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「マルちゃん」の東洋水産、海外事業が絶好調 株価は年初来高値

東洋水産,株価,なぜ資産形成
(画像= La Caprese)

2022年9月30日、食品大手の東洋水産の株価が一時6,020円まで買われ、年初来の高値を更新した。今年4月20日に記録した年初来安値の3,815円から5カ月ほどで57.8%の上昇である。

東洋水産といえば、「マルちゃん」ブランドのカップ麺やインスタント麺を思い浮かべる人も多いことだろう。同社は1953年3月に築地市場で横須賀水産として創業し、1956年7月に現在の社名に変更した。当初は水産物の取引や輸出に加え、魚肉ハムや魚肉ソーセージといった加工食品の製造・販売が主体であったが、1962年に「マルちゃん」ブランドのインスタント麺の製造・販売を開始している。現在は、即席麺業界で日清食品に次いで第2位のシェアを誇る企業だ。

今回は東洋水産の業績をチェックしてみよう。

東洋水産、第1四半期は大幅な増収増益

今年7月29日、東洋水産は2023年3月期・第1四半期(2022年4月1日~2022年6月30日)の連結業績を発表した。売上高は前年同期に比べ23.3%増の1,031億2,700万円、本業の利益を示す営業利益は同27.7%増の107億2,700万円、経常利益は25.9%増の113億3,000万円、純利益は34.3%増の86億4,900万円と大幅な増収増益を記録した。

同期は新型コロナウイルス禍に加えて、ウクライナ情勢等の内外経済および金融資本市場に与える影響が危惧された時期でもあった。こうした状況下、東洋水産は「Smiles for All.すべては、笑顔のために。」という企業スローガンのもと、厳しい販売競争に対応するため、より一層のコスト削減並びに積極的な営業活動を推進してきた。その結果、上記の通り大幅な増収増益を記録することとなった。

「海外即席麺事業」はセグメント利益119.3%増と絶好調

主なセグメント別の業績をみてみよう。まず、「水産食品事業」の売上高は前年同期に比べ17.8%増の73億4,900万円、セグメント利益は同10.7%減の1億1,800万円となった。新型コロナウイルス対策としての外出自粛などが緩和されたこと等を背景にコンビニエンスストア向け商品の販売数量が伸長した。しかし、一方で仕入価格の高騰や原油高の影響による仕入コスト、物流コストの上昇でセグメント利益が前年同期比で減少することとなった。

一方、「海外即席麺事業」は売上高が前年同期に比べ72.0%増の415億5,500万円、セグメント利益は同119.3%増の63億8,600万円と絶好調だった。米国で袋麺の主力商品「Ramen」シリーズが増収となったほか、カップ麺の主力商品「Instant Lunch」シリーズや「Yakisoba」「Bowl」シリーズも好調に推移し業績に寄与した。また、メキシコも主力商品のカップ麺、袋麺ともに好調に推移した。

赤いきつねうどん、緑のたぬき天そば…「国内即席麺事業」の苦戦が続く

「国内即席麺事業」は売上高が前年同期に比べ2.5%増の216億5,500万円、セグメント利益は同52.2%減の12億7,300万円となった。カップ麺、袋麺ともに製造コストが上昇する中、6月に価格改定を実施した。同時にカップ麺の主力商品である「赤いきつねうどん」「緑のたぬき天そば」を中心に拡売に努めたものの、カップ麺全体では減収となった。一方、袋麺は4月に発売した「マルちゃんZUBAAAN!」シリーズを中心に増収となった。その結果、セグメント全体の売上高は2.5%増となったものの、広告宣伝費や動力費の増加などが響きセグメント利益は52.2%減となった。

「低温食品事業」は売上高が前年同期に比べ1.4%増の134億5,200万円、セグメント利益は同0.2%増の18億4,700万円となった。新型コロナウイルス禍の行動制限が緩和されたこと等で、外食向けや事業所給食向けの業務用商品の販売が伸長した。このほか、生麺についても主力商品の「マルちゃん焼そば3人前」シリーズや「マルちゃんの冷し生ラーメン3人前」シリーズを中心に増収となった。

「加工食品事業」は売上高が前年同期に比べ0.6%減の43億9,400万円、セグメント利益は2億2,800万円で前年同期の損失(セグメント損失6,700万円)から黒字転換した。同期はフリーズドライ商品が5食入り袋スープ「素材のチカラ」シリーズ等を中心に増収となった。

上記の通り、セグメント別では「海外即席麺事業」が絶好調で、「水産食品事業」や「国内即席麺事業」等の減益をカバーする構図が読み取れる。ウクライナ情勢の不透明感や、世界的な物価上昇など厳しい状況下、コスト削減や積極的な営業活動を推進した東洋水産の企業努力の成果といえるだろう。

引き続き東洋水産の業績と株価に注目しておきたい。■

(経済ジャーナリスト 世田谷一郎)

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