果になった。次いでレクサス、ダイハツ、スズキと国内メーカーが続き、EVでも国内メーカーに対する支持の高さが認められた。
実際のブランドごとの日本国内での販売台数(2021年)と比較してみると、1位はトヨタであるが、販売台数シェア34%に対して、EVの購入でトヨタを選ぶと回答した人は41%と7ポイント高くなっている。同様に、日産を選ぶという回答も18%で、販売台数シェアの10%に対して8ポイント高い結果となった。
世代別にみると、EVでトヨタを選ぶという回答は若年層に多く、日産を選ぶという回答はシニア層に多いという傾向も見られた。トヨタ、日産の両メーカーにとっては、EVの本格的な普及は、さらなるシェア拡大に向けての追い風となり、期待が持てる傾向といえそうだ。
一方、海外メーカーのEV選好については、日本国内で(ガソリン車等の)販売台数シェアが最も高い海外メーカーのメルセデス・ベンツで(EV選好が)1%となった。そうした中、選ぶと思うブランドとしてテスラが7番目に多い3%となり、一部の国内メーカーの間に食い込むポジションとなっている。今後のEVの普及とともに、国内メーカーと海外メーカーの立ち位置や、海外メーカー間での勢力争いがどうなっていくのか、目が離せない。
自動車メーカー以外の企業のEV開発参入は?
自動車メーカー以外の企業(Apple、ソニーなど)がEV開発に参入しようとしていることを見聞きしたことがあるかどうかの質問に対して、半数以上(58%)の人が「見聞きしたことがある」あるいは「見聞きしたような気がする」と回答した。自動車メーカー以外の企業がEV開発に参入しようとしていることは多くの人に認識されているようだ。
世代別に見ると、若年層の「見聞きしたことがある」は、他の世代と比べて5ポイント以上高く、若年層が他の世代よりも高い感度を示している。
ちなみに、上記の設問で、現在自家用車を所有している車が国内メーカー(国産車)か海外メーカー(輸入車)で分けてみると、「見聞きしたことがある」と回答したのは輸入車ユーザーで33%と、国産車ユーザーの26%を7ポイント上回っていた。また、「見聞きしたことがある」と「見聞きしたような気がする」を合わせた認知率は、輸入車ユーザーでは70%に達し、国産車ユーザーの59%を上回り、よりEVへの感度が高い傾向が認められた。
自動車メーカー以外の企業によるEVのイメージは?
次に、自動車メーカー以外の企業によるEVについてどのようなイメージを持っているかを尋ねた(複数回答)。
全体では、「車の価格や維持費が高そう(32%)」「自動車メーカーではない車は不安(25%)」「不具合や故障が多そう(24%)」といった、ネガティブなイメージが上位を占める結果となった。その一方で、「斬新なデザインやコンセプトになりそう」「モデルの選択肢や価格帯が広がりそう」「スマホ感覚であらゆる操作が直感的にできそう」「AIによりサービス・機能がパーソナライズされそう」といった、先進的なデザインや機能への期待といったイメージも、それぞれ2割前後見られた。
自動車メーカー以外の企業によるEVについて、ネガティブなイメージだけではなく、期待感やポジティブなイメージも併せ持っていることが判明した。
自動車メーカー以外の企業によるEVのイメージ(世代別)
一方、自動車メーカー以外の企業によるEVのイメージについては「世代間の違い」も見えてきた。たとえば、ミドル層では他の世代とは異なる特徴がみられた。ミドル層を除く全ての層で、「車の価格や維持費が高そう」が最も多く挙げられたが、ミドル層では「不具合や故障が多そう」が最多となっている。また、ミドル層の第2位は「車の価格や維持費が高そう」、第3位は「自動車メーカーでない車は不安」と、上位3位が全てネガティブなイメージだった。
これに対して、若年層では「自動車メーカーではない車は不安」が上位3位には入っておらず、その割合も他の世代と比べるとやや低い傾向が見られた。逆に、「斬新なデザインやコンセプトになりそう」といったポジティブなイメージは他の世代よりも高く、自動車メーカー以外の企業によるEVへの抵抗感が最も少ないことが認められた。
自動車メーカー以外の企業によるEVのイメージ(国内メーカーユーザーVS海外メーカーユーザー)
次に、上記の回答について、現在自家用車を所有している車が国内メーカー(国産車)か海外メーカー(輸入車)で分類した。
国産車ユーザーによるイメージが輸入車ユーザーを上回っているのは、「自動車メーカーではない車は不安」 「セキュリティーが心配」 「車の価格や維持費が高そう」 などであった。
一方、輸入車ユーザーによるイメージが国産車ユーザーを上回っていたのは「AIによりサービス・機能がパーソナライズされそう」「スマホ感覚であらゆる操作が直感的にできそう」「モデルの選択肢や価格帯が広がりそう」などであった。
自動車メーカー以外の企業がEVに参入することについて、現状では、国産車ユーザーはよりネガティブなイメージを、輸入車ユーザーはよりポジティブなイメージを想起している様子がうかがえる結果となった。
2022年はEVの軽自動車が登場して大ヒットを記録するなど、ますますEV市場は活気を帯びてきている。多くの人にとって、次の車選びにEVがいよいよ主な選択肢となってくる時代が到来しそうだ。環境に配慮しつつ一人一人のカーライフに合わせた一台が見つかるよう、EVのラインナップや価格帯の拡充、増々の技術革新が期待されるところである。■