2023年11月6日、東京証券取引所でキッコーマンの株価が一時9,857円まで買われ、年初来の高値を更新した。今年2月24日の安値6,170円から8カ月半で59.8%の上昇である。
キッコーマンは、しょうゆをはじめとする調味料や加工食品を製造・販売する企業である。キッコーマンが本社を置く千葉県野田市とその周辺は古くからしょうゆ造りが盛んな地域であった。野田市の公式ホームページでは、1661年(寛文元年)に、上花輪村名主の高梨兵左衛門が野田でしょうゆ醸造を開始しており、これが野田におけるしょうゆの商品化の始まりとされている。1917年にはキッコーマンの源流となる野田しょうゆと万上味淋が創業。その後、合併を経て1927年に商標をキッコーマンに変更している。
後段で述べる通り、キッコーマンが11月2日に発表した、❶2024年3月期・第2四半期(2023年4月1日~2023年9月30日)の連結業績が増収増益となったことに加えて、❷2024年3月期・通期(2023年4月1日~2024年3月31日)の連結業績予想を上方修正したこと、❸さらに、年間配当予想を従来の69円から24円増額の93円(前期は78円)に修正したこと……などが株価にも刺激材料となった。
今回はキッコーマンの話題をお届けしよう。
キッコーマン、第2四半期の最終利益は23.7%増
11月2日、キッコーマンは2024年3月期・第2四半期(2023年4月1日~2023年9月30日)の連結業績を発表した。同期の売上収益は前年同期比5.7%増の3,227億3,300万円、本業の利益を示す営業利益は同10.4%増の334億8,400万円、税引前四半期利益は同16.6%増の378億5,400万円、最終利益は同23.7%増の288億900万円と増収増益となった。
同期は、国内において、食品、飲料が前年同期に及ばなかったものの、しょうゆや酒類が前年同期を上回り、食料品製造・販売事業全体で前年同期を上回った。また、海外においては、食料品製造・販売および食料品卸売事業ともに、前年同期の売上を上回るなど好調に推移した。
主要セグメントの概要は以下の通りである。
国内:食料品製造・販売事業
国内:食料品製造・販売事業の売上収益は前年同期比0.7%増の743億2,800万円、事業利益は同1.6%増の57億5,800万円となった。
各部門の状況は次の通りである。
しょうゆ部門
しょうゆは、家庭用分野では、テレビ宣伝を中心とした商品の付加価値を伝えるマーケティング施策等を継続することにより、「いつでも新鮮」シリーズが前年同期を上回る一方で、「特選 丸大豆しょうゆ」などのペットボトル品が前年同期を下回り、家庭用分野全体として前年同期を下回る結果となった。一方、加工・業務用分野は、外食店を中心に需要が回復し、前年同期を上回った。
なお、家庭用しょうゆは2023年4月、加工・業務用しょうゆは2023年8月に原材料価格高騰等を背景とした価格改定を行なった。この結果、部門全体としては前年同期の売上を上回った。
食品部門
つゆ類は、「濃いだし本つゆ」などが前年同期を下回り、全体としても前年同期を下回った。たれ類は、「超焼肉のたれ」が順調に伸長したものの、主力ブランドの「わが家は焼肉屋さん」が振るわず、前年同期を下回った。一方、デルモンテ調味料は家庭用分野が減少したものの、加工・業務用分野が伸長したため、前年同期を上回った。
なお、ぽんず類は2023年4月、つゆ類は2023年4月および2023年8月、たれ類および「うちのごはん」は2023年8月にそれぞれ原材料価格高騰等を背景とした価格改定を行なった。この結果、部門全体としては前年同期の売上を下回った。
飲料部門
豆乳飲料は、1L容器の売上が前年同期を下回り、全体としても前年同期を下回った。一方、デルモンテ飲料は野菜ジュースが前年同期を下回り、全体としても前年同期を下回った。
なお、豆乳飲料は2023年4月に原材料価格高騰等を背景とした価格改定を行なった。この結果、部門全体としては前年同期の売上を下回った。
酒類部門
