2023年8月15日、東京証券取引所でコナミグループの株価が一時8,444円まで買われ、年初来の高値を更新した。今年1月16日の安値5,580円から7カ月で51.3%の上昇である。
コナミグループは、エンタテインメントとスポーツの分野で事業展開する企業の持株会社である。❶モバイルゲームや家庭用ゲームなどを展開する「デジタルエンタテインメント事業」のほか、❷アミューズメントマシンの制作・製造・販売や、ゲームのオンライン接続サービスを展開する「アミューズメント事業」、❸スロットマシンやカジノマネジメントシステムの開発から製造・販売・サービスを手がける「ゲーミング&システム事業」、❹スポーツクラブ(フィットネス、運動スクール)や公共スポーツ施設の運営、およびスポーツ・健康関連のコンテンツ並びに商品の企画・開発・販売などを行う「スポーツ事業」が収益の柱となっている。
後段で述べる通り、コナミグループが8月3日に発表した2024年3月期・第1四半期(2023年4月1日~2023年6月30日)の連結業績で、売上高が同期として過去最高を更新したほか、利益面でも軒並み2ケタの増益となったことが、株価にも刺激材料となった。
今回はコナミグループの話題をお届けしよう。
コナミグループ、営業利益は22.2%増
8月3日、コナミグループは2024年3月期・第1四半期(2023年4月1日~2023年6月30日)の連結業績を発表した。同期の売上高は前年同期比1.0%増の726億3,300万円、本業の利益を示す営業利益は同22.2%増の171億5,100万円、税引前四半期利益は同16.0%増の183億9,400万円、最終利益は同17.0%増の133億7,500万円となった。
同期は、新型コロナウイルスの感染症法上の分類が5類に引き下げられたこと等により国内経済に緩やかな回復傾向が見られる一方で、原燃料価格の高騰や為替の円安進行、世界的な金融引き締めによる景気への影響など依然として不透明な情勢となった。こうした中、コナミグループは主にデジタルエンタテインメント事業の主力コンテンツの利益率の改善に加え、ゲーミング&システム事業の業績が堅調に推移したこと等により増収増益となった。
その結果、売上高は円安の影響もあり、第1四半期としては過去最高を更新したほか、利益面では軒並み2ケタの増益となった。
主要セグメントの概況は以下の通りである。
デジタルエンタテインメント事業
デジタルエンタテインメント事業の売上高は前年同期比5.3%減の481億3,000万円、事業利益は同13.0%増の151億100万円と減収増益となった。
コナミグループの同事業は、新しい取り組みとして、「パワフルプロ野球」シリーズにて、およそ9年ぶりのモバイル野球タイトルとなる新作「パワフルプロ野球 栄冠ナイン クロスロード」を発表した。モバイル版配信後に家庭用ゲームでの配信も予定しており、シリーズとして初めてクロスプラットフォームで楽しめるゲームコンテンツとなる。
一方、「メタルギア」シリーズでは、2004年に発売した“スネーク”の原点ともいえる「METAL GEAR SOLID 3 SNAKE EATER(メタルギア ソリッド 3 スネークイーター)」のストーリーやキャラクター、ゲームデザインを忠実に再現し、現代の最新グラフィックに進化させた「METAL GEAR SOLID Δ: SNAKE EATER(メタルギア ソリッド デルタ: スネークイーター)」を制作中であることを発表した。加えてシリーズ35周年の軌跡となるコレクション第1弾「METALGEAR SOLID: MASTER COLLECTION Vol.1(メタルギア ソリッド: マスターコレクション Vol.1)」の発売を決定し、予約を開始した。
また、国民的ボードゲームシリーズ「桃太郎電鉄」の最新作「桃太郎電鉄ワールド ~地球は希望でまわってる!~」については、2023年11月に発売予定であることを発表し、各店舗にてパッケージ版の予約を順次開始した。
なお、eスポーツでは、国際オリンピック委員会(IOC)主催の「オリンピックeスポーツシリーズ2023」の競技タイトルである「WBSC eBASEBALL™パワフルプロ野球」の決勝大会がシンガポールで開催され、白熱した戦いが繰り広げられた。また、欧州プロサッカークラブと契約するeスポーツプロ選手による「eFootball™ Championship Pro2023」は3年ぶりのオフライン開催が実現し、欧州ビッグクラブの頂点を決める決勝戦が行われた。
アミューズメント事業
アミューズメント事業の売上高は前年同期比16.2%増の34億400万円、事業利益は同81.9%増の1億9,300万円と増収増益となった。
同期は新型コロナウイルス禍の行動制限緩和を受けて、アミューズメント市場全般に回復の兆しが見られた。こうした状況のもと、コナミグループのアミューズメント事業では、前期に発売したメダルプッシャーゲーム「桃太郎電鉄 ~メダルゲームも定番!~」の追加受注が拡大した。また、アミューズメント施設向けビデオゲームでは、「SOUND VOLTEX EXCEED GEAR(サウンドボルテックス エクシードギア)」と人気アニメ「Re:ゼロから始める異世界生活」のコラボイベントを開催するなど、様々な施策を実施した。
