2022年9月16日、マツキヨココカラ&カンパニー(以下、マツキヨココカラ)の株価が一時6,000円まで買われ、年初来高値を更新した。マツキヨココカラ株の年初来騰落率(9月16日終値時点)はプラス40.7%で、日経平均株価のマイナス5.9%を大きくアウトパフォームしている。
ここにきて、マツキヨココカラの株価が動意づいている背景として、インバウンド(訪日外国人)需要復活への期待が指摘される。
日本政府は新型コロナウイルス禍の水際対策の緩和を段階的に進めており、9月7日からは1日当たりの入国者数の上限を5万人に引き上げたほか、観光目的の外国人の入国についても一部条件つきで認めている。政府としては、新型コロナウイルスの新規感染者数の減少傾向が続いているほか、為替の円安によるインバウンド需要増加といった「経済効果」を見据えて、10月以降、できるだけ早く入国者数の上限を撤廃するとともに、自由な個人旅行を認める方向で調整を進めているのが現状だ。
今回はインバウンド関連の一角として注目される、マツキヨココカラの業績を見てみよう。
2021年10月にココカラファイングループと経営統合
マツキヨココカラは、ドラッグストアを運営するマツモトキヨシグループとココカラファイングループを中心とした持株会社である。2021年10月1日付でココカラファイングループとの経営統合が完了すると同時に、マツモトキヨシホールディングスから商号を変更し、再度純粋持株会社へと移行した。
業績を見てみよう。今年8月12日にマツキヨココカラが発表した2023年3月期・第1四半期(2022年4月1日~2022年6月30日)決算は、売上高が前年同期比65.3%増の2,272億円、本業の利益を示す営業利益は同72.8%増の123億円となった。売上高、営業利益ともに急増しているのは、前年同期(2021年4月1日~2021年6月30日)時点でココカラファイングループと経営統合していなかったためだ。
ちなみに、ココカラファイングループの2022年3月期・第1四半期(2021年4月1日~2021年6月30日)の業績を合算して比較すると、売上高は前年同期と変わらずの2,272億円、営業利益は同26.6%増の123億円となる。
2023年3月期・第1四半期は、ロシアのウクライナ侵攻等を端緒とする原材料価格の上昇や供給面での制約といった外部環境に加え、国内ドラッグストア業界においても、業種・業態を越えた競合企業の新規出店、商勢圏拡大に向けた新たなエリアへの進出、M&Aによる規模拡大など競争が激化した。こうした状況にありながらも営業利益(ココカラファインの業績を合算)で26.6%増を達成したのは興味深い。
マツモトキヨシのセグメント利益は18.1%増
なお、ココカラファイングループとの経営統合に伴い、報告セグメントが従来の「小売事業」「卸売事業」「管理サポート事業」から、「マツモトキヨシグループ事業」「ココカラファイングループ事業」「管理サポート事業」の3区分に変更となった。それぞれ見てみよう。
まず、「マツモトキヨシグループ事業」は売上高が前年同期比0.3%増の1,348億円、セグメント利益は18.1%増の89億円と好調だった。「ココカラファイングループ事業」は売上高が919億円、セグメント利益は35億円だった(※前年同期の連結業績には、ココカラファイングループの連結業績が含まれていないので、比較はなし)。また、「管理サポート事業」の売上高は前年同期比44.4%増の1,407億円、セグメント利益は約40億円で前年同期の赤字(4億円の赤字)から黒字に転換した。
引き続き、政府の水際対策の緩和等に注目
一方、商品別の売上高は医薬品が762億円と最も多く、次いで化粧品の729億円、雑貨の475億円、食品の204億円と続く。また、2022年6月30日現在の店舗数はマツモトキヨシグループが1,824店舗で前期末(2022年3月31日)の1,808店舗から16店舗増加。同じくココカラファイングループは1,529店舗で前期末(1,517店舗)から12店舗増加した。
マツキヨココカラは2023年3月期(通期)の連結業績見通しについて、売上高で前期比30.1%増の9,500億円、営業利益で同29.0%増の530億円、経常利益で27.9%増の570億円、純利益で1.8%増の350億円と従来予想(2022年5月13日に公表した連結業績予想)を据え置いている。
注意が必要なのは、上記の見通しは新型コロナウイルス禍の水際対策の緩和などを織り込んでいないことだ。今後、入国者数の上限撤廃などが正式に決まり、インバウンド需要が盛り上がりをみせてくると上方修正の可能性も十分考えられる。引き続き、新型コロナウイルスの感染状況や政府の水際対策の緩和に注目しておきたい。■
(経済ジャーナリスト 世田谷一郎)