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岩谷産業、株価は上場来高値。究極のクリーンエネルギー、水素事業に熱視線

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※画像はイメージです。(画像= fields studio / 写真AC、La Caprese)

2024年4月5日、東京証券取引所で岩谷産業の株価が一時9,058円まで買われ、上場来高値を更新した。今年1月4日の安値6,406円から3カ月で41.4%の上昇である。

岩谷産業は、大阪府大阪市に本社を置く産業・家庭用ガスの専門商社である。LPガスやカセットこんろを中心とした総合エネルギー事業や、水素などの産業ガス事業のほか、機械・マテリアルなど幅広い分野でも事業を展開している。特に水素については1941年から「究極のクリーンエネルギー」として捉え、普及に向けた歩みを進めてきた。2020年12月には水素の利活用を通じたCO2フリー社会の実現を目指して設立した「水素バリューチェーン推進協議会」で共同代表の一員として、また世界のエネルギー関連企業が中心となって発足した「Hydrogen Council (水素協議会)」の主要会員として、水素利用促進に向けた活動をグローバル規模で行なっている。

そんな岩谷産業は、株式市場で「水素関連銘柄」の一角として注目されることも多い。最近では岩谷産業が液化水素の製造拠点を新設して生産能力を2倍に拡大するとの報道を受けて、水素事業の成長を期待した買いが先行する場面も観測されている。

今回は岩谷産業の話題をお届けしよう。

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岩谷産業、液化水素の生産能力を2倍に拡大へ

「岩谷産業は2027年までに約500億円を投じ、川崎市と愛知県豊田市に液化水素の製造拠点を新設する」――。その記事が日本経済新聞(電子版)で配信されたのは3月28日のことであった。

報道によると、現在、岩谷産業は国内で千葉、大阪、山口の3カ所に液化水素の製造拠点を構えている。今回、新たに川崎市と豊田市の2拠点を設けることで、生産能力は約2倍の年間2.4億ノルマル立方メートル(摂氏0度、1気圧での体積)程度に増えるとしている。年間2.4億ノルマル立方メートルは、1年間に20万台のFCV(燃料電池車)を1万キロメートルずつ走行させられる量に匹敵する。

岩谷産業は、自動車の動力源のほか発電など用途の広がりを見据えて、国内で水素を生産できるサプライチェーン(供給網)を整える方針で、株式市場では水素事業の成長を期待した買いが先行、今週4月4日には岩谷産業の株価が一時8,987円まで買われ、上場来高値を更新する場面も見られた。

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2024年3月期・第3四半期は減収増益

業績を見てみよう。岩谷産業が2月7日に公表した2024年3月期・第3四半期(2023年4月1日~2023年12月31日)の連結業績は、売上高が前年同期比5.8%減の6,175億1,300万円、本業の利益を示す営業利益は同35.7%増の319億600万円、経常利益は同25.2%増の367億7,000万円、純利益は同23.7%増の241億6,900万円と減収増益となった。

同期は、水素エネルギー社会の実現を見据え、水素関連プロジェクトのエンジニアリング事業協業のために、コスモエネルギーホールディングスのグループ会社と合同会社を設立した。そうした中、国内初となるバスの事業所内を含む、東京都の所有地2か所での水素ステーション整備事業者に岩谷コスモ水素ステーションが選定され、FC商用車向けの需要に対応した水素ステーション建設の取り組みを進めた。さらに、岩谷産業の中央研究所・岩谷水素技術研究所において純水素型燃料電池を導入し、液化水素の冷熱を利用したエネルギーマネジメントシステムの実証研究を進めた。同研究は、工場や事務所におけるエネルギー供給モデルの確立を視野に入れた取り組みである。

なお、主要セグメントの概況は以下の通りである。

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総合エネルギー事業

総合エネルギー事業の売上高は前年同期比331億200万円減の2,420億5,500万円、営業利益は同16億5,800万円増の73億1,600万円と減収増益となった。

同期は、LPガス輸入価格が下落傾向で推移した後に上昇したものの、前年同期を下回り、販売価格は低下した。また、大口顧客向けを中心にLPガスの販売が減少し、減収となった。一方、利益面ではLPガス小売部門での収益性改善に加え、カセットガスやガス保安機器の販売が伸長し、増益となった。また、LPガスの市況要因による減益影響も改善した。

産業ガス・機械事業

産業ガス・機械事業の売上高は前年同期比229億9,700万円増の1,937億8,100万円、営業利益は同59億7,900万円増の169億5,700万円と増収増益となった。

同期は、エアセパレートガスおよび水素ガスについては、半導体、電子部品業界向けを中心に販売数量が減少したものの、製造コスト増加への対応に努めたことにより収益性は改善した。一方、特殊ガスは飲料業界向けに炭酸ガスが堅調に推移した。機械設備は、パワー半導体向け設備やガス供給設備の販売が伸長した。

マテリアル事業

マテリアル事業の売上高は前年同期比283億6,800万円減の1,589億7,300万円、営業利益は同4,300万円増の92億1,300万円と減収増益となった。

同期は、次世代自動車向け二次電池材料については、販売先での在庫調整の影響等により販売数量が減少し、減収となった。一方で、バイオマス燃料や飲料ボトル向けPET樹脂、スマートフォン向け機能性フィルムが好調に推移するとともに、海外でのミネラルサンド事業も伸長した。また、ステンレスやエアコン・自動車部品向けを中心とする金属加工品も堅調に推移した。

その他

その他の売上高は前年同期比2億円増の227億400万円、営業利益は同8億9,000万円増の23億1,000万円と増収増益となった。

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究極のクリーンエネルギー、水素事業に注目

2月7日、岩谷産業は2024年3月期・通期(2023年4月1日~2024年3月31日)の連結業績予想について、売上高で前期比0.1%増の9,070億円、本業の利益を示す営業利益で同12.4%増の450億円、経常利益で同7.0%増の503億円、純利益で同4.6%増の335億円と従来予想(2023年5月15日公表)を据え置いた。

なお、岩谷産業は2024年3月期を初年度とする5ヵ年にわたる中期経営計画「PLAN27」に基づき、基本方針である「社会課題解決」と「持続的成長」に向けた事業拡大を推進している。岩谷産業が「究極のクリーンエネルギー」と位置付ける水素事業の行方を引き続き注視しておきたい。■

(La Caprese 編集部)

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