2023年7月7日、東京証券取引所でジーエス・ユアサ コーポレーションの株価が一時2,910円まで買われ、年初来の高値を更新した。今年1月4日の安値2,081円から6カ月ほどで39.8%の上昇である。
ジーエス・ユアサ コーポレーションは、自動車用や産業用各種電池に加えて、電源システム、受変電設備、その他電気機器の製造・販売などを手がける企業等を傘下に置く持株会社である。株式市場では、EV(電気自動車)の「車載電池」関連の一角としても注目されており、今年4月28日には自動車大手の本田技研工業(ホンダ)と共同で、EV搭載用を中心とした電池工場を国内に建設する計画が伝えられて急伸する場面も見られた。同計画は、GSユアサ(ジーエス・ユアサ コーポレーションの傘下企業)と本田技研工業が約4,000億円を投資するもので、国も経済安全保障の観点から両社に対して1,500億円程度の補助金を出す方針を示していた。5月11日には、 GSユアサとホンダで、EV搭載用を中心とした高容量・高出力なリチウムイオンバッテリに関する協業に向けた新会社「株式会社Honda・GS Yuasa EV Battery R&D」設立に関する合弁契約を締結するなど、事業開始に向けた準備は着実に進行している。
今回はジーエス・ユアサ コーポレーションの業績をチェックしてみよう。
ジーエス・ユアサ、営業利益は39.0%増
5月11日、ジーエス・ユアサ コーポレーションは2023年3月期(2022年4月1日~2023年3月31日)の連結業績を発表した。同期の売上高は前期比19.8%増の5,177億3,500万円、本業の利益を示す営業利益は同39.0%増の315億円(のれん等償却前営業利益は320億7,400万円)、純利益は固定資産や投資有価証券売却益等の計上もあり前期比64.5%増の139億2,500万円と大幅に伸長した。一方で、経常利益は持分法による投資損益の悪化や支払利息の増加等により、前期比1.9%減の242億1,300万円と小幅ながら減少した。
同期は新型コロナウイルス禍の経済活動の停滞が緩和される一方で、ウクライナ情勢等に起因するエネルギーコスト増加などにより、インフレが進行するなど先行き不透明な情勢が続いた。こうした経済状況の中、ジーエス・ユアサ コーポレーションでは、主にハイブリッド車用リチウムイオン電池の販売数量が増加したほか、為替の円安進行も業績にプラスに作用した。
主なセグメントの状況は以下の通りである。
自動車電池
自動車電池のセグメントは、売上高が前期比24.9%増の3,351億3,100万円、セグメント利益(のれん等償却前)は同25.6%の198億9,200万円と大幅な増収増益となった。
国内では、新車用電池の販売数量が前年同期を上回ったほか、新車・補修用電池においても販売価格是正の取組を進めた。その結果、売上高は前期比7.7%増の878億200万円となった。また、セグメント利益(のれん等償却前)は同11.4%増の65億4,700万円と2ケタの伸びを示した。
一方、海外ではInci GS Yuasa Aku Sanayi ve Ticaret Anonim Sirketiを連結化した影響に加え、為替の円安進行もあり、売上高で前期比32.4%増の2,473億2,900万円と伸長した。また、セグメント利益(のれん等償却前)は、物流費等のコスト増の影響を受けたものの、売上高増加の影響により、同33.9%増の133億4,500万円と大幅に増加した。
産業電池電源
産業電池電源のセグメントは、大型風力発電用リチウムイオン電池の納入が前年度で終了した影響はあったものの、販売価格是正の取組を進めたことにより、売上高で前期比0.3%減の992億400万円と小幅な減少にとどまった。一方、セグメント利益は、販売構成の変化により、同52.5%増の88億800万円と大幅に増加した。
車載用リチウムイオン電池
車載用リチウムイオン電池のセグメントは、ハイブリッド車用リチウムイオン電池の販売が増加したことにより、売上高で前期比37.2%増の653億5,500万円と急増した。一方、セグメント利益は同20.1%増の19億8,600万円とこちらも大幅に伸長した。
その他
その他のセグメントは、航空機用リチウムイオン電池の販売が増加したことにより、売上高で前期比7.5%増の180億4,300万円となった。一方、全社費用等調整後のセグメント利益は同139.3%増の13億8,700万円となった。
カーボンニュートラル見据え、事業領域の拡大へ
5月11日、ジーエス・ユアサ コーポレーションは2024年3月期(2023年4月1日~2024年3月31日)の連結業績予想について、売上高で前期比12.0%増の5,800億円、本業の利益を示す営業利益で同4.8%増の330億円、経常利益で同11.5%増の270億円、純利益で同0.5%増の140億円となる見通しを示した。
ジーエス・ユアサ コーポレーションは、同期の事業環境について、まず、インフレが継続することにより、上期を中心に不透明な状況が継続するとの認識を示した。しかし、その一方で、カーボンニュートラルの実現を見据え、ジーエス・ユアサ コーポレーションが展開する事業領域は拡大していくとの見通しを示した。また、同期は①ハイブリッド車用電池の需要拡大や、②海外における鉛蓄電池の販売数量の増加、③各種コスト上昇に対する販売価格是正の取組およびコスト削減を推進し、収益確保を目指す方針としている。
引き続き、ジーエス・ユアサ コーポレーションの業績や株価を注視しておきたい。■
(La Caprese 編集部)