ホクト、きのこ価格の低迷等が業績を圧迫 株価は年初来安値を更新

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(画像= La Caprese)

2022年12月22日、東京証券取引所でホクトの株価が一時1,856円まで売られ、年初来の安値を更新した。今年5月2日につけた年初来高値の2,045円から7カ月半ほどで9.2%の下落である。

ホクトは食用きのこの製造のほか、食品包装資材を製造・販売する企業である。1964年の設立当初は食品包装資材の販売を行っていたが、1968年にポリプロピレン製のきのこ栽培容器の製造・販売を開始、そして1983年にきのこ総合研究所を設立し、きのこの新品種の開発から製造・販売までの事業をスタートした。1994年に株式を店頭公開し、1999年には東京証券取引所1部に上場している。

後段で述べる通り、11月11日発表の2023年3月期・第2四半期(2022年4月1日~2022年9月30日)の連結業績が大幅な減益となったことに加えて、2023年3月期(2022年4月1日~2023年3月31日)の連結業績予想を下方修正したことが嫌気されて地合が悪化、揉み合いを繰り返しながらも水準を切り下げる展開を余儀なくされている。

今回はホクトの業績をみてみよう。

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ホクト、きのこ価格の低迷等が業績を圧迫

11月11日、ホクトは2023年3月期・第2四半期(2022年4月1日~2022年9月30日)の連結業績を発表した。同期の売上高は前年同期に比べて0.4%増の316億1,700万円、営業損失は43億9,700万円(前年同期は9億1,300万円の営業損失)、経常損失は27億6,900万円(前年同期は7億2,500万円の経常損失)、純損失は22億800万円(前年同期は6億1,200万円の純損失)となった。日本国内は、きのこの価格が野菜相場安の影響を受け低調に推移したことから減収減益となったほか、海外も不調であったが、為替の円安の影響により売上高は前年を0.4%上回った。しかし、営業損失、経常損失、純損失は軒並み大幅な拡大を余儀なくされた。なお、同期のきのこ生産量は、ブナピーを含むブナシメジが前年同期に比べて5.0%増の2万3,565トン、エリンギが同2.7%減の8,988トン、マイタケが同20.1%増の7,785トンであった。

セグメント別では「国内きのこ事業」の売上高は前年同期に比べて4.5%減の188億9,600万円となった。同期は引き続き新型コロナウイルス感染症の影響で直接的な販促活動ができない厳しい状況の中、きのこ需要を喚起すべく、健康・美容・スポーツを3本柱とした「きのこで菌活」を提唱し、鮮度にこだわった営業活動に取り組んできた。しかしながら、第1四半期と同様、野菜相場が安値で推移したことにより、きのこの価格も昨年に比べ安値での推移を余儀なくされ売上高で減少することとなった。

「海外きのこ事業」のセグメントの売上高は前年同期に比べて9.5%増の31億4,800万円となった。米国の現地法人「HOKTO KINOKO COMPANY」の売上は堅調に推移したが、輸入品との競合や物価高騰の影響で、営業利益は計画を若干下回ることとなった。台湾の現地法人「台灣北斗生技股份有限公司」は小売市場全体が苦戦する中で、きのこの販売も苦戦した。マレーシアの現地法人「HOKTOMALAYSIA SDN. BHD.」も売上、営業利益ともに計画を下回ることとなった。

加工品事業、化成品事業の売上は堅調だが…

一方、「加工品事業」のセグメントの売上高は前年同期に比べて10.4%増の39億4,900万円となった。同セグメントでは、水煮や冷凍などのきのこの加工品販売のほか、新商品の開発および市場開拓に取り組んできた。食品NBメーカー・外食部門はデリカ向け商品や中食向け商品が好調だったほか、青果向け市販用加工商品も乾燥椎茸・水煮・炊込みご飯の素などを中心に順調な販売となった。他方、コンビニエンスストアではこの時期の採用メニューが思うように決まらずに苦戦した。通販事業では、新商品のスープ2品種が好調で自社ECサイトを中心に売上高が伸長した。また、子会社のアーデンは引き続きOEM事業で主要得意先からの受注が好調に推移し、売上高は計画を上回ることとなった。

「化成品事業」のセグメントの売上高は前年同期に比べて6.9%増の56億2,300万円となった。包装資材を主要事業とする第一事業部では、食品トレーやフィルム・ラップなど資材の相次ぐ値上げに対処したほか、生産性向上に資する機械販売等に努め、売上高および収益力の強化を図った。また、自社製品の生産・販売および農業資材販売を中心とする第二事業部では、原料価格上昇と仕入品の調達に不安定さが増す中、自社製品の新規受注に注力した。同時に、きのこ生産農家向けの培地等欠品防止にも努め、消費者の負託に応える営業を徹底した。

通期の業績予想を大幅に下方修正

ホクトは11月11日、2023年3月期(2022年4月1日~2023年3月31日)の連結業績予想について、売上高が前期に比べて6.0%増加の752億円、営業損益で9億6,000万円の赤字(前期は20億1,400万円の営業黒字)、経常利益で前期比72.9%減少の9億9,000万円、純利益で同87.4%減の3億2,000万円となる見通しを示した。これは従来予想(2022年5月13日に公表)から売上高で4.4%の下方修正、営業損益は黒字から赤字への転換(従来予想は30億円の黒字)、経常利益は68.3%の下方修正、純利益も82.0%の大幅な下方修正である。

ホクトは業績見通しを下方修正した理由について、ウクライナ情勢の長期化や円安、原材料の価格高騰等、複合的な要因で経済市況が悪化する中、国内の野菜相場も低迷していることから、業績に与える悪影響が継続することを挙げている。

なお、日銀は12月19~20日の金融政策決定会合で大規模緩和を修正する方針を決め、「事実上の利上げ」に踏み切った。したがって、上記の円安を加味したホクトの業績見通しが今後修正される可能性もないとはいえない。しかしながら、円安の一巡は輸入物価を抑制する一方、海外事業で為替差益等による営業外収益が減少する側面もあり総合的な見極めは容易ではない。国内の野菜相場の低迷などのマイナス要因も消えていないことから、ホクトの経営陣は引き続き難しい舵取りを強いられそうだ。■

(経済ジャーナリスト 世田谷一郎)

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