さらに、プロ麻雀リーグ「Mリーグ2022-23シーズン」において、アーケードゲーム「麻雀格闘倶楽部」の商品名をチーム名に冠した「KONAMI麻雀格闘倶楽部」が、2018年のリーグ創設以降最高の2位となり、これに関連した施策を展開することでユーザー層の拡大に努めた。また、PCやスマートフォンで遊べるオンラインプライズゲーム「コナプラ KONAMI ONLINE PRIZE GAME」のサービスを開始した。
なお、eスポーツでは、音楽とeスポーツを融合させたプロリーグ「BEMANI PRO LEAGUE -SEASON 2-」において、新たな競技タイトルである「DanceDanceRevolution」の初代王者を決める熱い戦いが繰り広げられた。また、「BEMANI PRO LEAGUE -SEASON 3-」においては、「beatmania IIDX」のドラフト会議が実施され、32名の選手が決定した。
ゲーミング&システム事業
ゲーミング&システム事業の売上高は前年同期比29.9%増の99億9,700万円、事業利益は同139.5%増の19億7,100万円と増収増益となった。
まず、ゲーミング市場全体の動きとしては、北米市場および豪州市場でコロナ禍以前の活気を取り戻し、引き続き堅調に推移した。また、その他の地域においても、アジア市場を中心に市場全体として回復傾向を示した。
こうした環境下、コナミグループのスロットマシンにおいては、「DIMENSION 49™(ディメンション フォーティーナイン)」が高稼働を維持した。
ゲーミングコンテンツでは「AllAboard™(オール アボード)」が引き続き業界トップクラスの稼働を記録した。また、モニターに映し出されたアニメーションをタッチパネルで操作できる「Ocean Spin™(オーシャンスピン)」や色とりどりのドラゴンによる演出を楽しむことができる「Dragon’s Law™(ドラゴンズロー)」なども高評価を得た。このほか、1台の筐体で複数のタイトルから消費者が好きなコンテンツを選ぶことができる「SeleXion™(セレクション)」も拡大した。
カジノマネジメントシステムでは、キャッシュレスカジノを実現する「Money Klip™(マネークリップ)」など、多彩な機能を充実させることにより、顧客から好評を得ることとなった。
スポーツ事業
スポーツ事業の売上高は前年同期比6.5%増の116億9,700万円、事業利益は同61.3%増の7億2,300万円と増収増益となった。
同期のスポーツクラブ運営は、引き続き施設利用とオンラインレッスンの両方のサービスを充実させることで、より多くの運動機会を提供した。また、施設内で運動前や運動後にいつでも手軽にプロテインなどの飲料を摂取できるサプリメントサーバーの設置を開始するなど、会員の健康づくりのサポートを推進した。
一方、こども向け運動スクール「運動塾」では、スポーツを通して体の成長を促すべく、スイミング、体操、ダンスなど様々な種目を展開し、新たに渋谷(東京都渋谷区)、武蔵小杉(神奈川県川崎市)、たまプラーザ、希望が丘(神奈川県横浜市)、本山南(兵庫県神戸市)の5施設でスイミングスクールを開講した。さらに、映像とAI(人工知能)を活用して練習効果を向上させる「運動塾デジタルノート」と、コナミスポーツクラブインストラクターの指導技術との相乗効果により、より楽しく学び続けられるスイミングスクールを展開した。
天井にミラーを設置したピラティススタジオ「Pilates Mirror(ピラティスミラー)」は、今年4月に「PilatesMirror 中目黒」「Pilates Mirror 学芸大学」、6月に「Pilates Mirror 溝の口」「PilatesMirror 宮崎台」をそれぞれオープンした。「Pilates Mirror」は入会待ちになる施設があるなど、多くの消費者から好評を得ている。
また、これまで培った運営・指導のノウハウや実績を活かし、新たに青森県つがる市、埼玉県さいたま市、千葉県旭市、東京都豊島区、岐阜県岐阜市のスポーツ施設の業務受託運営を開始した。学校水泳授業の受託では、学校側のニーズがますます高まっており、日本全国で多くの小中学校に水泳指導業務を提供し、好評を得ている。
最終利益の進捗率は32.6%
なお、コナミグループは8月3日、2024年3月期・通期(2023年4月1日~2024年3月31日)の連結業績予想について、売上高で前期比4.4%増の3,280億円、本業の利益を示す営業利益は同29.9%増の600億円、税引前利益は同25.2%増の590億円、最終利益で同17.5%増の410億円と従来予想(5月11日発表)を据え置いた。ただし、最終利益の進捗率は第1四半期で32.6%に達しており、今後の展開次第では上方修正の可能性もないとはいえないので注意が必要だろう。
引き続き、コナミグループの業績や株価を注視しておきたい。■