本みりんは、家庭用分野では「濃厚熟成本みりん」、高付加価値商品の「米麹こだわり仕込み本みりん」などが売上を伸ばし、加工・業務用分野も外食店を中心に需要が回復し、前年同期を上回った。一方、ワインは前年同期を下回った。
なお、本みりんは2023年8月に原材料価格高騰等を背景とした価格改定を行なった。この結果、部門全体としては前年同期の売上を上回った。
国内:その他事業
国内:その他事業では、臨床診断用酵素・衛生検査薬、ヒアルロン酸等の製造・販売、不動産賃貸および運送事業、グループ会社内への間接業務の提供等を行っている。同期は、臨床診断用酵素、ヒアルロン酸が前年同期の売上を下回った。
その結果、国内:その他事業の売上収益は前年同期比1.1%減の107億200万円、事業利益は同47.3%減の5億900万円と減収減益となった。
海外:食料品製造・販売事業
海外:食料品製造・販売事業の売上収益は前年同期比7.4%増の770億2,700万円、事業利益は同30.6%増の190億600万円と増収増益となった。
各部門の状況は次の通りである。
しょうゆ部門
北米市場では、家庭用分野の主力商品であるしょうゆに加え、しょうゆをベースとした調味料などの拡充に注力し、ブランド力を活かした事業展開を推進した。また、加工・業務用分野では顧客ニーズに合わせたきめ細かな対応を通じて、事業の拡大を図った。この結果、北米市場は前年同期の売上を上回った。
欧州市場では、主要市場であるドイツ、オランダなどの売上が前年を上回る一方で、フランスなどは前年を下回った。その結果、欧州市場全体では前年同期の売上を上回った。
アジア・オセアニア市場では、インドネシア、フィリピンなどで売上を伸ばし、全体としても前年同期の売上を上回った。
上記の結果、しょうゆ部門全体で前年同期の売上を上回った。
デルモンテ部門
デルモンテ部門は、アジア・オセアニア地域で、フルーツ缶詰・コーン製品、トマトケチャップ等を製造・販売している。同期は為替換算の影響もあり、部門全体で前年同期の売上を上回った。
その他食料品部門
その他食料品部門は、出資持分譲渡の影響もあり、前年同期の売上を下回った。その他食料品部門は、主に北米地域において健康食品の製造・販売をしていたが、2023年6月30日にAllergy Research Group, LLCの出資持分の全部を譲渡したほか、2023年7月31日にはCountry Life, LLCの出資持分の全部を譲渡した。
海外:食料品卸売事業
海外:食料品卸売事業の売上収益は前年同期比7.4%増の1,794億9,200万円、事業利益は同21.1%増の137億2,400万円と増収増益となった。同期は、北米や欧州、アジア・オセアニアとも順調に売上を伸ばし、事業全体の増収増益に寄与した。
今期は最終利益で11期連続の過去最高益へ
11月2日、キッコーマンは2024年3月期・通期(2023年4月1日~2024年3月31日)の連結業績予想について、売上収益で前期比7.9%増の6,677億円、本業の利益を示す営業利益で同10.9%増の614億円、税引前利益で同12.8%増の686億円、最終利益で同15.7%増の506億円となる見通しを示した。これは従来予想(4月27日公表)に比べて、売上収益でプラス4.7%、営業利益でプラス14.8%、税引前利益でプラス15.1%増、最終利益でプラス15.3%の上方修正である。見立て通りとなれば、最終利益で11期連続で過去最高益を更新することとなる。
キッコーマンは上方修正の理由について、①第2四半期までの連結業績を勘案した上で、原材料等の影響を見直したこと、②上期の為替が1ドル141.31円となり、下期の為替の前提を同130円から145円(年間142.66円)に変更したこと、③キッコーマンの特定子会社であるKINutriCare, Inc.を解散および清算する影響等……を挙げている。
なお、冒頭でも述べた通り、キッコーマンは年間配当予想を従来の69円から24円増額の93円(前期は78円)に修正すると発表した。
引き続き、キッコーマンの業績や株価を注視しておきたい。■
(La Caprese 編集部)